オレは失敗作のクローンだった。
レオンよりも若く作られて、アイツの記憶も見た目も受け継いだが……体は欠陥だらけだった。
体力も低く、脳も一般シムとは違う。
疲れやすくて すぐにバテるし、記憶容量を越えたら古い記憶から消えていく。
こまめにメモをして記憶を取り戻すトリガーが無いと、まともに生活も出来やしない。
母親を殺した時の生々しさが脳に焼きついて離れない。
殺したのはオレじゃないのに、殺した記憶が鮮明に残っている。
オレにはレオンを理解する事が出来ない。
可哀想な奴だとは思う。
だが、同情はしても同調は出来なかった。
そんな理解できない相手の思考がダイレクトに流れ込んでくるのは苦痛でしかない。
蛙の子は蛙という言葉がある。
いつかレオンのようになるんじゃないか……咄嗟に人に危害を加えるんじゃないかとか……不安になるんだ。
オレとレオンは違う、似てない、別人。
なのに、何故 人の命を奪ってやろうという思いが似通ってしまうんだ。
サバイバル生活 15日目
ニアがリオンに片思い(!?)した直後からスタート。
ベリーや野菜だとすぐ お腹減ってしまうので、魚が必要ですねー。
リオン「うるさっ」
ニア「ちょっ……なんでテメーだけ魚を食ってますの!?ずるいですわ!!私だって お魚食べたいですわああぁ!!」
リオン「うるさいうるさい……」
ニア「まあっ!私を魚で懐柔するおつもりですの!?そんなもので釣られるほど私、安い女なんですわー!!!頂きますわ!!」
リオン「……はいはい……」
ニア「うるせー、さっさと寝ろですわー!」
ニア「寝付くの早っ!!ある意味 才能ですわね!!」
ニア「それにしても、起きてる時は憎たらしいのに寝てる時は邪気がなくて可愛いですわね。クソ野郎と顔が同じ筈なのに、普通に綺麗な顔だと思うようになっちまいましたわ。横顔とか綺麗ですし…………じー…………」
ニア「はっ!?な、なんでそんなに早く起きちまうんですの!?」
リオン「……アンタがオレの顔をガン見しながらブツブツうるせえからだけど……?うるさくすんなって言ったじゃん……?メシくらい黙って食えよ……」
ニア「うっ、うるさいですわね!!私は変な病気になっちまったんですわ!!大目に見ろや!!」
リオン「……まあ、アンタは確かに病的にうるさい……次またうるさくしたらキレるんで……じゃ……」
ニア「ムカつく事を言われたのに、腹が立つんじゃなくてドキッとしてしまいましたわー!!!寝起きのちょっとボヤーッとしてるところとかっ、不機嫌な感じとかっ、可愛いとか思っちまいしたわ!!私の脳みそ、ぶっ壊れちまいましたわあああぁぁ!!!」
サバイバル生活 16日目
ある意味デートよりも濃厚な同棲生活中やろ今。
ニア「この間あの野郎から身の上話を聞いてから私、変ですわ……確かに気の毒な話でしたし応援したいし、支えてあげたいとは思いましたが、この心臓の ずっきゅんどっきゅんは何だってんだよー。やっぱり本能が あの野郎を毛嫌いしてるから全身や心が否定しちまってる説濃厚ですわねぇ、まったく私の体は正直だなぁ……」
リオン(……独り言デカイし、意味分かんないし……なんかアイツおかしくなってきたな……サバイバル生活で本人も気づかないうちに疲れてんじゃないの……?)
トイレに起きてきたリオンにうっとりするニア。
ベタ惚れ来ましたねえ……。
リオン「うわっ、なんだよ!トイレくらい行かせろ……!」
ニア「あら、ビビってる顔もなかなか そそられますわ……そそられる?私、何に そそられてるんですの!?」
リオン(何なんだよ、この空気……ユニコーンは噛みつくわ、あの女はおかしいわで最悪……)
清らかな乙女のみが手懐ける事が出来るのだとか……。
ジェムはニアには懐いてるのに、野郎のリオンには獰猛。
あまりにもユニコーンすぎる。
ニア「うっせーな、いちいち文句言わねえと動けねーのかよ。でも憎まれ口叩くクセに優しいことしやがってよ……ずっきゅんどっきゅんしちまうじゃん……………あら、ありがとうございます」
リオン(鳥肌立ってきた)
エンジンフルスロットルやん。
ちょ、待てよ!!
ニア「は!?テメーに心配されるほど私、落ちぶれてないと思いたかったけど落ちぶれてる気がするわ!!テメーに心配されるほど私、落ちぶれてませんわよ!!」
リオン「……最初に心の声出てる……アンタ、昨日からおかしくない?もしかして疲れてんじゃないの……」
ニア「心配されてるぅ……ずっきゅんどっきゅん……」
リオン「……アンタの様子のおかしさ、気持ち悪いんで……さっさと寝るなりなんなりして本調子に戻って……」
ニア「私だって元の私に戻りたいですわぁ……」
リオン「うるせえと思ってる……」
ニア「エスパー!!というか、この野郎って私のこと名前で呼んだことすらないような……私はアンタって名前じゃないのに!!失礼な話だよ!!」
リオン「……人のこと、あの野郎とかこの野郎とか言うアンタが言えた義理か……」
ニア「私の考えていることを当てすぎですわ!!私のこと好きすぎるだろ」
リオン「……うざい……」
ニア「そういや、この野郎は私の考えてることを読み取れるくらいに私のことを好きだし知り尽くしてますわ……でも私は この野郎のことを知らない……生意気でダウナーで体がガラクタだってことしか知りませんわ……もっと知りたい、この野郎のことを……!!」
リオン(……もう面倒くさいからツッコまずに放っておこ……)
リオン「……もっと知りたいとか言って まず最初に訊くことがそれとか、ツッコませる気満々じゃん……」
ニア「ふうん、そうですのね!!つまり自分の体が治ったら余裕出来て恋しちゃうんですのね!!あらあら!!」
リオン「…………面倒だから、しないと思う……」
現実逃避するリオン。
なんか噛み合わねえな!
これでもう後戻りは出来ねえ……。
リオン「……なんかクネクネして愉快な動きだな」
ニア「人の動きを笑うんじゃねー!!」
ニア「あら、ジェムちゃんお散歩したいんですのね!良いですわよー!私も あの野郎から少し距離を取らないと頭がパーンとなりそうですわっ!」
リオン「……はいはい……行ってら……」
リオン(やっと静かになる……)
ジェム「ブルル!?」
ニア「そ、その声は……」
クリスタ「ずっとあなた方を見守っていましたが……あまりにも もどかしいので、少し背中を押しに来ました」
ニア「せ、背中を!?どういう事ですの!?わっかんねー!!」
ニア「………………あまりにも衝撃的な単語に思考がガチで停止しちまいましたわ。鯉が何ですの?」
クリスタ「鯉ではなく恋です、LOVEです」
クリスタ「ユニコーンと一緒に興奮するのではありません」
クリスタ「それは恋をしているからです」
ニア「つい寝顔を眺めちまいますが」
クリスタ「とても恋をしているからです」
ニア「なんだか あの野郎のことをもっと知りたいし、あの野郎を支えてあげたいと思いますし!!」
クリスタ「激しく恋をしているからです」
クリスタ「頑なですね。わかりました、ニアさん……目を閉じてください」
クリスタ「リオンさんのことは嫌いですか?」
ニア「最初は嫌いでしたが、今は……まあ……悪い奴ではありませんし、嫌いではありませんわ!!でも恋はしてませんわ!!」
クリスタ「好きか嫌いか、どちらかで答えると?」
ニア「えええぇ、中間がねえ!!誘導尋問!!」
ニア「向き合う……向き合う………………………………」
クリスタ「このままサバイバルが終わって、リオンさんと完全に縁が切れたら寂しいですか?」
ニア「寂しくないと言ったら嘘になっちまいますわ!!」
クリスタ「リオンさんともっと仲良くなりたいと思いますか?」
ニア「なりたくねえと言ったら嘘になっちまいますわ!!」
クリスタ「彼のことを支えたいですか?」
ニア「支えてえええぇ!!」
クリスタ「好き?嫌い?」
ニア「ちょっと好きかもですわああぁぁ!!」
ニア「う、嘘だぁ……あんな奴に恋だなんて……うぅ……」
クリスタ「ちゃんと自分の気持ちを自覚したようで何よりです……では私はこれで」
ニア「えっ!?」
クリスタ「どうするかは貴女が考えることです。これは貴女の恋ですから」
ニア「うぅ……てか、クリスタさんは何故わざわざ私に恋心を自覚させに……?」
ニア「え?」
クリスタ「多感なティーンが2人……何も起きないわけもなく……」
ニア「え?えっ?」
クリスタ「2人の進展を楽しみにしていますよ、では……」