⚠WARNING⚠
血の表現があります、苦手な方はご注意ください。

「群れから出ていけ!!二度とツラを見せるな!」
「ギャンッ!」


「ま、待ってよーパパ、ママー!!どうしてオイラを追い出すの?どうしてオイラに優しくしてくれないのー!」
「うるさい!お前は頭がおかしいんだ……やって良いこと悪いことの区別もつかなければ力加減も出来ない……!自立出来る年頃まで置いてやった事を感謝しろ!さあ、行け!!二度と戻ってくるな!」
「ううぅ〜」


「グスン……追い出されちゃった、寝るとこも食べ物もないよー。クゥン……」


「……あっ、他のウルフ達だ!」


「おーい!オイラも仲間に入れ」
ひっ!エールートだ!!
殺される!!逃げろおおぉ!!


「えー!?なんで いなくなっちゃうのー!?」


みんな、オイラに冷たい。
オイラはやりたいこと、楽しいことをやってるだけなのに。
それに優しくしても、みんな怒るんだ。

ママがお腹を空かせた時には、森に入ってきたシムの肉をあげたのに悲鳴をあげられてビンタされちゃうし。

友達と夢中になって遊んでたら、気づいたら友達が肉片になっちゃってて……でもオイラ、そんなことしたくてやったわけじゃないのに、みんなオイラをすごく怒る。

みんなオイラを冷たい目や怖がってる目を向けてきて、いつもオイラは ひとりぼっち……。
寂しいよ……。


『ふうん……寂しいんだね』
「んえ?誰だー?」

『僕はカオス……ねえ、寂しいのなら こっちにおいでよ。あっちの世界になら君の仲間が沢山いるよ』
「えっ、ほんとー!?行く行くー!!何処だー!?」


『こっち、こっちだよ……声が聞こえる方に来て……』
「こっちかー!わーい!!」




「何処だー、ここー!?」

「……新しい眷属か」
「……頭悪そう……役に立つのかな……」
「さあな……」


「おおー、お前達が仲間か!?オイラの友達になってくれるのか!?オイラはエールートだぞ、よろしくなー!!」


カオスに呼ばれて あっちの世界に行ったら、オイラと同じように呼ばれて来たっていうケンゾクと出会った!
よくわからないけど、ケンゾク達と一緒にカオスを守ればいいって!
カオスを倒そうとする人形達をやっつければ良いんだって聞いた!

やったやった、オイラにも仲間が出来た!


……と思ったのに、アクセルもバイオレットもマゼンタも、オイラにはいつも冷たいんだ。
最近はオイラを仲間外れにして3人で楽しそうなことして、オイラに冷たい目を向けてくる。


なんだか居心地が悪かったから、こっちの世界に遊びに来た。
そうしたらアリスと出会った。
アリスはやっつけなきゃいけない人形だったけど、唯一オイラに優しくしてくれた!
笑ってくれた!
遊んでくれた!

アリスだけがオイラに優しかった!
だからオイラはアリスが大好きで、アリスには笑っていてほしかったから、アリスをイジメる奴をやっつけたのに……


どうしてそんなに大きな声で叱ってくるんだ?
どうしてそんなに怖がるんだ?
どうしてそんなに冷たい目で見てくるんだ?

……結局、アリスも他のみんなと同じだったんだ。
友達になれたと思ったのに…………アリスなんて、アリスなんて……


エールート「だいっきらいだーーー!!!」
アリステラ「ひっ……!」


エールート「ガルルルー!!」
アリステラ「エルちゃん、やめてっ!!」


オムニ「アリスーーー!!


アリステラ「オムニちゃんっ!!」


オムニ「うぅ……」
アリステラ「オムニちゃん、オムニちゃん!大丈夫!?」
オムニ「んへへ、だいじょーぶ……」


オムニ「じゃなあああい!!めっちゃ いてええぇ!!めっちゃ血出てるううぅ!!肉抉れてるうぅ!!んぎゃーす!!」
アリステラ「オムニちゃん……!」


エールート「ヴヴゥ……ジャマを、するな……オマエもバラバラにするぞ……」
オムニ「ひっ……や、や、やるのかお前っ!言っとくけど、オレだって一応グランドマスター・ヴァンパイアだからな!?お前なんて けちょんけちょんのギッタンギッタンだぞ!」

エールート「グルル……」
オムニ「ひいいいっ!

アリステラ「エルちゃん、お願いだから やめてっ!!もうこれ以上……人を傷つけないで!!」
エールート「ウルサイ……アリスなんて、キライだ……!アリスの言うことナンテ、もう聞かナイ……!!」


オムニ「だ、ダメだコイツ……話が通じねえよ……!オレが引きつけてる間に逃げろアリス!」
アリステラ「でも、オムニちゃんを置いていけないわ!」

オムニ「オレは平気だって!ドライブさんにも声をかけてるし、あの人なら きっと すぐ来てくれる!アリスにケガでもさせたらオレが後から消し炭にされちゃうし、早く行け!!」
アリステラ「……っ」


エールート「マテ、アリス……!」
オムニ「アリスには手を出させねえぞ!!」


オムニ「エルちゃんって呼ばれてたな……お前、アリスの友達だったんだろ!アリスはエルちゃんと楽しく遊んでたっていつも話してたのに……なんで こんな事すんだよ!」
エールート「ウルサイ……ウルサイウルサイウルサイ!!」


アリステラ(……やっぱり、オムニちゃんを置いていけないよ……)


アリステラ(……それにエルちゃんのことも……このまま放っておけないよ……エルちゃんは……このままにしちゃ駄目……きっとエルちゃんは……本当に、本当にわかってないだけなの……良いこと悪いことが……)




エールート「ヴヴゥ……ジャマ!ジャマ!!ジャマだああぁ!!」
オムニ「ひいいっ!こ、怖いけど……やるしかねえぇ!」


オムニ「オレだって、その気になれば強いってことを見せてや」


オムニ「るうううぅ!!


オムニ「あだだだだ!!やっぱりオレってバトル向きじゃなーい!!ドライブさん、早く来てー!!」


オムニ「ぐへぇ!!
エールート「オマエ、弱い……遊び甲斐がナイ……」


エールート「オマエもバラバラにしてやる、アリスにイジワルしてやる……!」
オムニ「ひぃ…………………あっ、この気配……」


ドライブ「オムニ、よく持ちこたえた。後は私に任せろ」
オムニ「ドライブさあぁん!!やっぱりドライブさんの気配だったー!!」
エールート「!!」


エールート「ドラなんとか!!またオマエか!!」
ドライブ「それは私の台詞だ、カオスの眷属め……!何故ツヨシやアリステラを狙ったのかは知らんが……ただで済むと思うな!!」
オムニ「んえ!?エッ、エルってカオスの眷属だったんスかああぁ!?」


ドライブ「ああ、そうだ……しかもコイツは善悪の区別がついていない、残忍で厄介なウルフだ……これ以上被害が出ないように、私が今ここで消してやる……!」
エールート「ウルサイ……!ミンナ、ミンナミンナミンナ……ダイッキライだ!!!」


ドライブ「耳障りな声だ……貴様はここで終わりだ、覚悟しろ!」
エールート「ヴッ……!」


オムニ「いけー!頑張れ頑張れドライブさん!負けるな負けるなドライブさん!!泣いてない時以外なら強いぞドライブさーん!!」
ドライブ「やかましい!!


エールート「ギャンッ!!
ドライブ「……終わりだな……今、楽にしてやる」
エールート「ヒッ……」


アリステラ「やめてドライブちゃん!!
ドライブ「……っ!?」


ドライブ「アリステラ……!?」
エールート「アリス……?」


ドライブ「……っ、そこを退けアリステラ!!そいつはカオスの眷属で、ツヨシを殺した張本人だぞ!!人を殺すことに躊躇いのない危険人物だ、ここで仕留めないと……!」
アリステラ「わかってる、わかってるわ……!でもエルちゃんとは……友達なの!!本当は悪い子じゃないの、ただ……本当に何もわかってないだけなの!!良いことをしようとしても正しいやり方をわかってないだけなの!!」


アリステラ「友達を助けようっていう、優しい心はあるの……!何が良いことか、何がイケないことか、ちゃんと教えてあげれば きっと……わかってくれるよ……!!だから殺さないで……エルちゃんが変わるチャンスをあげて……!!」
エールート「……アリス……」

ドライブ「バカ言え……!ソイツは……人を殺しすぎている!!そんな奴にチャンスなど無い!!変われる訳もない!!今ここでソイツを見逃して、また被害者が出たらどうするつもりだ!!」
アリステラ「それは……」


ドライブ「一度でも命を奪った者はもう戻れない……!ソイツも同じだ、今さら変わることなど絶対に無い……!!」


ドライブ「クズは所詮クズのままだ……!!人の性根は簡単に変わりなどはしない!!」


アリステラ「それでも私は……エルちゃんを信じたいよ……友達だもん……!確かにエルちゃんは人を殺したけど……それに対する罰が“死”なのは私はイヤ……!ちゃんと、真っ当に償ってほしいの……!!」
エールート「……………っ」


エールート「ヴヴゥ!!」
アリステラ「あっ……エルちゃん!!」
オムニ「逃げる気だ!!」


ドライブ「逃がすか……!」

 




一度でも命を奪った者はもう戻れない……
人を殺すことに躊躇いのない危険人物だ


自分の手だって血で汚れているくせに、どの口が言うんだ。

ドライブ「……ぁ…………」
『……僕からもお願い……見逃してあげて……』
ドライブ「………………」


ドライブ(……私が……言えた義理じゃない…………数多くの命を踏み潰してきた、私が……)


アリステラ「エルちゃん!!もう人を傷つけたりしないで、絶対に!!人を殺さないで!!お願いだから!!人を殺さず傷つけず、思いやりの心を持って人を助けるようなことをして!!!」


オムニ「ド、ドライブさん……いいんスか……?」
ドライブ「……わからない…………だけど……奴を殺すことに踏ん切りがつかなくなってしまった…………多くの命を奪ってきたアイツが殺されずに見逃されるなど間違っている……のに…………攻撃できなかったんだ……」
オムニ「…………」

 


エールート「はぁっ、はぁ……」


エールート(アリス……オイラ、アリスに大ッキライって……イジワルしようとしたのに、庇ってくれた……友達って、言ってくれた…………オイラ……アリスの気持ちに、応えたい。アリスは人を傷つけないで、殺さないで、人助けしてって言ってた……これを守ればきっと、アリスは笑ってくれる……!)


きゃーーー!!
エールート「アオン?」


ヴァンパイア「うるさい、騒ぐな!悪いが一緒に来てもらうぞ!!」
女性「いやあああぁ!誰か、誰か助けてええぇ!!」


エールート(あの おねーさん、助けてって言ってる!困ってるんだ!ようし、助けてアリスを喜ばせるぞ!!)


エールート「ガオオオ!!!
ヴァンパイア「うわっ、なんだ!?」
女性「ひっ……!」


エールート「おねーさん、助けに来たよ!!今のうちに逃げろ逃げろー!わー!」
女性「は……はいっ!」

ヴァンパイア「なんだお前は……!邪魔をするなああぁ!!」
エールート「アオオオン!!


エールート(うううん、壊さないように力加減難しいよーアリスー!!)



ヴァンパイア「きゅう……」
エールート「ゼェゼェ……力加減で疲れた!でもオイラ、ちゃんと壊さずにやっつけて人助けした!!これできっとアリスも喜ぶ!!わーい!!」


エールート「やったー!やったー!!わーい!!」


サラリン「エールート」
エールート「んんん?なんか聞いたことある声……あっ!!


エールート「その声、わかるぞー!カオスだなー!!あれ、でもなんでカオスがこっちの世界にいるんだー?まあいっか、カオスにお話があるんだー!」
サラリン「……………」

エールート「あのな、カオス!オイラ、もう人を壊したり傷つけたりしないって決めたんだ!そんなことしたらアリスが悲しむから!アリスはイジワルしたのにオイラのこと、まだ友達だって言ってくれたんだ!だからオイラ、そんなアリスを悲しませたくないんだ!!だからもう壊したり傷つけたりはオシマイ!!」
サラリン「ふうん……そうなんだぁ」


サラリン「じゃあ、君はもう用済み……あげた力、返してもらうよ」
エールート「へっ?」


エールート「〜〜〜っ!?〜!!!カオ、スッ!?」
サラリン「あのね……確かに君をあの世界に呼んだのは僕だけど……僕はカオスじゃないんだぁ。騙しててごめんねぇ、ふふふ……」




アリス………………


サラリン「あふぅ……やっぱり頭が悪い子を使うのは失敗だったなぁ……」


サラリン「次は、どんな子をカオスの眷属にしようかなぁ……もっとやる気に溢れた子が良いかなぁ……」

 

 数日後 ドライブ邸



ドライブ「……ただいま」
オムニ「おかえりなせえ……あの……見つかったウェアウルフの死体は……」

ドライブ「…………確認したところ、エールートだった」
オムニ「んえ……なんで、アイツ死んじまったんスか……?」


ドライブ「……魔力を体内に注ぎ込まれ、魔法使いのオーバーチャージと等しい状態となり、細胞を焼き尽くされたのが死因だ」
オムニ「……殺した犯人は魔法使いって事ッスか?」
ドライブ「ああ…………それと……」


ドライブ「この間捕まえたヴァンパイアと、ソイツに襲われた女の話によると……奴は、連れ去られそうになっていた女を助けていたらしい。ヴァンパイアは奴に倒されて気絶し、次に意識を取り戻したら目の前にはウルフの死体……怖くなって その場から逃げ出したとのことだ」
オムニ「…………エル……死ぬ前に人助けしたってことッスか」
ドライブ「…………」


ドライブ「だが……アリステラにとって酷な知らせである事に変わりはない。結局エールートは命を落としたのだから」
オムニ「そうッスよね…………あの、アリスに、この話しますか……?」
ドライブ「……隠していても いずれ分かることだからな、話はする」


オムニ「あっ……じゃ、じゃあオレから話しますよ!!ドライブさんだと、なんか、こう……反感買うような説明になりそうだし!?オレがやんわりしっかり伝えますから!!任せてくだせえ!!」
ドライブ「………………わかった、お前に任せる」
オムニ「へい!」




オムニ「アリス、入るぞ〜」
アリステラ「あっ、オムニちゃん」


オムニ「んあ、何してるんだアリス?」
アリステラ「うん……またいつかエルちゃんに会えた時の為に、ニットの靴下編んでるのぉ。いつも足寒そうだったから」
オムニ「んんん!」


アリステラ「……エルちゃんが悪いこと沢山してきたのは、わかってる……それに私達にとって敵だってことも……でもエルちゃんが私に優しくしてくれたこと、エルちゃんのお陰で私が元気になったことは事実だから……また会えた時に お礼だけでもしたいんだぁ……」
オムニ「ん……そ、そうか」


アリステラ「…………エルちゃん……今、どうしてるんだろ……人を傷つけたりしてないかな……私の気持ち、ちゃんと、伝わったかな……」
オムニ「…………………………………」


オムニ「だっ、大丈夫だよアリス!!絶対伝わってるって!!きっとアイツ、もう悪いことなんてしないさ!!大丈夫さ!!お前の友達だろ、信じろ!!」
アリステラ「……うん!」


オムニ(…………オレにはやっぱり、言えねえよお……全部全部話すことが正しいって限らねえと思うし……)




ドライブ「………………」


『君の相棒……ちゃんと話してないよ、いいの……?』
ドライブ「……構わん。アイツがそうすべきだと考えたのなら……私はそれを尊重する……」
『そう……』