ストレートフラッシュ。
僕とエンネアとデュオの3人で作って始めた、シムチューバーグループ。


エンネア……エイトとはシムスタグラムで知り合って意気投合した。
僕もエイトも周りから体のことでバカにされたり、差別を受けてきた。
周りには僕達の苦しみをわかってくれる奴はいなかった……親でさえも。
お前が周りの気遣いを捻くれて受け取ってるだけ、体のことを頑張らない理由にしている……そればかり。

エイトも同じだった。
傷の舐め合いではあったけど、それでも感情を吐露出来る相手がいるだけで気が楽になった。


エイト「ここから街を見下ろすと、自分がこの世で一番偉くなった気がするよなぁ」
アシャラ「ホントにな!歩いてるシム達もちっぽけで大したことない奴らに見えるよ」


エイト「……なぁ、偉くなった気だけで満足するんじゃなくて……ガチで偉くなってみないか?」
アシャラ「え、偉くなる……?政治家キャリアになるとか?」


エイト「うーん、そうじゃなくてさ……もっとチヤホヤされるようなヤツ。皆から好き好き言ってもらえて、沢山褒めてもらえる……そんなやつ!」
アシャラ「アイドルとか?」
エイト「そう、そんな感じ!でもアイドルよりももっと手軽なやつ!事務所とかお偉いさんからとやかく言われたりしない……シムチューバーとか!」


アシャラ「シムチューバーか!確かに、撮影する機材さえあれば簡単に始められるし……アイドルと違って芸能人の先輩とかにも媚び売らなくていいし、自分達だけで完結できるし……いいかも!」
エイト「だろー!?

自分達は周りが言うほどダメな奴なんかじゃない、バカになんかされたくない、人として失敗作なんかじゃない──そう認めさせたかった。
皆に認められたかった。
ずっと嘲笑われてきたから、皆に褒めてもらいたかった。

シムチューバーに目をつけたのもその思いから。

ゲーム実況をしたり、お遊びみたいな企画をやってワイワイやってて、それだけで皆からチヤホヤされて……まるでアイドルみたいで、でもアイドルよりも手軽で気楽そうだった。


シムチューバーになりたい、でも動画なんてどうやって作ればと考えていたらデュオの動画を見かけた。
ゲーム実況動画、再生数は低かったけどオススメ覧に出てくる有象無象の動画よりよっぽど面白くて、編集も凄かった。

アイツの動画に惹かれて思い切ってDMして、そして……3人で活動することになった。


デュオ「んじゃあ、初動画は軽い自己紹介とどんな活動にしていくかの解説ね。これは生配信にして、アーカイブにも残すよー」

エンネア「ううぅ……き、キンチョーするううぅ」
アシャラ「ぼ、僕も……体、震えてきた……」

デュオ「はー?2人ともしっかりしなよ、本格的にシムチューバーになるんだよ?そんなにガチガチぶるぶるしてたんじゃネットの玩具にされるだけ、しゃんとしなよ」


アシャラ「くう……てかデュオ、お前って数ヶ月前はビビリヘタレだったのに今じゃ一番堂々としてるな……」
デュオ「そりゃあ、どこかの誰かさん達のお陰で自信がついたからねー……っと、そんなことより そろそろ時間!ストフラの挨拶で幕を開けるよ!」
エンネア「お、おう!」


ターンアップ!!




アシャラ「ターンアップ!今日はのんびり雑談配信していこうと思う……今日も顔が良い?ははっ、ありがとう!そうそう、最近行きつけのヘアサロンで……」


エンネア「ターンアップ!今日はエンネアちゃんがファッションのコツを伝授しちゃいまーす。今回はね、前回のワンカラーコーデから一歩進んで差し色を目立たせる……」


ストレートフラッシュの動画は右肩上がりで徐々に伸びていった。
ネットについて詳しく、またどうすれば人気者になれるのかと研究しまくったデュオのプロデュースのお陰だ。

本格的にシムチューブを始める前にシムスタグラムやソシャバでフォロワーを増やしつつ、バズ・マーケティングで知名度を上げてと……まあ見事な手法だったよ。
そこからシムチューブに誘導していったし、動画の企画や編集も全部デュオがやってくれた。

僕もエンネアも人気が伸びていって再生数も伸びていった。
デュオも実況動画とかあげていたけど、そっちの伸びはイマイチだった。

……ストフラのファン層とデュオの動画はきっと噛み合わせが悪かったんだろう。
それか、デュオが敢えて一歩引いて僕達を引き立てていたか……。


僕とエンネアには沢山のファンがついた。
顔が良いとか、トークが上手いとか、動画が毎日の楽しみだとか……沢山褒められた。
自分に自信が無かったのに褒めちぎられて、自己肯定感が上がっていって──天狗になったのかもしれない。

人気があってファンが多い自分達と、いまいち目立たないデュオを比較して……いつしか彼を見下していた。
自分達で企画を考えることも、編集を動画することも出来ないくせに。




アシャラ(さーて、エゴサ エゴサ……お?なんかストフラのスレあるじゃん、見てみよーっと)
ストフラ最近ノリに乗ってるよね

エンネアちゃん可愛い

アシャラの雑談配信も最近おもろいぞ、作業しながら聞くと作業捗るんよなぁ

確かにアシャラはトーク力が高いもんな、アシャラはゲーム実況にも向いてそう

ゲーム実況担当はもういるだろ!デュなんとかさん

デュオとかいらなくね?アイツだけブサいしオタクくさいし

アシャラエンネアだけでいいよな

デュオが足引っ張ってる気がする

デュオお前船降りろ
アシャラ(……デュオ……いらない……)


アシャラ(いや、何を考えてるんだ……だってデュオがいないと、僕達は何も出来ないし……)
本当に?

アシャラ(だってデュオは……すごい……)
凄いのは僕達じゃないのか、それは再生数とファン数が物語ってる。


アシャラ(…………僕達だってもう人気だし……そうだよ、僕達は人気なんだ。こんなにファンがいてくれる、大好きだって言ってくれる……それは僕達自身が魅力的だからだ、デュオがいなくたってやっていける、デュオの力は もういらないんだ……!)

書き込みにもあった……デュオはいない方がストフラはもっとキラキラ出来るって……。
僕達はもっとチヤホヤされたい、もっと人気を出したい、その為には切り捨てる事も必要なんだ……!!


承認欲求を制御できずに欲をかいて、大切だった筈の仲間を切り捨てて、人気者のインフルエンサーを騙して引き入れて──僕達は……間違えた。

 

 

現在 デル・ソル・バレー



アシャラ「……この度はエンネアの性別を偽り、ファンの皆様を騙していたこと……裏で見下して嘲笑っていたことを心からお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした」
デュオ「この件は元ストフラメンバーである僕にも責任があります……僕も全てを知っていながら黙っていました。リスナーの皆さんを騙していた事に加担していたんです、本当にごめんなさい……」
エンネア「…………」


デュオ(……エンネア、なんで黙ってるの……やっぱりまだメンタルが……)
エンネア「……………ごめん、なさい」


エンネア「ずっと、調子にのってたんです。大嫌いだった自分の見た目を褒められて、大好きって言ってもらえて、沢山のファンがついて……自分が、世界で一番偉くなったような気がして……周りを、見下してました……こんな自分を好いてくれるファン、仲間として一緒に過ごしていたデュオ……どっちも大事で大好きだった筈なのに、驕り高ぶって、見下してました……デュオには、ストフラを捨てて出ていったなんて嘘の悪評まで広めてしまった!!本当はオレ達が追い出したのに!!」


エンネア「オレ達は愚か者です……見下されて、バカにされてきたのに……自分がちょっと人気になったからって、今度は見下してバカにする側になって……どうしようもない、クズです…………本当に、ごめんなさい…………皆を騙して、バカにして、傷つけたり嫌な思いさせておきながら……図々しいかもしれませんけど……また、1から……やり直したい、です……こんな事になってでも、オレ達のことを好きって言ってくれる人達の思いに応えたい、です……!!」
アシャラ「……僕も同じ気持ちです。心を入れ替えて……1からやり直したいです」


デュオ(あーもー、謝罪動画で一番やっちゃいけない流れ!!泣く、長い自分語り、論点ぶれぶれ!!)


デュオ(……でも……これが彼らの本心なら……嘘偽りない本心なら……セオリー通りの謝罪よりも……ファンの心に響くのかもね……)




デュオ「ふぅ……じゃあ、僕は帰るよ。謝罪はしたし……炎上の件については今後一切触れないこと、話をぶり返さないようにするんだ。いいね?」
アシャラ「……ああ」

デュオ「よしよし。あと……僕が関わるのはここまで。これからの事は君達自身で考えることだね」
エンネア「……デュオは……やっぱりもう、帰ってこないのか」


デュオ「はああぁー?帰ってくるわけないじゃん?僕って結構根に持つタイプだし、いくら反省したとはいえ僕にボロクソ言って追い出したことは許してないからねえぇ?今回の件は僕にも責任があったし、謝る必要があったから来ただけなんだから勘違いしないでよね!」
アシャラ「お、おう……」

デュオ「……僕達は もう仲間には戻れないし、一緒にいない方がお互いの為だと思う。ストフラのファン層と僕は相性が悪かったしね。1からやり直すんなら、心機一転するんなら……僕のことなんて忘れるに限る。黒歴史にでもして抹消しなよ、アハハ!
アシャラ・エンネア「……………………………」


デュオ「……まあ……仲間にはなれないけどさ……同じシムチューバーなんだし……たまーに道が交わるぐらいなら……いいよ」

 


 数週間後──



監督「はい、カーット!!アインスさん、死ぬのが上手いねー!鬼気迫る死亡シーンだったよ!」
アインス「ありがとうございますじゃ!」
アインス(死ぬのが上手いってなんか嬉しいような、嬉しくないような複雑な褒め言葉じゃな……)


ゴールド評価を獲得!
願望クリアに必要なものは、スタープレート埋めのみ!


アインス「ふー、今日も良い映画が作れた!この映画を見た沢山の人が楽しんでくれたら嬉しいのう!」


アインス「……おや?あそこにおるのは……」


アインス「オープンアップ!辛気臭い顔じゃのう、どうした!」
ラパン「あ、ああ……君か……」


ラパン「……この間オレ、スターライト・アワードで良くない発言しちゃったろ?それでちょっと炎上しちゃって……」
アインス「炎上しとったのかえ?」
ラパン「え、知らないの」

アインス「ワシ、あまりネットニュース見ないからのう。デュオくんも何も言ってこなかったから知らなかったぞい……あっ、ストフラは炎上乗り越えて復活したのは知っておる!!」
ラパン「ストフラが……そっか……」


ラパン「炎上したの、初めてだった。いつもオレのこと肯定してくれるファンも“あんなに華々しい場で誰かの悪口を大声で言うの、どうかと思う”とか“常識ない”とか、“他人のことナチュラルに見下してる”とか……苦言を呈してきてさ。それで燃えちゃった」
アインス「まあ、そりゃそうじゃろ。思うのは自由じゃが、口に出すのはイケないこと……ワシにだってそのくらい分かるぞい」

ラパン「ああ…………オレも、きっと調子にのってたんだ。オレは昔から不純とかが嫌いだった……例えば純粋にサッカーが好きで、サッカー選手になりたいって子とモテたいからサッカーしてるって子がいて……サッカー選手になりたい子よりモテたくてサッカーしてる子が評価されてたら、間違ってる!!って憤ってしまうタイプだったんだ……」
アインス「ううーん、生き辛そうじゃなあ……なんというか、まあ、難儀な……」
ラパン「はは……夢見がちなシムだったんだよ。漫画やアニメばかり見て、そういう純粋な気持ちで頑張って成功した主人公を見たから、現実でもこうあるべきだって思ってたのかも」


ラパン「でもオレの思想には誰も共感してくれなくてさ……ズレてるのは、おかしいのは自分なのかなって不安になった。でもインフルエンサーをやって、沢山のフォロワーが出来て、オレの思いに賛同してくれるシム達がこんなにいるんだって舞い上がって……やっぱり自分は間違ってなかった、自分の考えは正しいって強く思うようになってしまったんだ。自分は正義で純粋で、これに賛同しない人達は悪で不純ってね……」
アインス「拗らせておるのう……」

ラパン「まあね……排他主義に片足突っ込んでたかも……でもこの間 君に叱られて、さらに炎上までしちゃって……ちょっと自分の考え方を改めようかなって思う。夢を抱いたりする切欠は人それぞれで、人それぞれに頑張る理由や夢に向かう理由があるから……不純だってと見下して、バカにしたりするのは やめようと思うよ……」
アインス「そうかえ」


アインス「価値観ってのは簡単には変わらんと思うが……お主の気持ちが本物ならば、もう少し柔軟な思考にはなるかもしれんのう!まあ最悪、口や態度に出さなければ何とかなるわい!思うだけなら自由じゃからのう!そんな感じで緩く頑張ると良いぞい」
ラパン「あはは……ありがとう」


アインス「では、ワシはこれからデュオくんとスターライト大通りに行くから失礼するぞい」
ラパン「うん……君のこと、これからも1ファンとして応援してるよ」
アインス「ありがとうなのじゃよ!」

 


 スターライト大通り



デュオ「ほら、ここだよ!ここの空いてる場所にスタープレートを埋め込めば、アインスさんは最高の名俳優として未来永劫 名前が語り継がれるのさ」
アインス「み、未来永劫!?凄いのぅ……ワシ、ここまで来たのか……」


アインス「スッとな」


デュオ「えっ、なんかズレてない?」
アインス「これがワシの個性だから良いのじゃ!!」


アインス「デュオくん……本当にありがとうなのじゃよ」
デュオ「急にかしこまってどうしたの?」


アインス「ワシ、デュオくんには感謝しているんじゃよ……シグザムから降り立ったばかりのエイリアンであるワシに親切にしてくれて、どうすれば俳優になれるかとか色々教えてくれて……デュオくんと知り合ってなかったらワシ、どうすれば良いのかわからずに彷徨っていたかもしれぬ……」
デュオ「あはは……」


デュオ「……僕達、めちゃくちゃ仲良しー!って訳じゃないけど……このくらいが丁度いいって気がするな。ベタベタしすぎない、程良い距離感っていうの?お互い遠慮や気遣いもないし、普段はお互いに好き勝手やってて、なんかあったらちょっとお互いに助言しあって的な……」
アインス「うむ!ワシもこのくらいが気楽で良いぞ!それにデュオくんといるとオタク同士で話も合うし、退屈せんからのう!」

デュオ「じゃ、お互いに願望は達成したけど……これからも良きルームメイトとして宜しくね!!」
アインス「改めて宜しくなのじゃよ!!」


デュオ「えーと……アインスさんは今日、家に皆を集めてパーティーするんだったね。僕、帰りは明日になりそうだし……のんびり楽しんでいいからね!」
アインス「ありがとうなのじゃよ、デュオくんもコラボ配信頑張っておいで」
デュオ「はーい」

 

 サンマイシューノ


アインス「さあさあ、今日はご近所の皆でわいわいパーティーしようではないか!楽しむぞい!」

GHI「うひょー!セレブとこんなにお近づきになれたわ、JKL!」
JKL「わかったわかったw」

アインス「既に楽しんでおるな!」


アインス「この調子で皆で盛り上げていくのじゃよ!!ふぁいっ!ふぁいっ!


ラルド「そういえば、デュオがいないがどうしたんだ?」
アインス「ああ、デュオくんならコラボ配信に行ったぞい!」

ラルド「へー、後でアーカイブ見直すかな……ところで姉貴、アインスにお願いがあるんじゃなかったのか?」
アインス「おお、何じゃ何じゃ?」
サイア「えっ……あ、あの……その……」


サイア「……あの……頭……なでなで、したい、の……」
アインス「あ、頭!?予想外のお願いじゃが……そのくらいなら構わんぞい!」
サイア「ありがとう……」


サイア「ふふ……可愛い……」
アインス(よくわからんが、サイアちゃんが嬉しそうで何よりじゃ!)

 

 デル・ソル・バレー


アシャラ「ターンアップ!ストレートフラッシュのリーダー、アシャラだ!」
エンネア「皆のアイドル、エンネアちゃんだよ〜」

アシャラ「おいおい、アイドルらしからぬ座り方すんなよ」
エンネア「うっせー!これがありのままのエンネアちゃんなんだよ!」


アシャラ「さてさて、今日は事前告知通りコラボ配信!」
エンネア「皆も知ってるアイツがゲストで参戦!カモーン!」


デュオ「どうもー、スペードチャンネルのデュオくんです!オープンアップ!」
アシャラ「オープンアップ……じゃないだろ!スマホ弄りながら登場すなー!」
デュオ「へえ、ツッコミにまあまあキレが出てきたね」
エンネア「おい、これ漫才配信じゃないんだけどー?」


デュオ「で、今日は何すんの?」
アシャラ「そりゃあ今流行りのバトロワゲームだろ!デュオがいれば百人力よ!」

デュオ「ほうほう、ゲームとはわかってるじゃん!ストフラのチャンネルを乗っ取る勢いで大活躍しちゃおうかな!」
エンネア「乗っ取り宣言キター!そこまで自信たっぷりに言うなら、デュオがデスする度にケツバットするか。上手いんならデスするわけないもんなぁ!」
デュオ「デスは誰だってするから勘弁して!!」

END


お知らせ





登場したメインキャラを共有しています。
宜しかったら賑やかしなどにご自由にどうぞ。
EAID:OHNX41QIZPLJ