叛骨 陸奥宗光の生涯 上 | あだちたろうのパラノイアな本棚

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読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

 

 

いろんなとこに名前が出てきて、調べてみたいと思っていた陸奥宗光。津本陽さんの小説を見つけたので読んでみました!

 

陸奥宗光って、坂本龍馬の弟分として海援隊に入っていたり、明治になってからも後藤象二郎とか板垣退助とかとつるんでたりするから土佐の人っぽいイメージがありますけど、ご本人は紀州藩出身なのね。

 

父親が紀州藩で重用されたわりといい身分でしたが、藩内の政治闘争に敗れて一家追放されてたりしました。なので陸奥は子供の頃はけっこうビンボーしていて、「この恨みいつか晴らしてやる」と、反骨精神ありありの人だったようです。

政治家になってからは「カミソリ」と呼ばれたほど切れ味鋭い頭脳明晰な人物です。

 

さて、上巻は不遇の時代。

 

ガッツリ幕末から来ましたー

海援隊時代のこともちょっぴり書いてあるけど、正直この頃は陸奥があんまり活躍していないので、周りの政治情勢がメインになってます。

 

そういえば幕末の紀州藩のことってよく知らないなあ。

御三家だけどどういう動きをしたんだ?

 

全然知らなかったけど、実は紀州藩って意外にめっちゃ精鋭部隊だったらしいですね。第二次長州征伐では、紀州の法福寺隊という民兵隊が奮戦。長州の奇兵隊と激戦を繰り返し、二十回衝突して長州勢を蹴散らした・・・とか。

(井伊家や榊原家の幕府軍はこの戦争ではボロ負けしてたのに)

 

わたし、初めて知ったこの「法福寺隊」。

住職の北畠道龍が檀家の男たちを集めて結成したのですって。

この人ボーズのくせに武芸全般を学び、その実力は天才的。

 

この「北畠」って名前、まさか?

 

実はこの法福寺は、南北朝時代の北畠親房の孫が開いた寺なので、その跡継ぎなんですね。どうりで。

ということは、北畠顕家とかも繋がりがあるわけで。そういや武芸全般に天才的って、顕家卿を彷彿とさせるわね!

紀州藩の武装を整えるために、家宝であった護良親王の太刀も売っぱらったらしい。いいのか?どこに売られたんだ、護良親王の太刀ー!

 

すっかり紀州藩のことに話が集中してしまいましたが、そういうわけで維新後も侮れない武力を備えた紀州藩は新政府が無視できない存在になった。

そして、その紀州藩と新政府の間の交渉ごとを引き受けたのが陸奥宗光(この頃は陽之助)だったそうです。

 

 

陸奥宗光は主人公でありながら、得体の知れないとこがありましてね、表には出てこなくて、どちらかというと暗躍してるんです。裏で糸を操る存在。

舌鋒鋭くほんとにキレキレなんですけど、どストレートってわけでもないです。裏工作とか色々します。

外交上手とはそういうものかも知れませんが、あんまりヒーローっぽくないなあ。

 

そのために墓穴を掘ってしまって、国事犯として逮捕されてしまいます。

 

紀州出身で薩長の藩閥政治からは締め出されている彼は、この藩閥政治をなんとかぶっ壊してやろうと同志たちと運動しておりました。

特に敵視してたのは大久保利通。

もうこの人ラスボスですよ。あまりに強大な敵です。

 

大久保のことは「無能だ」っていう人は誰一人いないんですけど、むしろめちゃくちゃ有能なんですけど、全部自分の一手に握りたがるんです。

土佐のボス、板垣退助も敵わないですね・・・

後藤象二郎に至っては、何考えてるかわからないめっちゃフリーダムな人ですね・・・(やる時はやる男なのだが)

 

 

薩摩が起こした西南の役に乗じて、何人かの志士が大久保ら政府首脳の暗殺計画を立てるんですが、その志士らと連絡を取り合っていたことが発覚し、陸奥宗光は国事犯として逮捕されます。これは陸奥にとって痛恨の極みだった。こういう人も失敗するのね。

 

山形の監獄へ収監。そこから仙台へ移送される。

といっても伊藤博文とかが手を回してくれて、わりと快適な獄舎ライフを送っていたらしいですけどね。ここで陸奥宗光は読書三昧の日々を送り、のちの政治家人生に大きな影響を与える膨大な知識を身につけるんです。

 

この待遇は、大久保利通が暗殺されて巨大な敵がいなくなったから可能になったのですが、大久保が亡くなったのは日本にとって良かったのか・・・それとも惜しまれる人材だったのか・・・

 

あまり上巻は主人公が活躍しなかったですけど、本番はこれからです、きっと。

 

下巻に続く。

 

 

またいい本をゲット!