⚠WARNING⚠
血の描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。

 ニュークレスト



ハンドル「リング、ちゃんと必要な物は纏めたかい?」
リング「うん………………ねえパパ、本当にオアシス・スプリングスに行かなくちゃダメ?」

ハンドル「……ああ、ダメだよ。悪いヴァンパイアがいつやって来るかもわからないからね。オアシス・スプリングスなら太陽光も強いし、ヴァンパイアの魔の手も伸びにくいだろうから……少しは安心だ」
リング「そう…………パパは?パパは一緒に来てくれないの?」


ハンドル「ああ……パパはね、悪いヴァンパイアからリングや皆を守る為に戦いに行かなくちゃいけないんだ」
リング「……………」

ハンドル「リング……ママを頼んだよ」
リング「わかった」


リング「でも……ちゃんと迎えに来てね。全部終わったら、ママとリングを迎えに来てね、それで一緒に帰ろうね、約束だよ!」
ハンドル「……ああ」




ハンドル「……約束、か。その約束は……守れそうには」
「いえ……守らせてみせます」
ハンドル「その声は……」


ハンドル「ヤテンくん……?」


ハンドル「こんな所でどうしたんだ、君も早く避難を」
ヤテン「ハンドルさん……」


ヤテン「貴方に大事な話があるんです」

 

 数日後


クイーン(いよいよ憎きシム共を支配する時が来たか……)

クイーン(新月の子の力を持ちながら、歴代最強キングの力を得たノクス……あれを止められる者などこの世にはいない。シム共はヴァンパイア治療薬入りの弾丸で抵抗するつもりのようだが……そのような弾丸などノクスの強靭な体に刺さりはしない)

クイーン(……遥か昔……私はただのシムだった。だが無知なる太古の者達は……コウモリの糞が感染病の原因とも知らず、病が神の怒りだの呪いだの信じて……私を生贄に捧げ、無理矢理ここへ閉じ込めた……!)



 




『出して!!ここから出して!!』
『命乞いをするなど恥知らずな!神への捧げ物として選ばれたことを誇りに思わんか!』

『お母さん!お父さん!!お願い、助けて!!出して!!死にたくないよ!!』
『オプスキュリテ……貴女は死ぬわけじゃないわ。神のお側で仕え、苦しみも汚れもない……聖なるものに満ち溢れた天上で永遠の安らぎを得るのよ。それはとても幸せなことなのよ』


閉じ込められた洞窟は光も射しこまず、僅かな湧き水と鉱石……そしてコウモリだけがいる……地獄のような場所だった。


私は死にたくなかった。
……それに……私が死ぬことで神の怒りとやらが本当に鎮まるというのなら、私が死ぬことで私を捧げた村の者が救われるというなら……なおさら死んでなどやるものかと……いつかここを出て、奴らに復讐してやると強く思った。


渇きは湧き水で潤し、腹はコウモリを捕まえて鉱石で殴り殺し、生肉と血を啜って満たして数日を過ごした。
口の中には言葉では言い表せない程の血生臭さが広がり……最初のうちは何度も吐き戻したが、生存本能か、生きたいという意思が脳を麻痺させたのか……いつしか生肉や血が……美味いと感じるようになった……。


そう感じるようになってからだった……地震によって洞窟が崩れ、天井に微かな穴が空いたのは。
そしてその穴から月の光が射し込み……辺りに散らばっていた鉱石が赤く煌めき……その光を浴びた私の身体はヴァンパイアに変化した。

後から知った事だが、鉱石は元は闇の魔石だったらしい。
月の光を浴びて力を取り戻し、私の生きたいという思いと……私をこんな目に合わせた奴らへの怒りに共鳴し、私の肉体を闇の魔物に変化させたのだろう。


ヴァンパイアとなった私は洞窟を脱出して村の者を殺戮した。
だが私は怒りがおさまらず……何も知らずに呑気に日の下で暮らしているシム達に憎悪を抱いた。
あいつらにも……私と同じように地獄を見せてやろうと思った。

ヴァンパイア創造の力で配下を増やし、増やしたヴァンパイアの力を強めていき……特に強い力を持つ者をキングにしていった。
世界を闇に包み、支配する為に長い時を費やした……。



 




クイーン(そして遂にこの時が来た!世界はノクスが闇に包み、シム達はヴァンパイアの家畜として生き地獄を見る……ふふふ……)

 


 ブライトチェスター



ブレーキ「来たぞ!ヴァンパイア達が攻めてきた!」


キバ「守りの力を持つ奴らは結界を張れ!少しでも被害を小さくしろ!」


セイメイ「いいか、シムもヴァンパイアも関係ない!共に協力し、最後まで抗え!!」


ドライブ「最終防衛ラインはブライトチェスター大学……絶対に突破されるな!!」




ノクス「おーおー、頑張っていますねぇ……無駄な足掻きだというのに」


ノクス「いくら雑魚ヴァンパイアを倒したところで、大将首である私を止められなければ意味がないとわからないんですかね」




クラクション『こちらクラクション!フォックスベリーラウンジで交戦中!部隊の7割が死傷!』
ドライブ「まずいな……ラウンジは捨てて、フォックスベリー大学寮に退却しろ!大学寮防衛部隊と合流し、守りを固めろ!」
クラクション『はいー!!』


オムニ「ひいぃ……どんどん攻めてきますよドライブさん……どうなっちまうんですか……」
ドライブ(戦力差が大きいな……フォックスベリーエリアが制圧されるのも時間の問題か)


ドライブ(これが無駄な足掻きというものか……ノクスがいる以上、我々に勝ち目などない……終わりをただ先延ばしにしているだけ……)


ドライブ(……どうせ終わるならば……せめて、クイーンをこの手で仕留めてやりたい……ウィンカーの仇をこの手でとりたいが……叶わぬ願いか……!)


「ふふ……いい目をしているな」
オムニ「へぁっ!?
ドライブ「……その声は……」


ドライブ「クイーン……!」

 

 ブライトチェスターラウンジ前


キバ「うおお!キバ様シャドービーム!!」


キバ「しゃあっ!次だ、次!」
セイメイ「その聞いてて恥ずかしい技名は叫ばずにいられんのか!」
キバ「うるせえな!!気合を入れるのに必要なんだよ!!」

クロ「そうよぉ!キバしゃまのセンスにケチつけんなぁ!!」
セイメイ「う、ううむ……」


「ふぅ……やれやれ。まだ無駄に抵抗していたんですか……ゆっくりのんびりやっていこうと思いましたが……飽きてきました」


キバ「ノクス……!」 


ノクス「貴方達がいくら足掻いたところで無駄なんですよ。そもそも私が手を下すまでもなく、配下共で十分なんですけどね……」
クロ「はあぁ!?クロ達、そんなヴァンパイア達に負けないもん!」
ノクス「パワーが違いすぎるんですよ。ヴァンパイアの力というのはその者の心によって大きく形を変える。私やワイパーのように力を欲する者は力を奪う能力が目覚め、お前達のようにシムと共存したいなどという甘い考えを持つ者は戦闘能力を犠牲に、シムの世界で馴染みやすくなる力を得る……私の配下のヴァンパイア達は吸血や破壊行為を好んでいる……つまり、そういう力が強まっている。甘っちょろい貴方達では簡単に勝てないんですよ」


ノクス「ヴァンパイアの皆さんは今のうちに降伏した方が良いのでは?そうすれば仲間として受け入れてさしあげます。そもそも私を相手に勝てるわけがないんですよ。敗北が決まりきっているのに抗うなど馬鹿のすることだ。何故私に頭をたれない?」
キバ「……無駄だろうがバカだろうが……“人”には引けない時があるんだよ。それに……ダチを裏切んのも、テメェにヘコヘコ頭を下げるのも考えただけでヘドが出るんだわ!!バーカバーカ!!
ノクス「はぁ……そうですか」


ノクス「じゃあ……私自らの手で貴方達を終わらせてあげましょうかね」

 

 共同大学寮


オムニ「ぎゃー!!クイーンが何でこんな所にいいぃ!?ここ、本陣なのにっ!結界はられてんのに!」
クイーン「ふん、貴様らの結界など私にとっては無に等しい。ノクスはじわじわと追い詰めていくのが好きなようだし、絶対に勝てるという自信があるからか、本陣や最終防衛線に奇襲をかけたりはしないようだが」
ドライブ「………………」


ドライブ「……新たなキングの威を借り余裕ぶっているようだが……貴様自身は大した戦闘能力も無いことを忘れたか?キングだった頃の力は失われたとはいえ、貴様1人が相手ならば私とて負けはしない。それにこちらには貴様をただのシムに出来る治療弾がある。迂闊に切り込んできたことを後悔させてやっても良いんだぞ……」


クイーン「お前の愛する者を殺した私が憎いか」
ドライブ「当たり前だ!!!
オムニ「ひいぃ」


ドライブ「ずっと、貴様を殺すことを考えて生きてきた……!手段を選ばずに、汚い手も他者を利用することも厭わずに、組織を立ち上げハンターとして沢山のヴァンパイアを狩ってきた……!それも全部……貴様を殺す為に、復讐の為にだ!!
クイーン「……憎悪に溢れた闇を感じる目……」


クイーン「いい目だ……昔の私と似ている」


ドライブ「貴様と似ているだと!一緒にするな!!」


クイーン「ふん、何処を狙っている。それに私とお前は似ているじゃないか……目的の為には手段を選ばず、他人を欺き利用してきた。憎悪で心を満たし、人の心を失った」


オムニ「ド、ドライブさんは人の心を失ってなんかないやーい!だってオレのことを助けてくれるし〜!お前とは違うし〜!」
クイーン「………………」
オムニ「ひえっ!すみません、すみません!!」


ドライブ「オムニ、お前はキバの所に避難していろ!!後ろでギャーギャーやかましい!」
オムニ「へ、へいいぃ!」


クイーン「ジャスティン・ドライブ……お前は私が使い捨ててきたキングの1人……だが私はお前を個人的に気に入っているよ。私とお前はよく似ている。強い憎悪を抱き、死を目の前にしながらも足掻いて生き延び、目的の為に長い時を生きてきた」


クイーン「……私の目的は達成されたも当然。例え私が死してもノクスは世界の支配者となるだろう。だから……お前には特別にチャンスをやる」
オムニ「ひっ、ひえええぇ!?
ドライブ「オムニ……!?」


クイーン「さあ、お前の復讐を遂げるチャンスだ。今なら私は逃げも隠れもしない……お前の力で私の身体を貫き、殺すことが出来る……今のお前が最も大事な存在と一緒にな!」
オムニ「あばばばばば」
ドライブ「……っ」


クイーン「お前は愛する者の仇討ちをすると同時に、大事な友を自らの手で殺すのだ。復讐を遂げた喜びが勝るか、友を犠牲にした後悔が勝るか……楽しみだな。どちらにせよお前に待ち受けるのは……孤独だ」

 

 ブライトチェスターラウンジ前


クロ「ううぅ……」
セイメイ「はぁ、はぁ……」


ノクス「うーん、皆さん虫の息ですね。私はまだ2割くらいしか本気出してませんよ?」
キバ「へぇ……気が合うな……俺様も、まだ、2割しかマジになってねーから……げほっ」


ノクス「痩せ我慢とかダッサイですねぇ、立ってるのもやっとなクセに。もう痛いのも苦しいのも嫌でしょう?いい加減に諦めては?その方が楽になれますよ」
キバ「……諦めて、たまるかよ……」



キバ「……俺様のダチ達が夢見た未来……シムとヴァンパイアの共存……本当に、叶いそうなところまで、来てんだ……」


キバ「テメェなんかに、それを、壊されてたまるか!!
ノクス「はぁ……」


ノクス「だったら死ねよ」
待て!!


キバ「……!?」
ノクス「……おやおや」
セイメイ「な、んで……」


セイメイ「なんで、来たんだ……ヤテン……」


ヤテン「……キバ、父さん……私には黙って待っていることなど出来ないんだ」
キバ「だからってお前……!!お前が来たって何も出来ないだろうが!!お前にはもう戦う力がない!!死にに来たようなもんじゃねえか!!」
ヤテン「……そうだな。確かに私はもう戦う力がない……だが、力など無くても……私は私にしか出来ない方法で戦える」


ヤテン「私が……ノクス、貴様を止めてみせる!この戦いを終わらせてやる!」
ノクス「ほう……」

 


クイーン「どうした?何を悩む必要がある?ずっとこの日を待っていたんだろう?」
オムニ「ドライブさん……」


オムニ「……ドライブさん!!オレ、オレ、いいですからっ!!
ドライブ「え……」


オムニ「オレが死ぬだけで、ドライブさんの復讐が果たせるなら、い、い、いいですよ!!オレ、ドライブさんに助けられてなかったら、ワイパーに殺されて、死んでただろうしっ!!オレ、こんな形でドライブさんの役に立てるならっ、ほ、ほほほんもうですううぅ!!」
クイーン「嘘つけ……顔に怖い、死にたくないと書いてあるぞ」


オムニ「そ、そりゃ怖いよぉ!死にたくねえよお!!でも……ドライブさんの願いを叶えたいって気持ちも、ホントだしっ、だからっ、だからっ、やっちゃってくださいよおおぉドライブさああぁん!!」
ドライブ「……復讐のチャンス…………ウィンカーの仇…………私の悲願…………」


ドライブ「……そう、だな……」


もう終わりにしよう……全部……。