窮鼠の一矢 | あだちたろうのパラノイアな本棚

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読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

 

 

今日は戊辰戦争のお話です。

奥羽越列藩同盟について調べるのを趣味の一つとしているわたしなのですが、そういえば「越」六藩のことよく知らないなー、と思いまして書籍を探していたのです。

長岡藩は最も有名で、長岡に米百俵くれた三根山藩、あとは村松藩、新発田藩(ココはいわくつきだが)、黒川藩、そして村上藩ですか。

 

その中で見つけた村上藩の小説。なんと河合敦先生の著作?

河合敦先生はTVの歴史番組で解説とかもされている歴史研究家です。何故よりにもよって選択が村上藩なのか?

 

どうやら、村上藩家老の鳥居三十郎のことを書こうとしたら、あまりにも村上藩に関する史料が少なく、評伝を書くのが難しかったとのこと。そこで小説という形をとったらしい。

それで読んでみたのですが、いやはや、なかなかよく出来た小説でした(生意気ですが)。面白かったし、アクションシーンなんかもハラハラものでした。

 

わたしは初めて知ったのですが、村上藩の戊辰戦争は複雑な経緯を辿ったのですね。あまり堂々と誇れないような不祥事も含まれるため、町おこしではPRしづらいんでしょうか。なんと戦の途中から村上藩士が新政府側と列藩同盟側の二つに割れて、お互いが銃口を向けて殺し合っていたようなんです。

 

うわあ・・・壮絶ガーン

 

村上藩主である内藤家は家康公の異母弟の血筋だし、幕府の要職にもついてきた歴史があるので、本来義理立てすべきは徳川幕府のはず。

けれど隠居してなお権力を持つ藩主の父・藤翁(内藤信親公)がまあ食えない奴でして、尊皇といえば聞こえはいいですが、

 

「ミカドを手にしている薩長に敵うわけない」

「逆らえば征伐されるに決まっている」

「内藤家は徳川と共に沈むわけにはいかない」

 

という考えで、あくまで恭順の道を選びます。

 

ある意味、先見の明があるというか真顔

情に流されなくてドライに現実を見るというか真顔

 

けれども村上藩は地理的に、庄内藩・会津藩と国境を接するという超危険地帯・・・

薩長軍も怖いが、庄内と会津は同じくらい怖い。こちらの方も味方をしないと早速攻めてこられそうだし・・・

 

村上の家中でも藩論が割れますが、薩長と戦う主戦派の方が勢いを増します。でも肝心の藤翁は、国元に帰ったら主戦派を抑えきれず逆に担ぎ上げられることを恐れて、絶対に国元に帰ろうとしないんです。彼にとっては国元や領民がどうなろうと、内藤家が存続すればヨシ。

 

オオイ!ムカムカ

 

小説の中での描写ですけど、これは酷いと思ったね。

 

こんなカオスの状態で、藩をなんとかしようと思ったのが少年藩主・内藤信民公でした。養父の藤翁に代わって「私が藩士をまとめる」と宣言してお国入りするのですが・・・

養子の少年藩主にそんな難しい役目ができるわけもなく、次第に追い詰められ、鬱っぽくなっていきます。

ある日、鴨居に帯をかけて首を吊り・・・

 

ええっ?!

 

ここ、びっくりしました。殿様なのに、武士なのに、、、

切腹じゃないのか!

 

さすがにこれは藩としての醜聞になるので、三十郎たち家臣は遺体を抱き抱えて腹に短刀を刺し、切腹したように見せかけます。この時の家臣たちの心境ってどうなんだろう。いたたまれない。

 

さて、これからどうする。

 

殿は死亡、大殿は音信不通(←本当に酷いオヤジ)。

 

若き精鋭である家老の鳥居三十郎に、藩の行方が託されたのです。もうやるしかないよね?!

気の毒すぎて、涙が出るわ。

 

鳥居三十郎らは家中の意見をまとめて列藩同盟に与することとし、(これ多分、河井継之助の強力な工作があったんじゃないかな)援軍に来た庄内藩士らと共に戦います。

が、戦況は不利に運び、長岡が陥落、そして隣の新発田が寝返るという事態に。

さあ大変だ!こうなると村上に新政府軍が攻めてきて、領内が戦場になってしまう。

 

そこで鳥居三十郎がとった選択は、徹底抗戦を叫ぶ主戦派を率いて庄内領へ脱走し、そこで戦うということでした。そうすれば残った者は決して新政府に抵抗しなかった藤翁をかつぎ、改めて恭順を誓えば悪いようにはならないだろうとの判断です。

 

村上に残った恭順藩士らはさっそく薩長軍の先鋒として同盟軍攻撃に使われるので、村上脱走兵が加わった庄内兵らと戦うことになります。つい先日まで同僚だった人と戦って殺し合うというのは、なんとも悲劇ですねえーん

(こりゃあんまり表に出したくない歴史だわな)

 

 

いやーそれにしても、

 

やっぱり庄内藩&新徴組

めっちゃ強いな!

 

かっこよ〜〜ハートハート

 

苦戦する時もあるんですけどね、結局は庄内藩が勝ちます。なんなの、この強さアップ

 

庄内藩は領民との関係が良好なので志願兵などもいて、協力関係や一体感が強い。村上藩は、財政再建時に領民から税を搾り取ってきたため武士は嫌われており、兵士らは領民にものすごく冷たく扱われます。そういうところも、三十郎が驚愕するところでした。

 

戦争の結果は、庄内藩も降伏。

そうすると村上藩は?

 

戦犯として首を差し出すのは家老なので、つまり鳥居三十郎ということになります。彼が自害を遂げた部屋が村上市のお寺に残っているそうですね。ここは一般の人が拝観とかできるのかな?

あとは、戦場になった鼠ヶ関も訪ねてみたくなりました。本の表紙イラストで鳥居三十郎が着ている、背に鳥居が書いてある赤い陣羽織が残っていて展示されてるらしいよキラキラ

 

不名誉かもしれないが、物語として読むにはドラマチックで面白い歴史だなあと思いました。が、絶対にドラマとかにはならない奴だな。

 

村上って皇后雅子さまの縁の地でもあるしな・・・

 

 

〜おまけ〜

 

 

7月のカレンダーは、三方ヶ原の戦いです。

ここで家康が討ち取られていたら歴史はどういうことになったのだろうね。