昔々、ある孤児院に仲良しの兄弟がいました


兄の名前はアレクシス
優しいけど少しぼんやりした男の子です。


弟の名前はガーランド
甘えん坊で内向的だけど賢い男の子です。



2人は乳児の頃、孤児院の前に置き去りにされていました。
孤児院の環境は劣悪で、院長もあまり子供の世話をしません。
空腹だったり衛生が悪かったり、関心が足りなくて悲しかったり怒ったりで、泣き声が絶えません。

それでもガーランドは大好きな兄と一緒だから、少しくらいお腹が減ったり臭かったりしても、いつも幸せでした。



ガーランド「にーたま、にーたま!
アレクシス「どうしたの」

ガーランド「にーたま、いっしょにおうまさんごっこしよ!ひひーん!」
アレクシス「いーよ……それにしても、がーらんど、おうまさんホントにすきだね」

ガーランド「うん、だいすき!あのね、おおきくなったら、ぼくじょうぬしになるの!おうまさん、かうの!そうしたらね、にーたまを、ぼくのおうまさんにのせてあげるね!」


アレクシス「わーい、たのしみ。がーらんど、いいこだね。ぎゅー」
ガーランド「ぎゅー!」


2人はいつも仲良しでした。
ガーランドは兄とずっと一緒だと信じて疑いませんでした。
しかし、兄が一足先に小学生になった時……ある出来事がありました。




院長「いやはや、こんな薄汚い所に本物のセレブ様が来るだなんて……」

女性「綺麗な孤児院でも、必ずしも良い子がいるわけではないからね」
男性「こういう所にこそ掘り出し物があるかもな……」


男の子「ねぇねぇ、セレブがいるよぉ!セレブ!」
アレクシス「セレブってなあに」
ガーランド「にいちゃま!わたくし、しってます!せれぶって、ゆーめいじんのことなのです!」


アレクシス「凄いやガーランド、さすがだね」
ガーランド「えへへー!」


2人がいる孤児院にセレブの夫婦がやってきました。
夫婦はワケあって子宝に恵まれず、見た目が良さそうな子供を養子にしようと色々な孤児院をまわっていたのです。



男性「うーん、良さげな子はいるかな」


女性「ねえあなた、あの子どうかしら……将来切れ長の目のイケメンになりそうな気がするわ」

男性「確かに……それに大人しくて聞き分けも良さそうだ。よし、あの子にしよう」


院長「おいアレクシス、ちょっとこっちに来い!」


アレクシス「なんですか?」
院長「おいガーランドまでくっついてきてるじゃないか、置いていけ!」

アレクシス「でも……」
院長「置いていけ、用があるのはお前だけだ!!


アレクシス「……ごめんねガーランド、ちょっと行ってくるね」
ガーランド「ふぇ……」



院長「ほらアレクシス、挨拶しなさい。お前の新しいパパとママだぞ」
アレクシス「えっ、パパとママ?じゃあ僕のこと、引き取ってくれるの?」

女性「そうよ、よろしくねアレクシスくん」
男性「じゃあ早速お家に帰ろうか」


アレクシス「待って、ガーランドは?」
男性「ガーランド?」

院長「ああー、すみませんコイツの弟です……甘ったれでいつもアレクシスに引っ付いておりまして……」
女性「もしかして、一緒にいた子?」

アレクシス「うん、そう。ガーランド寂しがり屋だから、一緒に連れて行かないと」
男性「うーん……」


男性「アレクシスくん、弟は連れて行けないよ。流石に子供2人は管理しきれないしね。それにあの子生意気そうな顔だから好きじゃないし……

女性「そうそう……それに兄弟だってずっと一緒という訳じゃないの、いずれ別々に生きていくの。あなた達は別々に生きていくタイミングが今なのよ……だからね、お別れしてらっしゃい」

アレクシス「……わかった」




アレクシス「ガーランド」
ガーランド「あっ、にいちゃま!おかえりなさい!」


アレクシス「あのね、ガーランド……ただいまじゃなくて、さよならを言いに来たんだ」
ガーランド「……え?」

アレクシス「さっきの……セレブだっけ?僕、セレブのシム達に引き取られることになったんだ。でもガーランドは連れていけないんだって……だから……さよならなんだ」
ガーランド「……さよなら……にいちゃまと、さよなら……」


ガーランド「……やだ


ガーランド「やだやだやだやだ、にいちゃまとおわかれなんてやだー!ひとりになっちゃう、やだーやだもん!
アレクシス「でも」


ガーランド「びゃああああああ、ひとりやだあああああ!!
アレクシス「………………」




院長「養子縁組を断るだと!?


院長「正気かアレクシス!セレブの家だぞ!金持ちだぞ!!あそこに引き取られりゃ人生の勝ち組も同然だぞ!!それをわざわざ拒否するなんてありえねえ!」
アレクシス「ガーランド……凄く泣いて、寂しがってるから……独りに出来ないよ」
院長「あんな鼻垂れ小僧の為に自分の幸せを棒に振るたぁ……バカなガキだ、まったく」




アレクシス「ガーランド!」
ガーランド「ぐすっ、ぐしゅ……にいちゃま……」


アレクシス「泣かないで……大丈夫だよ、僕はどこにも行かないよ。新しいお家に行くのね、やめたんだ。ガーランドを置いていけないから」
ガーランド「…………ほんと?」
アレクシス「ほんとだよ」

ガーランド「にいちゃま、いなくならない……?」
アレクシス「いなくならない」


ガーランド「……よかったぁ……」

大好きな兄はいなくならない――そう聞いてガーランドは心から安心し、笑いました。
しかし賢い彼はこの一件が「良かった」で済まないことに気づきました。


涙が止まり、頭が冷えたガーランドは思ったのです。
自分のせいで兄の幸せを壊してしまった、と。
せっかく引き取ってもらえたのに。
せっかくお金持ちのシムに選んでもらえたのに。

自分が寂しいからと泣きわめいたせいで、兄は養子縁組を断ってしまった。
ガーランドは後悔しました。

しかし後悔しても時すでに遅し。
ガーランドは取り返しのつかない事をしてしまったのです。






時が流れ、ガーランドは小学生になりました。
院長は最近遊び歩いてばかりで、孤児院に帰らない日が増えてきました。

お腹を空かせている子供達、壊れて放置されたままのシャワー。
そして院長は夜は殆どいないので、ベッドの下にモンスターが出てもスプレーをかけてくれる大人がいません。

モンスターが怖くて、満足に睡眠がとれない子も多かったです。

ごく稀に子供を引き取ろうとやってくるシムもいましたが、欲求がボロボロだったり不幸な赤ちゃんといった特質、恐怖持ちの厄介な子を喜んで引き取ってくれる奇異なシムはいませんでした。


ガーランドは ふと思います。
このままでいいのだろうか、と。

孤児院の環境はハッキリ言って劣悪です。
死にはしないけど、このままここにいても引き取られる見込みはないし、将来も真っ暗です。

だけど――外に出たら?

ガーランドとアレクシスは一文無しです、外に出たら路上生活を強いられるでしょう。
しかし外ならばカエルを捕まえて繁殖させたり、釣った魚を売ったり、コメディフェスティバルの優勝賞品を売り飛ばしたりすれば小銭を稼げます。

コツコツお金を稼げば、ティーンになった時に家を買うことだって出来ます。

食べ物や飲み物だって、ちょっと上手いことすれば手に入ります。


ガーランドには自信がありました。
彼は人一倍勉強を頑張り、大人が読むような難しい本を読んであらゆる知識を身に着けてきました。
だから外の世界でも生きていけるという自信がありました。

しかしそれは子供特有の根拠のない自信でもありました。
だけどガーランドはそれに気づかず、兄に孤児院を出ていこうと持ちかけました。


ガーランド「兄様、このまま孤児院にいても我々に明るい未来が待ち受けているとは思えません……将来を見据えるならば外の世界に出てお金を稼ぐべきだと思います」
アレクシス「お金……孤児院にいながらお金を稼ぐのはダメなの?」
ガーランド「ダメです……あのタヌキ親父はお金の気配にはシム一倍敏感です……我々が貯めているシムオリオンに気づき、自分のものにしてしまいます」


アレクシス「そっか……でも僕達、孤児院を出たら家がないよ?ホームレス小学生ってやつになっちゃうよ?生きていけるのかな……」
ガーランド「大丈夫です、兄様!わたくしにお任せください!家もお金も保護者もなくても生きていけますし、わたくしにはその知識があります!そう難しいことではないのですよ!」

アレクシス「なるほど……ガーランドが言うなら、じゃあ大丈夫なんだろうね。わかった、ガーランドに任せるよ」
ガーランド「是非ともお任せください!!

兄に頼られ、ガーランドは満面の笑みを浮かべました。

外で生きていく術には汚い手も沢山含まれています。
しかしガーランドは兄の為なら己の手を汚す覚悟がありました。

自分は兄の幸せを壊してしまったのだから、兄を守る為なら自分がいくら堕ちようと構わない――そう考えていたのです。


ガーランド「それでは早速行くとしましょう、暗くなる前に寝床を見つけなくては」
???「あー、まってー!


???「お話聞いたよぉ、ボクも連れてってー」

出ていこうとする2人を少年が呼び止めました。
その少年は兄がよくお世話をしてあげているラッキーでした。

ラッキーは怠惰で甘ったれな性格です。
自分から何もしようとしないので、兄を始めとする他の子供達が見兼ねて欲求の手助けをしていました。


ラッキー「ボクもこんな孤児院出たいよぉ、ねえアレクシスくん、ボクも連れてって。いいでしょ?」


アレクシス「うーん……ねえガーランド、連れてってあげようよ」

兄は心優しい性格です。
ラッキーを置いていくのが心配なのでしょうし、頼まれたから断れないのでしょう。


しかしガーランドは兄とは違います。
優しくなんてないのです。

兄と自分だけなら、手段を選ばなければ生きていける。
しかし、そこにラッキーが加わったらどうでしょう。
きっと怠惰なラッキーは役に立ちません。

ガーランドは兄だけでなく、ラッキーの世話までしなくてはいけなくなります。
そうなったら自分にかかる負担があまりにも大きすぎます。
ラッキーを連れていくメリットが見受けられませんでした。

だからガーランドはハッキリと言い放ちました。


ガーランド「兄様、ラッキーを連れてはいけません……お荷物を抱える余裕なんてないんです。わたくし達は自分のことで精一杯なのですから!」
アレクシス「そう……」


アレクシス「ラッキー、ガーランドがダメだって。だから連れてはいけないよ」
ラッキー「えっ、そんなぁ……待ってよぉ」

ガーランド「兄様!早く行きますよ!!
アレクシス「うん」


ラッキー「ひどいよおぉ!!見捨てるなんて、ひどいいぃ

ラッキーの叫びを聞きながら、ガーランドは兄を連れて孤児院を後にしました。
見捨てる――確かに見捨てたも同然です。
それも自分が面倒を見れないからと、自分が困るからという理由で。

ガーランドは少し胸の痛みと罪悪感を覚えました。






孤児院を出てから半年が経ちました。


ガーランドはスラム街で兄と共に路上生活をしていました。
ここは少しだけ物騒ですが、小学生が2人でいても誰も気にかけてくる事はありません。
そういう所ですから。
誰も干渉してこない事はガーランドにとってありがたいことでした。

身を案じられて補導でもされたら、また孤児院に逆戻りなのですから。

シムオリオンも少しだけ貯まってきました。
決して裕福な暮らしではありませんでしたが、それでもガーランドとアレクシスは孤児院にいた時よりも欲求を満たせていました。


ガーランドはあらゆる手でお金や飲食物を得ました。
カエルを捕まえたり、釣りをしたりといった事は兄に任せ、彼はひたすら汚い手を使いました。


ある時は大人を上手く言いくるめて料理教室クラブに入れてもらい、そこで作られた料理をこっそり所持品に入れました。
数日後にバレてクラブを追い出されてしまいましたが。


またある時は絵画教室クラブの集いに「将来画家になりたいから見学したい」と嘘をつき、大人達が描いた絵を勝手に売り飛ばしたりしてシムオリオンを稼ぎました。
傑作を売り飛ばした瞬間をクラブリーダーに見られ「それは私が受け取るべき金だ!」と迫られて激しいチェイスを繰り広げることになりましたが。


トラブルが絶えない日常でしたが、それでも何とか生きています。
貯金も順調です。
ガーランドは少しずつ成功に向かっていると思っていました。


???「あっ、ガーランドだぁ。噂はホントだったんだね〜」


ゴミを漁ろうとしたら聞き覚えのある声が聞こえました。
その声の主は、半年前孤児院に置いていったラッキーでした。

しかしラッキーはあの時と違い、高価そうな服を身に纏っています。


ラッキー「まだゴミなんか漁ってるんだぁ、クスクス」
ガーランド「…………その服……どうしたんですか」


ラッキー「あのね、キミ達が出ていって4ヶ月後くらいかなぁ、お金持ちのお婆さんが引き取ってくれたんだぁ。しかもボク達だけじゃないよ、孤児院に残っていた子をみんな引き取ってくれたんだぁ」
ガーランド「え……」

ラッキー「あ~あ、キミ達も出ていかなければ裕福な暮らしが出来たのにぃ。残念だね〜。やっぱり悪いことするシムには天罰が下るんだね〜」
ガーランド「……悪いこと……」


ラッキー「だって、いけない事して生きてるんでしょお?噂になってるよぉ、とんでもない悪ガキがいるってぇ。良くないよねぇ〜。キミっていつもワガママでアレクシスを振り回して不幸にして、自分だけニコニコしてるよね〜。アレクシスが不幸で自分は幸せとか悪人だぁ〜」
ガーランド「あく、にん」


ラッキー「まあ、せいぜい頑張ってね〜。ボクはこれから家族とスラニでバカンスしてくるから〜」

言いたい放題言って、ラッキーは立ち去っていきました。


残されたガーランドは思います。
確かに自分は兄を振り回して不幸にしています。

兄がセレブに引き取られる時、自分が我儘を言わなければ兄は今頃穏やかに暮らしていた事でしょう。

そして半年前。
自分が孤児院を出ようだなんて言い出さなければ、もしくは自分一人で出て行っていれば兄は他の子達と一緒にお金持ちのお婆さんに引き取られていました。


兄と一緒にいられて自分は満足しています。
兄を助けることが出来て自分は幸せです。
しかし兄は幸せなのでしょうか。
不幸なのはないでしょうか。

兄の不幸のうえに自分の幸せが成り立っています。
誰かの不幸で幸せを感じるなんて、これは確かに――


ガーランド(……俺は…………悪人だ……)






己が悪人だと自覚したガーランドは自棄を起こしていました。
バーに入り込み、カウンターやテーブルに置かれた料理やドリンクを手当たり次第バッグに入れました。

普段ならこんな大胆なことはしません。
ナイトクラブやカフェで他人が注文したものをコッソリ盗むことはよくしてきましたが、それは人気が少ない時間帯でやっています。

こんなに沢山のシムがいる時にやったことなどありません。


男「おい、クソガキ!!それは俺が頼んだメシだ!!

案の定怖いおじさんに見つかってしまいました。
ガーランドは必死に逃げましたが、怖いおじさんに追い詰められてしまいました。


ガーランド「ひっ……ご、ご、ごめんなさい……盗んだものは返しますから、許して……」
男「そういう問題じゃねえんだよ……俺は舐められたことをされるのが一番嫌いなんだ。ちょいとガリガリで薄汚いが顔は悪くない……まあまあ高く売れそうだな。調教しがいがある生意気なツラだし、そっちの趣味があるヤツにはウケがいいだろ」


アレクシス「ガーランド、何してるの?」
ガーランド「来るな兄様!!


男「なに、兄様?ほー、兄貴もいるのか。こっちもなかなかだな……まとめてオークションにかけるか……」
ガーランド「やめろクソ野郎!!兄様に手ぇ出すんじゃねえぶっ殺すぞ!!


男「クソ野郎だぁ!?ぶっ殺すだぁ!?生意気なガキだな!!売り飛ばすのはやめだ、テメェは死ぬまで俺様のサンドバッグにしてやる!!」


マッチョマン「はい、そこまでですよー!!」


男が拳を振りかぶったその瞬間、高い声がこの場に響き――髭面の筋肉質な男性が男の手を掴んで止めていました。


男「なんだテメェらは!
マッチョマン「まあ落ち着いてくださいな、相手は子供ですよ。それに人身売買は犯罪です」

男「はんっ、ガキが先に盗みを働いたんだろうが!それでこうなったのも自業自得だ!」
マッチョマン「確かにそう、正論です。しかしあなたはやりすぎです、殴殺する勢いです。あなただって殺シム者にはなりたくないでしょう?」
男「ウダウダウダウダうるせえな!!テメェらもぶっ殺してやろうかぁ!!


男は激昂し、勢いのままにマッチョマンに殴りかかろうとします。
しかし――


髭面の男「グレイブに手出しはさせん」



髭面の男に腕を掴まれ、そのまま殴られて男はあっという間に伸びてしまいました。


アレクシス「ガーランド、大丈夫!?
ガーランド「……は……はい……」


マッチョマン「ケガがないようで何よりです!!まったく驚きましたよ、バーに子供が一人でいると思ったら急に盗みを働いて、しまいには追いかけられていくなんて!」

このマッチョ2人はどうやらバーにいた客のようです。
ガーランドが今の男に追われていったのを見て、心配になって後を追ってきたそうです。


ガーランド「……なんで助けたのですか……わたくしは、悪人ですよ?盗みを働くようなクソガキですよ?そんなやつ、放っておけばいいものを」
髭面の男「……何か事情がある気がした。ただのイタズラだったり、悪意を持って盗んでいるようには見えなかった……お前の表情が……あまりにも悲痛だったから」

ガーランド「はぁ、そうですか……お優しいことですね……」
アレクシス「ダメだよガーランド。助けてもらったんだから、ちゃんとお礼を言わないと」

ガーランド「う…………ありがとう、ございました……」
マッチョマン「どういたしまして」


マッチョマン「ところで君達2人だけ?親御さんはいないのかい?」
アレクシス「いないよ、僕達ホームレス小学生だから」

マッチョマン「ホームレス小学生!?
ガーランド「ちょ、兄様!余計なことは言わないで!!」
アレクシス「だって質問されたから、答えたほうがいいかなって……」


マッチョマン「ねえ、そっちの……お兄ちゃんかな?おじさん達に詳しいお話してくれるかな?」
アレクシス「いいよ、僕達は孤児でね……」
ガーランド「あああああぁ

ガーランドの静止を無視して、アレクシスは自分達のことを包み隠さず話しました。

そして全てを話し終える頃にはマッチョマンの2人は大泣きしていました。


マッチョマン「ぶるあああああ!!こんなに小さいのに沢山苦労してるなんてええぇ」
髭面の男「ぶわああああああ!!弟は兄を守る為に、自ら手を汚してぶわあああああ!!


マッチョマン「事情はわかりました!君達、ウチに来なさい!
ガーランド「……へっ?」

マッチョマン「ですから、ウチに来なさい!君達は今日からウチの子です!引き取ります!!」
ガーランド「な、なんで……ですか?」

マッチョマン「放っておけないからですよ!!それにここで出会ったのも、きっと何かの縁!さあさあ、おいでなさい!」


アレクシス「ねえガーランド、悪いシム達じゃなさそうだし……行こうよ。それに面白そうだし」
ガーランド「う……」

ガーランドは思いました。
助けてくれたとはいえ、今さっき出会ったばかりの知らない大人達。
誘われるがままついて行って良いのだろうか……不安になります。

しかし、こうも思いました。
これが最後のチャンスかもしれない、と。

今までガーランドは自分が余計なことをしたばかりに、兄が幸せになるチャンスを潰してきました。

ここでガーランドが首を横に振れば、兄はそれに従うでしょう。
だけど――それがまた間違いだったら?


ガーランド「…………わかり、ました……行きましょう、兄様」
アレクシス「うん」

こうしてガーランドとアレクシスはアームストロング一家に引き取られることになりました。
この時ガーランドは、本当にこれで良かったのだろうかとずっと不安でした。



けれど大人になった今――彼は心からこう思えるようになりました。
これで良かったのだ、と。

沢山間違ってきたけれど、兄を不幸にしてきたけれど、最後にはみんな幸せになれたのでした。