病気のせいで学校に通えず、青春を病院と自宅で過ごしてきた病弱な青年ヤテン。
過保護な父セイメイにやれやれしつつも無事に病が完治し、念願の大学にも合格し、夢のキャンパスライフを送れると胸を躍らせていました。
なんとヴァンパイアになってしまった!!
夢のキャンパスライフ、どうなっちゃうの〜!?
ヤテン『何故だ……私の意志に反して体が勝手に動き、知性が微塵も感じられない台詞を口にしてしまう!』
?「あぁん!?誰が知性無いって!?」
ヤテン『……わ、私が考えていることが伝わっている……?』
?「おうおう、ハッキリ伝わってるぜ。えーっと……アマノハラ・ヤテンだっけ?お前に今どうなってるのか見せてやるよ」
ヤテン『鏡に私が……映っていない……だと』
?「映るわけないんだわ、何せ……お前の体はヴァンパイアになっちまったんだからなぁ」
ヤテン『はぁ!?』
ヤテン『お、覚えている……今にも倒れそうで顔面蒼白だった男……そういえば彼に会ってからの記憶が途切れ……』
キバ「話すとまあ長ーくなるんだけどよ……俺様、ヴァンパイアなんだわ。だが誰彼構わずブラッドを吸うような野蛮な奴じゃないぜ?ブラッドフルーツやブラッドパックで日々飢えを凌いでるんだ、偉いだろ?」
ヤテン『人の体を乗っ取っている方が、ブラッドを吸うより余程タチが悪いと思うが』
キバ「待てや、話は最後まで聞け」
キバ「ヴァンパイアにはシムとヴァンパイアの共存を望む派閥と、ヴァンパイアが世界を支配するべきという派閥があってよ……俺様は共存派に所属してんだわ。共存派はシムを襲うヴァンパイアを退治したりして平和を守ってる。で、俺様は支配派の奴らがシムを襲おうとしてるって話を聞いて……そいつらを止める為に戦ったわけよ」
ヤテン『ほう』
キバ「瀕死のヴァンパイアはまず肉体から崩れ落ちる。肉体ってのは魂を守る器だ、その器がなけりゃ魂は消え去るしかない。だから俺様は生き延びる為、崩れ落ちていく肉体を捨てて魂だけとなり、手頃な器に入り込んだのさ」
ヤテン『その器というのがもしや……』
キバ「そう、お前だ!」
キバ「お前の中に入り込んだのは良いけど、体が俺様のヴァンパイア・パワーの影響をモロに受けちまったらしくてな。まあそのお陰でお前さんはヴァンパイアになれたってわけよ。そして俺様もお前の体が完全にヴァンパイアになったことで、体の主導権も得た……ってわけ」
ヤテン『ってわけ、じゃないだろう!!ふざけるな!!私の体に勝手に入って魔改造しおって!!出ていけ!!そして今すぐ私をシムに戻せ!!』
キバ「無理無理、今出ていっても力が回復しきっていない俺様は自分の体を再生できないから死んじまう。それに俺様が出ていっても、ちゃんと分離の儀式をしない限りお前の体はヴァンパイアのままだぜ」
ヤテン『な……なんだと……』
キバ「まあ俺様もよ……悪いとは思ってるよ。でも死にたくなかったんだ。みっともなくても倫理的に正しくなくても、生にしがみついていたかったんだ……」
ヤテン『……死にたくなかった……』
看護師「先生、バイタル低下しています!」
医者「ヤテンくん、お願いもう少しだけ頑張って……!」
セイメイ「ヤテン!ヤテン、しっかりしてくれ!!」
ヤテン「おと……さん……すごく……くるしぃ……むねが、いたい……ぼく、しぬの、かな……」
セイメイ「……っ……」
ヤテン「…………やだな……しにたく、ない……しにたくないよ……」
セイメイ「大丈夫……死なない、お前は死なない……だから、気をしっかり持ってくれ……!!」
キバ「おっ、堅物かと思いきや意外と話がわかるじゃんヒョロガリメガネ。まあヴァンパイアでもさ、日光と食事にさえ気をつけりゃ普通に生活は出来っから。気楽に行こうぜ」
ヤテン『ノリが軽すぎる。おさまっていた怒りが再熱してきたぞ』
キバ「まあ、そうカリカリすんな。今から体の主導権をお前に返してやるからよ」
キバ『よし、そんじゃあお前にはヴァンパイアの暮らしってやつを教えてやるよ』
ヤテン「暮らし!?待て、今すぐにでも分離の儀式を」
キバ『だから、俺様はまだダメージが癒えてないんだっての。それに儀式だって簡単に出来るわけじゃない。ヴァンパイアに関する知識を得たうえで力を高める必要がある。1日や2日で出来る話じゃねーんだよ』
ヤテン「そ……そうか」
キバ『そんじゃあ、まず欲求の説明な。ヴァンパイアには体力と膀胱はない、そして空腹の代わりに渇き、体力の代わりにヴァンパイアエネルギーがある。まあ力を使ったり日光を防ぐのがヴァンパイアエネルギーだな。これが無いときに日光に当たったら多分死ぬ』
ヤテン(多分って……)
ヤテン(コウモリになれるのか……)
ヤテン「まあ……多少は理解したか……」
キバ『んじゃあ、まずは分離の儀式に必要になるからヴァンパイア学の勉強でもすっか。本は昨夜、体を借りた時に買っておいた』
ヤテン「用意が良いことだな」
ちなみにヴァンパイア学の最大レベルは15です。
たっか!!
ブーストかかってるわけでもないのに、ガンガン上がっていきますね。
はっや!!
ヤテン「む……父さん……」
セイメイ「……………ヴァンパイアの本?」
ヤテン「ええと……まあ、大学ではどのようなスキルが求められるかわからぬからな……満遍なく知識を得ようと……」
セイメイ「………そうか。だがなヤテン、父さんはヴァンパイアについて学ぶ必要は無いと思うぞ。いらない知識だ、あんな……醜悪な奴らに関する知識。この世で最も役に立たない」
ヤテン「は、はい……それも……そうだな……」
ヤテン(今日の父さんは少し恐ろしいな……)
キバ『……………』
ヤテン「ああ、そうだ」
キバ『ふーん………………似てないな、全然』
ヤテン「よく言われる。恐らく私は母親似なのだろう」
キバ『……へぇ』
キバ(あのオッサンは昨日俺様とファング派の戦いに乱入してきたヴァンパイアハンターだ。ヒョロガリメガネがヴァンパイア化したことにも、俺様が憑いてることにも気づいてねえみたいだが油断は禁物……気をつけねえとな)
これでシムの血を吸わずとも、自給自足で渇きを潤すことが出来ます。
その方法とは……
キバ『どうよ、ちったあヴァンパイアについて理解できたか?』
ヤテン「理解はした……が…………喉が……どうしようもなく渇く……」
キバ『それがヴァンパイアの渇きってやつだ。水なんかじゃ満たされない渇きだ、ブラッドじゃないと潤えない』
ヤテン「ブラッド……しかし、私はシムの血など吸いたくは……」
キバ『シムから吸うのは俺様の主義に反する。シム以外からでもブラッドは補給できるんだよ。もう少し日が暮れたら外行くぞ』
ヤテン「了解した……」
21時
ヤテン「了解……しかし、暗くならなくては外出もままならぬとは不便な話だ……」
ヤテン「あるわけなかろう。自慢じゃないが私はまともに外を出歩いたことすらないのだぞ」
キバ『マジかよ、引きこもりかよ』
ヤテン「……まあ、そのように捉えてくれて構わぬ」
ヤテン(同情などされたくないからな)
キバ『金魚って言えや。駄目だ駄目だ、もっと釣れ!!』
キバ『オメーが下手なんだよ。獲物がかかってもの~んびりリール巻いてんだもんな、そら逃げられるわ』
ヤテン「機敏な動きはあまり得意ではないのだ、仕方ないだろう」
ヤテン「……人は人、自分は自分。それが私の座右の銘」
キバ『コモレビ風に言ってやるよ。言い訳乙』
ヤテン『悪口を言うか釣りをするかどちらかにしたまえ』
ヤテン『逃げられたではないか』
キバ「オメーが貧弱なのが悪い、俺様の体だったら釣れてた」
ヤテン『言い訳は結構だ』
ヤテン「金魚の血…………形容しがたい味がする……」
ヴァンパイア学スキルが4になれば、魚やカエルからブラッドパックを作れるようになります。
人を襲わない良きヴァンパイアになるには必須級ですね。
しかし金魚一匹では量が少ないのか、あまり回復しませんでした。
ヤテン「多少はマシになったが……まだ完全には潤えていない……」
キバ『オメーが釣り下手なのが悪い。まあブラッドパックはコンピューターからでも頼めるから、足りない時は買い足していけや』
ヤテン「わかった……」
日曜日
いよいよ大学寮に入る日!!
キバ『ヴァンパイアだからな。棺桶じゃなきゃ落ち着けない体になってんだよ……で、お前やっぱり大学寮に入るの?』
ヤテン「当然だ、長年の夢だったのだからな。ヴァンパイアになったからと諦めてたまるか」
キバ『ほあ〜』
午前8時
ヤテン「うむ……大学でしっかりと学んでくる……立派な医者となる為にな」
ヤテン「ありがとう、父さん」
ヤテン(だが鼻水はつけないでくれ……)
キバ(うわ〜、暑っ苦しい。あの冷酷無比なヴァンパイアハンターがプライベートではこれかよ……)
選ぶのは左の殿堂あるBritechester大学です!
まあ諜報員になりたい訳ではありませんが医者にボーナスがある学位がないし、まあ医療心理学だと脳内変換しておきます。
ドレークホール寮
キバ『大学の何がいいんだか……』
ルームメイトは基本ランダム生成らしいですが、チートを使って全員の見た目と名前を変えました。
だってランダムに任せると肌色偏るんだもん……あと髭面と細目とぽっちゃり多くなるし……。
共同生活を送る仲間だし、個性と愛着が湧く見た目って大事じゃないですか!
許して!特質はいじってないから!
女性「わ〜、新入生さんだぁ〜!あたしチェルシー、よろしくね」
男性「俺はジェイソン・ハニーブラウン、宜しく」
ジェイソン「そこのスノボが飾ってある通路を左に行った所が君の部屋だよ」
チェルシー「昨夜、なんかでっかい荷物運び込まれてたねぇ〜。あの荷物なんなのぉ?」
ジェイソン「こらチェルシー、人のプライベートに深入りするもんじゃない」
ヤテン(大きな荷物……?身に覚えがないが、父さんが何か送ったのだろうか)
キバ『どうよヒョロガリメガネ、そいつは俺様からの入学祝いだ!ありがたく受け取りやがれ!!』
ヤテン「いや……何故棺桶……」
キバ『ヴァンパイアにとって、一番安眠出来る場所はベッドでもソファでもない。棺桶なんだよ。お前だって今朝ベッドの寝心地が悪いって言ってただろ?だから、昨夜お前が寝入ったあと体借りて、ダチに頼んで棺桶貰った』
ヤテン「……私の許可なく体を借りるのではない……」
キバ『いいじゃねえか、減るもんでもなし。これからもちょくちょく借りるからな。見てるだけってのも退屈だし。ウェヘヘヘ』
ヤテン(私の大学生活……平穏無事に終わる気がしなくなってきた……)
キバとヴァンパイアの体というイレギュラーを抱えて始まった大学生活。
ヴァンパイア大学生として暮らしていくことになったヤテンは無事に卒業し、元のノーマルシムに戻れるのでしょうか……?