コンコン

ジール「ん……?誰か来たようだな」
リイヴ「ジールちゃん出てくれよ」

ジール「は?アンタが出ろよ」
リイヴ「お兄ちゃん、お腹減ってもう一歩も動けないんだわ~おねが~い」
ジール「あまりにも怠惰すぎる、度し難っ」


ジール「はい……どちら様ですか」
ヴェナート『……っ!!』

女性「……お前はこの家の住人か?」
ジール「そうですけど……貴女は誰ですか、何かウチに用が?」
女性「私はナナイ・マハル・キタ……この家に憑いている悪霊を祓いに来た」


ジール「祓いに来たって……まさか、リンを?」
ナナイ「リン?それが悪霊の名か……とにかく、今から除霊作業を行う」
リン(……やっぱり皆……私のこと、祓おうとするんだ)


ナナイ「電気が消えた……呪いの時間が始まったか。安心してくれ、私は霊能探偵のライセンスを持っている。素人ではない……そこにあるテーブル、使わせてもらうぞ」
ジール「ちょ……ちょっと待ってください!」


ジール「ウチは、その……別にこのままでもいいんです!呪われた家を楽しんでますから、ええ!依頼を出したわけでもありませんし、お帰りいただけますか!」

ナナイ「何を呑気な事を言っている。それに呪われた家は お前だけの問題ではない、このスラニ全体に関わる問題だ」
ジール「……スラニ全体に……?」


ナナイ「呪われた家というのは放っておけばおくほど呪いの力が強まり、やがて家だけでなくワールドそのものに霊障を広めていってしまう……だからこそ、呪われた家1つ1つの迅速な除霊が必要なんだ」
ジール「そう、なんですか……」


ナナイ「ああ、だから止めてくれるな。お前が趣味で心霊体験を楽しんでいるところを邪魔して悪いがな」
ジール「趣味じゃな…………いや、とにかく待ってください!リンは……貴女が今 祓おうとしている霊は悪霊じゃないですし、それに……まだ生きてる、生霊らしいんです!」
リン(……!)

ナナイ「生霊?そのリンという霊がそう言ったのか?」
ジール「そうです」


ナナイ「バカバカしい、悪霊の言うことなど真に受けて。そんなもの嘘に決まっているだろう!お前は騙されているんだ、マヌケめ!」
ジール「マヌケって……!俺だってバカじゃない!相手が嘘を言っているかどうかくらい分かる!!それに相手が霊なら尚更だ……リンからは邪悪な気を感じられなかった!」
ナナイ「お前も霊能探偵のライセンスがあるのか?」

ジール「無い!!
ヴェナート『なんで自信満々に言った?』
ナナイ「無いだと?ならば素人は黙っていろ!!」


ジール「ライセンスが無いだけで、俺は霊のことには精通してるんだ!とにかく今すぐ除霊をするのは待ってくれ!まだ生きているのに殺そうとするな!!」
ナナイ「しつこい男だな……霊に加担し、悪戯に霊障を広めるつもりと受け取っていいんだな?それならば、私は今この場で お前を殴り飛ばしてでも除霊するぞ」

ジール「ぼ、暴力は相手を従わせるのに効率的だとは言われているが、お、お、俺は屈しないからな!!剣はペンより強い、ああいやペンはペンより強いんだ!!」
ヴェナート『ビビりすぎだろ、相変わらず手を出されそうになると すぐパニくる』


リイヴ「あーもー、うるせえぇ!!ジールちゃん、何 客人とモメてんだよ!!」
ナナイ「……っ!」


ナナイ「……ジール?それが お前の名か?」
ジール「あ、ああ!それが どうした!!い、言っておくが、先に暴力を振るったほうが、裁判では圧倒的に、不利だからな!!な、な、殴って後悔するのは、アンタだっ!!」

ナナイ「………………」
ヴェナート『………………』


ナナイ「………チッ……そこまで言うなら、少し猶予を与えてやる」
ジール「猶予?」

ナナイ「ああ、そうだ。そのリンという霊が生霊だというのなら、それを証明する証拠を手にしてみせろ。期限は水曜日までだ。水曜日の21時に私はまた来る。その時に私を納得させられなければ……今度こそ祓う」
ジール「そんな急に……」

ナナイ「この話に乗らないならば、今すぐ除霊しても良いぞ」
ジール「うっ……わかった、リンが生きていて悪霊じゃないと証明出来れば良いんだろう!」

リイヴ「おーい、おいたん話についていけねえよ~」


ナナイ「……では、また水曜日の夜にな」
ジール「あ、ああ……」


リイヴ「おいおいジールちゃん、お兄ちゃん蚊帳の外すぎるぜ~?あのイケオバ誰だよ?」
ジール「霊能探偵のナナイ・マハル・キタだそうだ」
リイヴ「霊能探偵!?じゃあなんで帰しちまったんだよ!せっかく除霊してもらえるチャンスだったってのによ!!」

ジール「いや、その……色々事情があるんだ」
リイヴ「はあ……事情ってのは?」


ジール「それは追々 説明する……とにかく明日からは忙しくなるぞ。悪いが兄さんも手伝ってくれ」
リイヴ「えー、おいたん面倒な事はしたくねえなあ」

ジール「蹴り飛ばすぞ
リイヴ「じょ……冗談だって!!」

ヴェナート『……………』


ヴェナート(あの女、ジールの名前に反応していた。やっぱり あの時の女か……)


ナナイ(……ジール、か…………あの子と同じ名前……そして……生きていたら、あの子もあれくらいの年頃か……)





ジール「やれやれ……小説の締切にも追われているのに、リンの事でも期限付きか……まあ仕方ないか」
ヴェナート『お前が お人好しだから』
リン『お兄さん』


ジール「あ……リンか。今日は姿を見せてくれたんだな」
リン『うん……あのね、お礼がしたかったの』
ジール「お礼?」


リン『さっき霊能探偵が来て私を祓おうとした時、お兄さん殴られるかもしれなかったのに、それでも必死に食い下がってくれた。ありがとう』
ジール「ああ、あの事か……まあ内心パニックになってて格好悪かったけどな」

リン『そんな事ないよ、それに私 嬉しかった。今までの人達は皆 私のことを信じてくれなかったし、話を聞いても聞かなくても祓うほうが早いからって、すぐ私を消そうとした……だから、お兄さんみたいな人、初めて』
ジール「そうだったのか……」


リン『……浮遊霊ちゃんが言っていたように、お兄さんは他の探偵さんとは違うのかも……信じても良いのかも……』


ジール「……なら、何があったのか話してくれるか?3日以内にお前が悪霊ではないと証明するという話になってしまったし、詳しい話を聞かないと どう動けば良いかわからない」
リン『うん、わかった』


リイヴ「………………」


リイヴ(オレには霊の姿も声も聴こえねえが……ジールちゃんの相槌で大体の話を推測するとしますかね……)

 


私達が この家に引っ越してきたのは、今から3ヶ月くらい前。
ママが仕事で精神的に疲れたって言うから、空気が綺麗で羽を伸ばせそうなスラニのお家に引っ越そうってパパが言い出したの。

私もスラニには憧れてたから、お引越しには喜んで賛成したよ。


リンの父親リボーン「ここが新しい家だ、2人とも気に入ったか?」
リンの母親リバース「少し狭いけど、徒歩3分でビーチやレストランに行けますし……悪くありませんね」
リン「私も気に入ったよ!」
リボーン「よしよし、良かった」


リボーン「さて、今日は引っ越しで疲れてるし……皆で早めに寝るぞ!」
リン「はーい!」


リン「すぅすぅ……」
『……マナ…………マナ……』
リン「うぅん……?」


リン「パパとママ、何か言った?」

リボーン「スヤスヤ……」
リバース「ぐぅ……」

リン(どっちも寝てる……気のせいかなぁ……)


『……オエ、マナ。ウアホイ マイ オエ、マナ……』
リン(うぅ……?)

『アオレ オエ、マオポポ イアウ』
リン(何の声なの……?なんだか、気持ち悪い……)

『ポイナ オエ ウアハ、アレレ オエ イアウ……!!』


ア オレ、アエ イア!!
リン「ひっ……!」


リン「パパ、ママ、起きて!!変な声する!!」
リボーン「なんだなんだ?」
リバース「どうしたのリン」


リン「パパ、ママ!!ここヤダ!ヤダよ!!変な声がするの、この お家ヤダ!!」
リバース「一体何事です?」
リン「寝てたら おかしな声がしたの……何を言ってるのかわからないけど、凄く怖い声したの……!この家、何かおかしいんだよ!ねえ、別の家にしよ!?」

リバース「しかし、この家はちゃんと下調べをして、呪われてもいなければ事故物件でもなかったのですよね?」
リボーン「ああ、そうだよ。だから変な声がするわけないんだがな」
リン「でも、ホントに聞こえたの!!」


リボーン「きっと夢でも見たに違いないさ、夢の声が現実とゴッチャになったんだ」
リン「……夢……」

リボーン「ああ、そうさ夢さ。だから何も変なことを考えずにゆっくり眠れば聞こえないよ。それでも怖いならベッドの下のモンスターにスプレーをかけてあげよう」
リン「…………………」


パパとママは信じてくれなかった。
変な声がするって言っても、ここは呪われてないから大丈夫だって言って……。

それに変な声は私にしか聞こえなかったみたいだし、心霊現象も起きてないから余計に信じてもらえなかったの。


あの声が何を言っているのかわからなかったけど、凄く怒ってるってことは伝わってきた。
夜に眠っている時にばかり聞こえてくるの。
だから声がする度、私は毛布の下に隠れてた。
隠れてないと安心できなかったの。

凄く怖くて、でも誰にもわかってもらえなくて……辛かった。

そして……引っ越してから1週間後……。




リン(はぁ……ヤダな……お家、帰りたくないなぁ……あの声……もう聞きたくないよ……)


『ピハ カ マナワ』
リン「えっ……」
リン(夜じゃないのに……声、する……!)


『ヒキイアウ、ケ ホオパイ、イア オエ』
リン「な、なに……?」
『アノコウ マナワ、エカ アワレ!!』




リバース「リン!リン、どうしたの!!リン!!」
リボーン「きゅ、救急車!救急車呼ばないと!!」
『あれ……私、どうしたんだっけ……?なんでパパとママ、慌ててるの……?』


『……えっ……?なんで私が、倒れてるの……?』
※10月31日発売のLife & Deathパックの要素も組み込む事にしたので、霊能シリーズの更新は31日以降とさせていただきます。
ちなみにパックは発売日に買う予定です!
※明日の更新はプレイヤーの都合上、前倒しでバチェラー記事をあげさせていただきます。