![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240529/01/black-jack-1011/b8/a0/p/o1080060715444689947.png?caw=800)
ノクスとの戦いから数日後――
ヤテン「うむ、滞りなく完了したぞ」
ヤテン「ああ、人が生きる為の手助けをしていきたいからな……そういえばノーマンは、式が終わったら様々なワールドを巡る旅に出るのだったな」
ノーマン「うん!旅先で見た綺麗な景色をスケッチしてまわるんだ!それで描いた絵はギャラリーに寄贈していくよ、僕が見たものを皆に共有したいからね!」
ノーマン「マジ?へへへ、嬉しいなぁ」
ベリーベル「お二人共、おはようございます!」
ノーマン「あっ、ベリーベルさんっ!」
ヤテン「ベリーベルさん、飴ちゃん、おはよう」
ヤテン「うむ、ベリーベルさんも卒業おめでとう。ロボットコンテストで知り合ってから、こんなにも長い付き合いになると思わなかったよ」
ベリーベル「ふふ、私もです!それに大学は違えどヤテンさんとノーマンさんと仲良くなって、楽しい日々を過ごして……充実した大学生活でした!」
ノーマン「………………」
ベリーベル「はい、なんでしょうか!」
ノーマン「えと、その……………………」
ベリーベル「はい!ありがとうございます!」
ノーマン「そ、そりゃあ好きだけど……ボク、あまりにも彼女と釣り合ってない気がするし、それに……ベリーベルさんにはもっと相応しい人がいると思うんだ……」
ヤテン「そうか……」
ヤテン「む……ああ、ありがとう飴ちゃん」
飴ちゃん「……………」
ヤテン「……飴ちゃん、どうかしたのか?」
ヤテン「……!」
ヤテン「…………ああ。胸に刻んでおくよ」
ヤテン「ザカライアさんも卒業おめでとうございます」
ノーマン「おめでとー!」
ヤテン「ザカライアさんは卒業後、どうされるのですか?」
ザカライア「ああ、言うてへんかったか。実はな俺、元々 捜査官やねん。せやから卒業後はまた捜査官キャリアに戻るつもりやで」
ザカライア「兄ちゃん驚きすぎやろ。そないに意外かぁ?」
ノーマン「す、すみません……警察ってめちゃくちゃ怖いイメージあるから……人当たりが良いザカライアさんが まさかと思い……」
ヤテン(そんなに警察官は怖いイメージがあるのか……?)
ザカライア「学ぶのに遅すぎるっちゅうことはないからな。俺、何をやってもスキルが成長しない時期があってな……そん時は開き直ってノースキル・ノープロブレムを信条にしてたんやけど……色々あって、色々勉強してスキルを成長させようと思ったんや」
ヤテン「なるほど……色々と……」
ザカライア「……せや、色々や。ホンマ色々あったわ。良いことばかりじゃなくて悪いこともあったし、周りからは眉を潜められるかもしれへんけど……俺は自分の生き方に後悔はしてへん。本当にやりたいこと、やってるからな」
ヤテン「……とても良いと思います」
キバ「いやああぁぁ出たあああぁぁ!!」
キバ「ううぅ……何の用だよぉ……言っとくがな、俺様 今日はあちこち行きたいところあって忙しいんだわ……」
キバ「……へっ?お別れ?」
クロ「うん……だって、クロ、全然キバしゃまの役に立ってなかったもん……キバしゃまと一緒に戦っても、毎回すぐ倒されたりして噛ませ犬だったしぃ……」
キバ「あー……でもほら、向き不向きってあるじゃん?お前のパワーは戦いには向いてないってだけだろ」
クロ「うぅ……キバ様優しいよぉ……でもね、クロ……自分で自分に納得してないのぉ……こんなんじゃキバ様に相応しくないのぉ……だから、修行の旅に出ることにしたの……もっともっと強くてイイ女になって、キバしゃまの恋人に相応しい女になるのぉ」
キバ「そ、そうか」
キバ「えっ」
キバ「お、おうっ!!俺様待つわ!いつまでも待つわ!!」
キバ「おー!」
キバ「おっ……ええと、面と向かって話すのは初めてだな。俺様は……」
リング「あっ……黒髪、赤目、一人称が俺様……もしかしてキバさん?」
キバ「そうだけど……なんで知ってんだ?」
キバ「あぁ……クルイークか。ったくアイツ……残留思念になっても相変わらずだな……」
キバ「おう……あと、ヤテンから追い出された時は一時的にお前の中に避難してた事があったわ」
リング「そうなんだ……だからなのかな。初めて会った気がしないの」
キバ「へへ、そうか」
キバ「ああ……色々一段落ついたから、どんな様子かなって見に来たんだ。それに俺様も体取り戻したし、改めて挨拶もしたかったんだわ」
リング「そうなんだ!」
キバ「おいおい、お前もヤテンみたいにガリ勉キャラかよ」
キバ「お前の親父?何かあったのか?」
リング「避難先から戻ってきてから、ずっとお父さんが帰ってこないの。電話しても仕事が忙しいからの一点張りだし、メールも返信してくれない……なんだか……避けられてるみたい……」
キバ「………………」
ハンドル「ヴァ、ヴァンパイア!?誰だ、お前は!」
キバ「ああ、そういや顔突き合わせんの初めてか……俺様だよ、キバ様だ」
ハンドル「お前がキバ…………もっとヤンキーな見た目を想定していた」
キバ「どういう意味だよ」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240529/02/black-jack-1011/0f/66/j/o1080060715444694494.jpg?caw=800)
キバ「つーかお前、リングから聞いたぞ。家に帰ってねえんだって?今は過激派のヴァンパイアもキング・クイーンというリーダーを失って大人しくなってる。帰ってこれないほど忙しい訳じゃねえだろ。娘を心配させてんじゃねえよ」
ハンドル「…………ずっと考えていたんだ。私は……リングの元にいる資格がないと」
キバ「はぁ?」
キバ「いや、わからん」
ハンドル「それは……切欠にすぎない。私の中にあのような残虐性と憎悪があったのは確かだ。だからこそ……付け込まれてああなった」
キバ「………………」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240529/02/black-jack-1011/00/e2/j/o1080060715444695009.jpg?caw=800)
ハンドル「……本来なら、生きているべきではないかもしれない……罪悪感に押し潰されそうになるんだ……私は……死で償うべきだろうか…………キバ、お前も本当は私が憎いんだろう?なんなら今 私を殺してくれても……」
キバ「はぁ……ぐだぐだうるせえな。死で償うべき?アホかよ。お前は生きろよ……そんでリングの側にいて、リングを守り続けろ」
ハンドル「え……」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240529/02/black-jack-1011/77/7c/j/o1080060715444695011.jpg?caw=800)
キバ「クルイークが案じたのはリングの事、クルイークが夢見たのはヴァンパイアとシムの共存、そしてヤテンが体を張って守ったのは明るい未来だ。悪いと思うならリングの事を守れ。そんでヴァンパイアとシムが手を取り合う未来の為に尽力しろ。その方が死ぬよりよっぽど償いだ」
ハンドル「……でも……」
キバ「生きてると罪悪感に押し潰されて苦しいんだろ?だったら精々 苦しんでろや。それがお前の罰だからな」
ハンドル「………………」
キバ「………………」
ノクス「……今度は貴方ですか」
キバ「あん?今度は?誰か来てたのか?」
キバ「ほーん……なんか話したのか?」
ノクス「……何も。ただ、そこにいるだけでした。何なんですかね……一体……」
キバ「……お前が差し伸べられた手を素直に掴めるようになるのを待ってるんだろ。アイツ、お前のこと……気に入ってたみたいだしな」
ノクス「…………………」
キバ「……それはお前次第だ」
キバ「今やってる途中だっての。人間性を取り戻して、なおかつ飼い慣らされた乾きを持つヴァンパイアはシムの街で暮らすことを許可されてる。シムを襲おうとするヴァンパイアも勿論いるが、そいつらは善良なヴァンパイアやハンターが協力して退治してる」
ノクス「ふぅん……なるほどね……一時的な平和ってやつだ」
キバ「あぁ?」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240529/02/black-jack-1011/85/de/j/o1080060715444695658.jpg?caw=800)
ノクス「どうせシムとヴァンパイアは いずれまた衝突しあう。“人”というのは自分の意にそぐわぬ者、理解できない者を排除しようとする。それが本能です。ヴァンパイアだけじゃない……エイリアンも人魚も、魔法使いもウェアウルフも……いつか同じ世界で生きていけなくなる……僕にはわかる……」
キバ「……そうさせない為に、俺様達が力を尽くすんだよ」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240529/02/black-jack-1011/f4/8d/j/o1080060715444695659.jpg?caw=800)
ノクス「本当の意味でわかりあう事なんて出来ませんよ。例え貴方の理想が実現したとしても、血塗られた平和だ。平和の裏には異なる思想を持つ者が排除されてきた背景がある。貴方達も実際そうだ。僕とわかりあえなかった。だから騙すような形で僕から力を奪い、表舞台から駆逐したんだ」
キバ「…………ああ、そうだよ。俺様達はお前とわかりあえなかったさ。言葉や心ではどうにも出来なかった」
ノクス「でしょお?自分達に都合の良い存在だけを残して、邪魔者は抹殺する。貴方達はこれからもそうやって生きていくんだ、選民意識バンザイ」
ノクス「開き直りましたね」
キバ「背景が血塗られていようがなんだろうが、やらなきゃ事態は悪化するだけ。背景どころか、全世界血だらけの未来になっちまうからな……」
ノクス「…………」
ノクス「……勝手にやっててください」
「オムニくん……君に足りないのは頭ではなく落ち着きだと思うのだが……」
キバ(うるっさ。またオムニが騒いでんのかよ)
オムニ「うぅ〜」
キバ「おおっ、なんかめっちゃハイテクなもんがある!!」
オムニ「んえぇ?でもキバに触らせたら壊しそうだし……壊したら理不尽にも怒られるのオレだし……」
キバ「壊さねーよ!俺様、不器用じゃねえし!」
ブレーキ「キバ……オムニくんの訓練中なのだから邪魔はしないように……」
オムニ「おお、ブレーキさん優しい……これがドライブさんだったら今頃 理不尽にもオレが怒鳴られてるわ……」
オムニ「うひいいぃ!」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240529/02/black-jack-1011/21/77/j/o1080060715444696476.jpg?caw=800)
オムニ「ふふん、オレのパワーのお陰さぁ!ドライブさんを死なせたくない、もう誰も失いたくない……そんなオレの思いが眠っていた力を覚醒させた!オレのヴァンパイア・パワーを全てドライブさんに注ぎ込み、魂を再生させたんだ!!」
キバ「力の覚醒か……まさかお前が再生のパワーに目覚めるとはな……」
オムニ「へーい……でもドライブさんの叱咤も可愛いもんだぜ……ドライブさんはオレを守る為に体を張った……そしてオレはそんなドライブさんを救う為に覚醒した……まさに“そーしそうあい”ってヤツですね」
ドライブ「ほう、叱咤が可愛いとな。ならばこれから10時間説教してやろうか」
オムニ「あっ!それはごめんなさい!!」
ドライブ「……これからの事を考えれば不死の方が都合良いからな」
キバ「これからの事?」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240529/02/black-jack-1011/c0/d7/j/o1080060715444696480.jpg?caw=800)
ドライブ「私はオムニを一人前に育てなければならんし……今の平和を維持するにはやらねばならん事が山積みだ。これらもまた不死の方が気兼ねなくやれる…………私はシムもヴァンパイアも殺しすぎた。未来を掴むには血塗れすぎている手だ。あの時死ぬべきだったのかもしれないが……死ぬよりも生きて、平和の為に尽力する方が……私のように愛する者を奪われる者を1人でも多く減らす方が……償いになるかもしれないな……開き直りに見えるかもしれんが」
キバ「………………」
ドライブ「どうした」
キバ「いやぁ……俺様、精神年齢18歳と同じような思考かぁと思って……」
オムニ「ド、ドライブさんは少し成長して精神年齢19歳にはなったぞ!バカにすんな!」
ドライブ「いや、18歳のままだが?」
オムニ「18歳への熱いこだわりは何なんすかぁ!!」
ブレーキ「大変ではあるが……ボスのこと、放っておけませんからね……どうも危なっかしいというか、目を離せないというか……」
ブレーキ「でも……精神年齢は私の方が上です」
ドライブ「くっ!!」
お前を失って1人だった私にも……仲間が出来たよ。
もう……安心してくれるよな、ウィンカー。
もしもそちらに逝った時は……胸を張って、堂々とお前と話せるよ。
最後まで生き切ると言った。
ならば私はその意志を尊重するだけだ……ヤテンは明るい未来の為に力を尽くしたんだ。
私がいつまでも暗い顔ばかりしていては……いけない。
ヤテン「ああ……お前との大学生活は…………まあ、ペースを大きく崩されたが面白かった」
キバ「そこは素直に楽しかったと言っとけや」
セイメイ「おかえり、ヤテン!!卒業おめでとう!!キバの妨害にも負けず最高成績で卒業だなんて……偉すぎるぞ!!」
キバ「妨害言うなし」
セイメイ「何言ってるんだヤテン!お前の晴れ姿、一番見える場所に置かなくて何処に置くっていうんだ!!」
ヤテン「一番見える場所に置く必要性がない……」
キバ「はぁ……相変わらずの親父だな……若干キモさが増したような……」
キバ「俺様とヤテンはマブダチだぜ?もうファミリーみてえなもんだろ。これからは毎日のように泊まりに来てやっからな」
セイメイ「はああああぁ!?」
ヤテン「まあ、良いではないか父さん」
セイメイ「ヤテンがそう言うなら良し!!」
キバ「チョロすぎんだろ」
タスク「……とっても、こう、賑やかなお家デスネ〜」
END