学校が嫌いだった。
机やロッカーには、いつも死ねとか臭いとか、学校来るなって書かれるし……クラスメートからは気持ち悪いって言われるし……。
先生に相談しても、まともに話を聞いてくれないし……。
きっと俺の頭が悪いからだ。
ぼんやりするたびに先生に怒鳴られて叱られて、クラスメートから笑われて恥ずかしくて嫌だった。
話しかけてくれる子がいても「話しててもつまらない」って言われて離れていく。
話題のアニメとか、ゲームとか動画とか……テレビもPCも使えないから全然わかんなくて、話題についていけない。
学食を買うお金なんて、母さん達がくれる訳ないから。
皆が食べているところを見ると余計にお腹が空いて辛いから、いつもトイレに引きこもってた。
でも家にいる方が嫌だったから……家にいるよりはまだ辛くないから、マシだった。
家にいても、学校にいても、皆 俺のことを疎ましがる。
いるだけで皆を不快にさせる。
何処にいても同じ。
俺は……何処にいれば良いんだろう。
コモレビ山 旅館
キルシュ「あ……おはようトーマス。そういうお前も早いな」
トーマス「ええ、まあ!!」
キルシュ「ああ。ずっと楽しみにしてたし、不参加を言い渡された時は……正直ショックだったけど……でも、皆のお陰でこうして一緒にコモレビ山に来れて楽しめてる。主に作戦を考えたのはトーマスだって聞いたよ。ありがとな」
トーマス「任せてくださいよぉ!!僕は先輩の為ならなんだってしますから!!」
キルシュ「お、おう……」
キルシュ「勇気……?なんかよくわかんないけど……まあ、とにかく楽しむよ」
トーマス「ええ!!楽しんでください!!」
キルシュ「おはようございます……何やってんですか?」
先生「見てわからんのか!雪だるまを作っている!」
キルシュ「はぁ、雪だるま…………意外とガキっぽい事するんですね」
先生「ぬぅわぁにいぃぃぃ!?雪を見たら雪だるまを作りたくなるのがシムの性だろうが!!貴様も雪だるまの1つや2つ、作ったことあるだろう!」
キルシュ「無いですけど」
先生「ぬぅわぁんだぁとおおぉ!!」
キルシュ「雪だるまくらいで人生損しないでしょ……別に作らなくても……」
先生「いいからやらんかぁ!!」
キルシュ「はいはい……」
先生「そうだ!可愛らしく作るのだぞ!」
キルシュ「随分とファンキーな雪だるまですね……」
先生「この生意気そうな顔、お前にソックリだろう?」
キルシュ「髪型は先生そっくりで世紀末ですけど」
先生「私のモヒカンを世紀末呼ばわりするな!」
先生「ひ、暇ではない!!今日は他の教師達が巡回しているから休んでいるだけだ!」
キルシュ「はぁ、そうですか」
キルシュ「いや、別に良いです……ってかコモレビマイスターって何ですか」
先生「私はコモレビ山にリスペクトがあり、文化や歴史に精通しているのだ」
キルシュ「文化に精通してんのに“たらこ”の意味がわかんないんですか」
キルシュ「はいはい……」
キルシュ(テンションたけーな……)
キルシュ(えっ、何か見かける度にこの早口クソ長ウンチク垂れ流されんの……?)
先生「おお、コモレビ山の精霊ではないか!」
キルシュ「精霊!?」
先生「森に宿る神秘的な存在だ、自然を愛し敬う者を祝福してくれる木々の守護者らしいぞ!挨拶しておけ!」
キルシュ「はい」
先生「ええい、もっと かしこまらんか!!」
先生「ううむ、今ので祝福を授けてくれるとは……精霊は器が広いな……」
キルシュ「えっ……まだ続くんですか?」
先生「当たり前だ!!コモレビ山といえば神社、神社といえばコモレビ山!コモレビ山に来たならば神社参拝がマナーだろうが!!」
キルシュ「は、はい……」
キルシュ「はい」
キルシュ「なんか雑なコメントですね」
先生「そんなことはないっ!!私はコモレビマイスターだからな、下手に言葉では語らんだけだ!」
キルシュ「えっ、まだあるんですか?」
先生「当たり前だろう!コモレビ山の魅力とは1つや2つではないのだ!!どうせお前も1人でブラブラする予定だったのだろう?マイスターである私が案内してやったほうが良いだろう!はっはっは!!」
キルシュ「うわぁ……」
キルシュ「おお……なんか思ってたのと違う……サルですか、これ?」
先生「うむ!恐らく、これが有名な見ざる、聞かざる、言わざるだろうな!!」
キルシュ(違うと思うけど黙っとこ……)
キルシュ「マジですか?えっと……ヤッホー!」
キルシュ「ホントだ!すげぇ、コダマとか初めて聞きましたよ!」
先生「ハッハッハ、来て良かっただろう?マイスターに感謝しなさい!」
キルシュ「……あ、ありがとうございます……?」
キルシュ(……あっ、ソリだ)
キルシュ「いえ、別に……」
先生「はっはっは、遠慮するな!まったく、そんなに先生が大好きか!!仕方ないな……もうすぐ日が暮れるから1回だけだぞ!!」
キルシュ「遠慮してませんが!?」
キルシュ「先生ってたまに過剰に子供扱いしますよね……」
先生「何を言っている、お前は子供だろう?」
キルシュ「……まあ、そうですね」
キルシュ「じゃあ、まあ、事故らないようお願いしますよ……」
キルシュ「……はい」
先生「そうかそうか!なら良かった!」
キルシュ「はい」