⚠血の表現があります⚠
苦手な方はご注意ください

……なんかフワフワする……夢の中なのかなぁ?
こうやってフワフワしてる時、いつも怖い顔のお兄さんが出てくるけど今日はいないの?


あっ!
やっぱりいた! 怖い顔のお兄さん!
今日もお話してくれるのかな?


……あれ?
なんだか様子がおかしいや……元から怖い顔だけど、もっと怖い顔してる……。

なあに?
……そ、と、あ、ぶ、な、い、に、げ、ろ?

 


リング(……あ……いつの間にか寝ちゃってたんだぁ……)


リング(そういえば、怖い顔のお兄さんが……外危ない、逃げろって……)


リング(……あの人誰……?なんだか嫌な感じする、怖い……)


クロ「……何見てんの。もう夜遅いし、さっさと部屋に戻って寝たら」
リング「お姉さん……外、怖い人、いる」
クロ「えっ?」


クロ(あ、あいつ……キバしゃまが言ってた、元ハンターのヴァンパイア……!ヤバそうな雰囲気だよぉ……!でもメガネをこれ以上戦わせたくないってキバしゃま言ってたし……クロが何とかしなきゃ……!)


クロ「ちょっとアンタ、他の皆に危険を知らせて裏口から逃がしなさい。いくら頭ん中がガキでもそれくらい出来るよねぇ!?」
リング「お姉さんは……?」

クロ「私はあの怖い人を止めてくるから、とにかくアンタは早く行ってよね!」
リング「う、うんっ」
リング(えっと……ノーマンさん、ベリーベルさん、飴さん、ザカライアさん、オムニさん、ノクスさん、ヤテンさん、セイメイさん……んええ、いっぱいいるよぉ……でも頑張らなきゃ)



ノクス「あれ、リングちゃん慌ててどうしたんですか?」
リング「ノクスさん!あのね、お外に怖い人がいるの!だから裏口から逃げろってクロさんが!」


ノクス「こ、怖い人!?」
リング「えっとね、銀色の髪したフワモジャの赤い目をしたおじさん!」

ノクス「フワモジャ……も、もしかしてハンターのワイパーさん?ひええ、それはマズいですよ!!よしリングちゃん、手分けして皆に声をかけて逃がしていきましょう!」
リング「うん!」





オムニ「あ、あばばばばば……」
オムニ(アイツが寮に乗り込んでくるなんて聞いてねえよおおぉ!!)


オムニ(とにかくあの人に連絡しないと……ひいぃ、死にたくない死にたくない……)


コンコンッ

オムニ「ひぎゃあああ!?
ノクス「オムニさーん、ノクスです!厄介な事になってるのでとにかく急いで出てきてくださーい!!」

オムニ「あううぅ……」
オムニ(連絡はしたし……あとはもう無事でいられるよう祈るしかねえよぉ……!)

 


セイメイ(……ヤテン……ブラッドを吸ったら急に様子がおかしくなって……倒れてしまうとは……それにキバが体を動かしていた訳でもなかったのに赤い目……ヴァンパイアとしての本能が侵食してきているのか……今のヤテンは膨れ上がった風船のような状態……いつ破裂してもおかしくない……)


セイメイ(ルミナ……俺はまた……大切な人を守れないのだろうか……)


キバ『……………気を失ってるのはヤテンだけで、俺様の意識はあるんだが……体の主導権を得ることが出来ない……阻まれる……ヤテンの力が……俺様より強くなってきた証か……?』


セイメイ(うっ……一瞬目眩が……ヤテンにブラッドを吸われすぎたせいか……)

コンコン

セイメイ「誰だ!
リング「セイメイおじさん、私……リングです……」
セイメイ「リングさん……?」


セイメイ「リングさん、どうしたんだ?」
リング「あのね、外に銀色の髪のフワモジャな怖い人がいるの。クロさんがワイパーさんとか言ってた」


セイメイ「ワイパーだと!?間違いないのかい!?」
リング「う、うん……危ないから皆に知らせて裏口から逃がせってクロさんが……」

セイメイ「……わかった、ありがとう……他の人達にはもう知らせたのかい?」
リング「えっとね、ノクスさんと手分けしてお知らせしてるの。ベリーベルさんと飴さんにはお知らせしたから、次はヤテンさんにお知らせしにきたの」
セイメイ「そうか……じゃあリングさんは…………もう逃げてくれ。オレはその怖い人を追い返してくるから」


リング「でもヤテンさんは?ヤテンさん寝ちゃってるよ、起こさないと」
セイメイ「ヤテンは……」

セイメイ(ヤテンが目覚めた時に状況把握出来ないのは危険だが、リングさんを残して万が一危険な目にあったら……ヤテンの弟子というヴァンパイアもまだいるし……そちらに任せるしか……)

セイメイ「……ヤテンは暫く眠っていて、起こしても起きないんだ。リングさんじゃ運べないし、ノクスさんに知らせてから逃げてくれないか」
リング「わかった!」



セイメイ(……まさか、ワイパーさんが現れるとは……貧血で少し目眩がするが……そんな事を言っている場合じゃないな……)



キバ『ワイパーがやって来たって……マジかよ!ヤテン、早く起きてくれ……!』



ノクス「例のワイパーさんが来て、マズそうなんです!裏口から急いで逃げてください!」
ノーマン「わ、わかった……!あの、ヤテンとキバは大丈夫かな……」

ノクス「お二人にもちゃんと知らせます!ノーマンさんはとにかく逃げてください!」
ノーマン「うん……頼んだよ!」



ノクス「ノーマンはこれで良し……あとは……」


ノクス「あっ、オムニさん!ザカライアさんの避難はさせましたか?」
オムニ「ひ……………ち、ちゃんとザカライアさんは逃がしたよ……」
ノクス「なら良かった!じゃあ後は……」

リング「あっ、ノクスさん!」


ノクス「リングさん、調子はどうですか!」
リング「飴さん、ベリーベルさんにはお知らせして逃げてもらったよ……その後ヤテンさんのお部屋に行ったけど……ヤテンさん、眠ってて起こしても起きないんだって。それにセイメイさんは怖い人の所に行っちゃったの……」
ノクス「セイメイさんが!?」


ノクス「…………………」


ノクス「わかりました……リングさんはもう逃げて、オムニさんはヤテンさんを連れて逃げてください!僕はセイメイさんの手助けに行きますよ!!」
オムニ「えっ?えっ!?」

ノクス「セイメイさんに何かあったら、ヤテンさんとキバさんに顔向け出来ません……怖くても僕はやりますとも!!」
オムニ「いや、だって……あの……」


ノクス「オムニさんはヤテンさんをちゃんと連れて逃げるんですよ!!そうしないと怒りますよ!!」
オムニ「ひいぃ……わかった、わかりましたからっ!!」


ノクス「では、いざ出陣!!うおー!!
オムニ「………………」



ノクス(……今日は新月…………面倒なことになりませんように……)



 




……ここは……何処だ……。


人の気配がする……誰だ……。


…………私……?


「本能に従え、抗うな。人の形をしていたところで所詮中身はケダモノだ、生命の根源を喰らう不浄の存在……ブラッドパックやフルーツで誤魔化しても、根っこの部分では人の血を渇望している、人の血でないと本当の意味で渇きを潤せない」


「お前だって、心の何処かで血を求めてるだろ」


「誰よりも強い力を求めていたじゃないか」


「その渇望は恥じることじゃない、正しいことだ。理性なんてそんなもの……捨ててしまえ、あとは俺に任せればいい……」
やめろ、来るな!!



 




ヤテン「はっ……」
オムニ「んげっ!起きた!?」

キバ『ヤテン……大丈夫か?』
ヤテン「……あ、ああ……父さんからブラッドを貰ったあとの……記憶がないが……ところで父さんは何処だ。それに何故オムニが私の部屋にいる?」

オムニ「えっと、その……」
キバ(……セイメイが心配だが……今、こんな不安定な状態のヤテンをワイパーとのゴタゴタには巻き込めねえ……なんとか言いくるめてここから逃がすしか……)


ヤテン「……あ……?」


キバ『うわっ!急に立ち上がってどうしたヤテン!!』
ヤテン「……ヴァンパイアの気配がする」

キバ『……え?お前……なんでわかんだよ……今まで、気配なんて察知出来なかったのに……』
ヤテン「…………」


ヤテン「……父さんはヴァンパイアと戦っているのではないか?だからこの場にいない」
キバ『……………』

ヤテン「沈黙は肯定と捉えよう……相手はただものではない、いくら父さんがハンターと言えども1人では……助けに行くぞ」
キバ『ま、待てっ!それは……オムニ、止めろ!!止めないとぶっ飛ばすぞ!!
オムニ「へ、へいっ!!」


ヤテン「邪魔をするな!」
オムニ「ふぎゃっ!


オムニ「ううぅ……ビリビリする……」
キバ『だー!!役に立たねえ奴!!』


ヤテン「父さん……!」

 


クロ「ううぅ……」



セイメイ「く……」
ノクス「セイメイさん、大丈夫ですか……!」
セイメイ「大丈夫だ……」

ワイパー「どう見ても大丈夫じゃなさそうだけどな……」


セイメイ「ワイパーさん……貴方は何がしたいんだ……ヴァンパイアが憎くてハンターになったんじゃないのか……!それなのに貴方は何故ヴァンパイアになって……見境もなく……」
ワイパー「……オレが憎んでいたのは、ヴァンパイアじゃなくて弱い自分自身だったってことよ」


ワイパー「オレは“恐怖”から解放されたかったんだ……ヴァンパイアに騙されて蹂躙され、力の差を見せつけられて……ヴァンパイアに恐怖を覚えた。オレは恐怖心に支配された。だからオレは力を得て、強くなってヴァンパイアをぶち殺せるようになれば……恐怖を克服出来ると考えていた」


ワイパー「だが実際はどうよ……ヴァンパイア共にボコボコにされるばかりだ。力が欲しくて欲しくて仕方ない……だが……シムの限界ってもんを見た。どれだけ鍛えたって種族の差は埋まらない」


ワイパー「クソヴァンパイアになるのは抵抗感があったが、いざなっちまえば この高揚感!たまんねえなぁ!!簡単に力が得られる!強くなれる!」


ワイパー「今となっちゃ、オレをヴァンパイアにした奴に感謝の気持ちでいっぱいだぜ……」


ワイパー「オレは誰よりも強くなる……強くなればオレは恐怖に支配されずに済む……あの新月の子の力を頂けば、もう敵無しよぉ!!」
ノクス「そ、そんなに上手くいきっこないですよ!強すぎる力は身を滅ぼすって言うじゃないですか!ヤテンさんの力を奪っても……貴方にはきっと耐えられませんよ!」
ワイパー「……耐えられるかどうか、試してみりゃわかることだ。とにかく新月の子を渡せ、どうせオレは止められねえよ」


セイメイ「誰がヤテンを渡すか!!
ノクス「セイメイさんっ!!」


ワイパー「弱いくせにイキってんじゃねえよ!!」


ワイパー「凄腕のヴァンパイアハンターも大したことねえなぁ」
セイメイ(……本調子で、装備さえ整っていたならば……)


ワイパー「お、懐になんか入ってた……女か……コイツがお前の元恋人ってわけか」
セイメイ「返せ……ルミナの写真!!」


ヤテン「父さん!!
ノクス「ヤテンさん……!」


ワイパー「おっ!向こうから来てくれるとはありがてえなぁ」
セイメイ「ヤテン……何故……来たんだ……!」


オムニ「あっ……間に合わなかったああぁ……」


ヤテン「貴様……よくも父さん達を」
ワイパー「全員動くな、動いたらセイメイの首が飛ぶぞ」
セイメイ「ヤテン、いいからお前は逃げろ!!キバ、ノクスくん、ヤテンをこの場から遠ざけてくれ!!戦わせるな!!刺激を与えるな!!


ワイパー「うるっせぇ」
セイメイ「ギャッ」
ヤテン「父さん!!


ワイパー「あー、父さん父さんうるせぇ……実の親子でもないくせに……」
ヤテン「……っ、実の親子じゃ、ない……?」
キバ『おい、ヤテン聞くな!口からでまかせだ!』


リング「……………」
リング(ヤテンさんが心配で戻ってきたけど……なんだか、大変で、怖いことに、なってる……?)


ワイパー「あー、まず覚醒が必要だな。覚醒して暴れ出す前に一気に力頂かないと……」
ヤテン「…………覚醒とは何だ。貴様は……私のことを、何か知っているのか」

ワイパー「知ってるぜ、キバもセイメイも……お前のことをお前より知ってる。自分のことなのに何も知らないのはお前だけだ」
ヤテン「え……」
キバ『っ……ヤテン、惑わされるな。お前を動揺させようと、嘘をついてるんだ……あんな奴の話なんて聞くな!!』


ワイパー「嘘ついて誤魔化してきたのはお前らだろ?おい、メガネ。お前……自分の母親の顔、知ってるか?」
ヤテン「……知ら、ない」
ワイパー「そうかそうか、じゃあ見せてやるよ。ほれ」

キバ『ヤテン、見るな!!
セイメイ「ヤテン……!」


ヤテン「……この人が……私の、母親……?」


ヤテン「……全然、似ていない……髪色も……違う……」


ヤテン「……私は……父さんにも、母さんにも……似ていない……」
ワイパー「そりゃあ血の繋がりがないんだから似てるわけないだろ!!」
ヤテン「……っ……」

キバ『べ、別に親子だからって似るとは限らねえし!真に受けるなヤテン!!』
ヤテン「……ならば髪色は?髪色の遺伝は両親からしかない……だが父さんも母さんも……私とは髪色が違う……」


ワイパー「……お前のその髪の色はな……特別なんだよ。お前は新月の」
ノクス「!」


ノクス「やめろ!


ワイパー「おっと、危ない!不意打ちとはなかなかセコいじゃねえか!よっぽどセイメイの首をちょん切ってほしいみたいだな?」


ヤテン「ノクス……手を出さないでくれ……頼む……」
ノクス「………………」


ワイパー「……人質ってのは本当に便利なもんだな……メガネ、ヴァンパイアパワーでセイメイの記憶を読み取れ。今のオメーなら性格読解の応用で出来るはずだ。そうすればセイメイを解放してやってもいい」
セイメイ「……!」

キバ『そんなこと、する必要ない……どうせコイツは解放なんてしない……!やめろヤテン!』
ヤテン「…………すまない、キバ、父さん」


ヤテン「私は……父さんを助けたい……それに……私が、本当は何者なのか、知りたい……だから……」
リング「駄目だよ!!


セイメイ「リングさん……!?逃げたんじゃなかったのか!?」


リング「ヤテンさん、駄目だよ……そんな事しちゃ駄目だって、怖い顔のお兄さんが言ってる。さっきからずっと頭の中で声がするの、ヤテン殿を止めてくれって」
ヤテン「……クルイークが……?」


リング「よくわからないけど、キバも危ないからやめろって、声してる。だから……」
ヤテン「……キバが危ない……」


ヤテン(クルイーク……リングさんの中に……いるんだな。守っているんだな)


ワイパー「邪魔すんじゃねえよ女!!おいメガネ、セイメイが死んでもいいのか?さっさとどうするか決めやがれ!!」


ヤテン「…………キバ……お前、前に言っていたな?魂だけでも出ていくことが出来ると」


キバ「無理無理、今出ていっても力が回復しきっていない俺様は自分の体を再生できないから死んじまう。それに俺様が出ていっても、ちゃんと分離の儀式をしない限りお前の体はヴァンパイアのままだぜ」


ヤテン「……今なら魂の切り離し方もわかる。すまないキバ、私は……父さんを見捨てられない……だが、私に付き合わせてお前を危険に晒せない……だから……」
キバ『っ!?


オムニ「な、なんだぁ!?」
ノクス「キバさんの魂……ヤテンさんが追い出したんですか!?」


キバ『ヤテン……!』
ヤテン「クルイーク、すまないがキバを頼む」
ノクス「リングさんの中にキバさんの魂が……」


セイメイ「ヤテン……やめろ……!」
ヤテン「…………」








ヤテン「……ぁ……」
ワイパー「その顔……ふーん、全部思い出したみたいだな……じゃあもう人質は用済みか」


ヤテン「……私は……ルミナさんを殺した奴らの、息子で……新月の子で……」


ヤテン「…………普通じゃなかった……」



「そうだお前は普通じゃない……どんなヴァンパイアよりも残虐で醜悪なケダモノだ」
ヤテン「やめろ……」



セイメイ「くっ……気を確かに持てヤテン、力に、本能に支配されるな!」
リング「ヤテンさん!」
ヤテン「私に近づくな!


ヤテン「……己の正体を自覚した途端に……血が、欲しくて、仕方なくなった……浴びるように飲みたい……渇いて渇いて仕方ない……近づいたら、私は……貴方達を殺してしまうかもしれない……」


ワイパー「殺しちまえばいいだろ?ほら」
セイメイ「いっ……」


ワイパー「美味そうな血の匂いがするだろ?飲んじまえ飲んじまえ、そして覚醒しちまえ」
ヤテン「…………っ!!」


「そこまでだ」
オムニ「あっ……!」
セイメイ「え……」


セイメイ「ボス……?」


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