対ヴァンパイア組織サザンクロス 本部




ブレーキ「まだ連れ去られたノーマン青年は見つからないのか?」
クラクション「はいぃ……可能な限り人員を確保して捜索に充てがってるんですがぁ……」

ブレーキ「……ワイパーの方はやはり連絡がつかないのか?」
クラクション「全然駄目です……ワイパーさん、何処に行っちゃったんでしょう……まさか跡形もなく食べられちゃったとか……」


ブレーキ「ヴァンパイアが食すのは血液だけだ、肉は食べない。死んでるのだとしたら遺体はミイラにでもなっているだろう。遺体すら見つからないということは、何処かで生きている可能性は高い」
クラクション「はうぅ……でも生きてるなら、どうして連絡をしてくれないのでしょうか……」



クラクション「ワイパーさんの部下2人が報告に来なかったらピンキーズくんがさらわれたのもわからなかったし、2人が目を覚ましてワイパーさんに連絡しても駄目だったっていうし……1人でピンキーズくんを探してるんでしょうか……」



ブレーキ「とにかく、引き続き捜索を頼む。セイメイも早朝にはセルヴァドラーダから帰ってくるからな」



ブレーキ「………………」



ブレーキ「ボス、ジャッジです」
ボス「入れ」


ブレーキ「失礼します、消息を絶ったヴィラン・ワイパーと連れ去られたノーマン・ピンキーズについて……」
ボス「みなまで言うな……わかっている」
ブレーキ「えっ?」


ボス「ピンキーズの方は……放置で良い。新月の子が向かった……君もよく知る……セイメイが息子として育てたあの青年がな」
ブレーキ「……何故それを」
ボス「隠し通せると思ったのか?私は君が思っている以上に全てを知っているよ」


ボス「ヴァンパイアを滅するには、あの青年の力が必要だ。その為には……目覚めてもらわなくては」


ボス「ワイパーの方も既に手遅れではあるが……踏み台にはなってもらえそうだよ」
ブレーキ「手遅れ……とは?」



ボス「……長い間生きてきて……今が一番のチャンスだ。君には全てを話しておこうか、私の計画と……」


ボス「私が何者であるかを……」

 

 ムーンウッドミル




キバ「てめぇ、ここで会ったが百年目!ノーマンは返してもらうぞ!!」
コルヌ「随分イキるじゃんかキバ樣よ……ウルフに勝ったのは新月の子のお陰だろ!!」

キバ「げっ……!」
ヤテン(……また、新月の子……?)


キバ「なっ、なんの話だよぉ新月のなんちゃらって!俺様そういうの全然わかんねー、あははは!」
コルヌ「ビックリするくらい誤魔化すの下手だな」


ヤテン『……キバ、新月の子というのは』
キバ(そんなのただの おとぎ話だっての!アイツは俺様が新月の子か何かって勘違いしてんだよ!とにかくあんな奴の言うことは聞き流せ!)


ヤテン(……違う……キングは私が新月の子だと言っていた……それにこのヴァンパイアも明らかにキバではなく私が新月の子という口ぶりだ……)


ヤテン(キバ……お前は……何を知ってるのだ……?)


キバ「変な話題で気を逸らそうったって無駄だぜ!ノーマンは何処だ!ノーマンを出せ!」
コルヌ「ノーマンノーマンうるさいねぇ……」


コルヌ「そんなに見たけりゃ見せてやるよ、ほれ」
キバ「あっ……ノーマン!

 


デンス「やっほー!キバ様見てるぅ〜?いぇーい。ほらピンク頭、お前も笑えよ。配信中だぞ?」
ノーマン「ひいぃ……」


キバ「テメー!約束通り来てやったんだからノーマンを解放しやがれ!!」
デンス「来たら人質を解放するってメールに書いてあったか?書いてないよなぁ!ご覧の通り、ピンク頭の側には俺がいる……お前が逆らえばコイツの命は無いぞ!」

ノーマン「ヤ、ヤテン……」
キバ「汚え野郎どもだ……!」

 


キバ「……テメーらの狙いは何だ?俺様達をどうするつもりだ、キングにでも突き出す気か?」
コルヌ「最初はそのつもりだったけど……デンスから面白い話を聞いてね……気が変わったんだよ。新月の子の力を完全覚醒させて、その力を奪えば……」


コルヌ「アタシ達は世界最強になれるんじゃないかってね!
キバ「うわっ!


コルヌ「死なない程度に抗っておきなよ、この激戦でソイツの本能が刺激されて目覚めるかもしれないからね〜」
キバ「……っ、ふざけんな……!」
キバ(本能が目覚めて力に呑まれたら……ヤテンの理性が、自我が……消えちまう!)


ヤテン『……本能、とは……』
キバ「ヤテン、コイツの話なんざ聞き流せっつってんだろ!!」
ヤテン(……何故キバはここまで、私に話を聞かせまいとするのか……)



ヤテン(私は父さんの息子で、ごく普通のシムだった筈なのに……何かがおかしい……)



キバ「いでっ
ヤテン『うぐ……思い切り食らった……目の前を星がチカチカと……』


キバ(コイツ……明らかに力が強まってる……ぶっちゃけ今のままだとコイツの言うように“死なないように抗う”のが精一杯だわ……この調子だと本当にヤテンへの刺激が強すぎて悪い影響が……一旦引くか……?)
コルヌ「おいおい、戦略的撤退っての考えてる?ピンク頭のこと忘れてないか?お前が背を向けたらその瞬間に弟がアイツをぶっ殺すけど、それでもいいか?」

キバ「ぐっ……」
コルヌ「あはは、難儀だねぇ。弱いやつの為に我慢しないといけないなんて」


キバ「……力を奪うとか簡単に言うけどよ、どうやって奪うつもりだよ。そんなヴァンパイア・パワーなんて存在しねえ筈だぞ」
コルヌ「デンスが教えてもらったんだよ……もう1人の新月の子に。ソイツからアンタが憑いてるその眼鏡が新月の子って教えてもらったってさ」

キバ「はぁ!?
ヤテン(もう1人……?)


キバ「だったらそのもう1人の新月の子とやらの力でも奪ってろや!」
コルヌ「そりゃあ最終的にはそうするさ……でも、アタシ達が知らないことを色々知ってるらしいし役に立つし……諸々終わってアタシ達姉弟が世界最強になったあとに、今までお疲れさん!って感じで力を頂くさ」

キバ「そんなにお前に都合良く話が進むかよ……ソイツに騙されてんじゃねえのか!」
コルヌ「でも力を奪う術は本物さ、実践もしたしな。騙されていたんだとしてもアンタから奪った力でぶちのめしてやりゃ完結よ」
キバ「…………………」


キバ(説得は無理か……しかしこれは大ピンチ……このままだとノーマンもヤテンも俺様も、全員……)





「なかなか良い感じじゃないか。でもまあ……やりすぎて今覚醒されてもタイミングが悪い……」


「仕込みの方に期待しておこうか」

 


ノーマン「ヤ、ヤテンがやられてる……」
デンス「うんうん、お前から奪った絵画スキル……最初はいらねーと思ったけど役に立ってんじゃん」
ノーマン「えっ!?


デンス「あそこにある小屋の中……」


デンス「あの中にはお前のスキルを封じ込めた水晶があって、それが姉ちゃんの力の動力源になってんのよ」


デンス「人質にされただけでは飽き足らず、スキルは姉ちゃんに力を与えて……いやー、ほんっとお前は役立ってんなぁ」
ノーマン(ボ……ボクのせいで……ヤテンが……)


デンス「アハハハ、ハ…………?」
ノーマン(きゅ、急に真顔になった……怖っ……)


デンス「……そこにいるのは誰だ?隠れてたって無駄だぜ、匂いがプンプンするんだからな……」



ワイパー「……………」
ノーマン「あっ!えっと、ヴァンパイア・ハンターのシム!!」
デンス「…………?」


デンス「お前、顔にキズがあった筈だ」


デンス「なんで綺麗さっぱり消えてんだよ」


ワイパー「……こういうことだよ……」


ノーマン「ひええええっ!?


ノーマン「あっ……」


ノーマン「檻が粉々に……」


ノーマン「あれ……というか、その赤い目って……」


デンス「へー、やるじゃんアンタ!やっぱりヴァンパイアになったんだな!そうだよなぁ!アンタはオレと同類だもんな、絶対力が欲しくてヴァンパイアになると思ってたよ!なるほどなぁ……ヴァンパイアの力で顔の傷を消したって訳か。なあなあ、どうだ力を得た気分は?気持ち良いだろ!」
ワイパー「馴れ馴れしく話しかけんな……オレは……オレに二度も屈辱を与えてきたテメーをぶっ殺す為にヴァンパイアになったんだよ!」

デンス「根に持つタイプかよ〜、そういうのはモテないぜ?」
ワイパー「黙れや……」


デンス「ヴァンパイアになったからってイキりすぎだろ!こちとらヴァンパイア歴はそこそこ長いんだわ、なりたてヴァンパイアなんかが勝てるわけないだろ!」
ワイパー「御託はいい、さっさとかかってこいや!」


ノーマン「ひ、ひいい……」


ワイパー「おいガキ、テメーがいたんじゃ巻き込まないようにって気を遣ってガチになれねえ!さっさと逃げろや!!」
ノーマン「あ、あのっ、ハンターさん、ボクの友達も今ピン」
ワイパー「さっさと行けっつってんのが聞こえねえのかボンクラァ!


ノーマン「うぅ……」


デンス「逃がすか!
ワイパー「お前の相手はオレだろうが!!行きたきゃオレをぶちのめしてから行けや!!」


デンス「う〜ん……オレとアンタは同類なんだからさ、仲良くしようぜ?現在進行系でオレと姉ちゃんはさらなる力を得る為に頑張ってんのよ。上手くいったらアンタにも力を分けてやるからさ、な?」
ワイパー「力……新月の子ってやつか」

デンス「あれ……アンタも知ってんのか。あのメガネが新月の子って」
ワイパー「ああ……聞いたからな……オレをヴァンパイアにした、もう1人の新月の子ってのに」
デンス「……えっ?」


デンス「な、なんでアイツが……アイツはオレと姉ちゃんの協力者なんだぞ!勝手に情報を漏らして……」
ワイパー「……所詮ヴァンパイアだ、お前みたいに元シムのヴァンパイアとは倫理観や考え方が何もかも違うんだ」



ワイパー「ヴァンパイアってのはそうだ……人心掌握に長けていて、気づいたら心の奥にまで踏み込んできていて、信用させてきて……」


ワイパー「……最後には裏切る」



ワイパー「本当に恐ろしい生き物だ。あんな生き物が地上にいるってだけで恐ろしくて仕方ない……だが……力があれば……奴らを返り討ちに出来るほどの力があれば、もう何も怖くないんだ!!」

 


ノーマン「はぁ、はぁ……」


ノーマン「……ボクはなんとか助かったけど……ヤテンが……でも、ハンターさんに知らせようにも、戻ったらまた人質にされて足手まといになるかもだし……」


ノーマン「……ヤテン…………酷い八つ当たりをしちゃったのに、ボクなんかを助けに来てくれて……危ない目にあってて……」


ノーマン「…………行かなきゃ……!」