北辰の門 | あだちたろうのパラノイアな本棚

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読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

 

 

自分的には珍しい時代の歴史小説を読んでみました。

藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱て、日本史であった気がする。

 

時代としては聖武天皇が亡くなり、次の女帝・孝謙天皇になった頃です。このお方は道鏡という僧と懇ろになったことで、やたら日本史的には評判が悪い方なのですが。

 

改めて読んでみましたところ、藤原仲麻呂の乱はなかなかに激しい反乱だったのですね。はっきり言って謀叛だろ。

 

「疫病に苦しむ国を救う英雄か」などと帯にありますけど、いやいやどうして、

どう考えても反逆者でしたよ。それも、この国を根底から覆す危険性があったヤバい奴だったよ?

これはこの作者さんの書き方なのかもしれませんが。

 

 

聖武天皇は心身ともに少し虚弱な方だったらしく、迷走ぎみの天皇でしたね。それをガッチリ支えていたのが光明皇后です。東宮には阿倍内親王がたてられていて、次は女性天皇になる予定でした。

 

ですが阿部内親王は、

「自分は天皇になんてなりたくない、結婚して子供を産んで、普通の女人の生活を送りたい」

と弱気な発言を繰り返します。

そこを突いたのが藤原仲麻呂です。

 

仲麻呂は藤原四兄弟の中の武智麻呂の息子です。

藤原不比等が一気に藤原氏を押し上げた傑物だったのですが、息子たち四兄弟は蔓延する疫病に罹り全員が病死。不比等がやりかけた野望を、我こそはと受け継いだ仲麻呂なのでした。

 

なんだかこの小説、人物たちの会話でスピーディに話が進み、まるで舞台劇のようだなと思いました。

 

「俺はこれを狙ってる」

「あいつを殺してしまえ」

「私が目障りなんでしょうね」「そうです」

 

みたいに、何故か皆さんの会話がどストレートです。

うん、わかりやすい。

わかりやすいけど、単純明快すぎてなんだか・・・あせる

 

どうやら仲麻呂は、天皇から政権を奪い、唐の国のような皇帝になりたかったようです。オイオイ、それはまずいだろう。

その手法といえば政敵を罠にはめ、謀叛の疑いをかけて処刑するという強引なやり方でした。紫微中台という天皇直属の機関を作ってトップに立ち、独裁を行おうとします。

 

光明皇太后とか、天皇になった阿部内親王などが諌めようとするのですが「女はすぐ情に流される。これだからダメなんだ」と言い捨てて取り合いません。

 

カッチーン!ムカムカ

 

このあたりで女性読者のイライラMAXになると思いますが、ここからの展開は大丈夫です、あれよあれよの間に形勢逆転。

敵対したのは太上天皇となった阿部内親王、そしてその側に侍る道鏡、そして仲麻呂に太宰府に流されたのち太上天皇に呼び戻された吉備真備でした。

 

道鏡・・・

太上天皇をたぶらかした怪僧みたいに扱われることが多いですけど、意外とまともな人でしたよ?確かに、太上天皇との濃厚なラブシーンとかはあります。ちょっと気持ち悪かったな・・・

もともと聡明な太上天皇なので、肉体的な欲望が満たされれば何の問題もなく政治能力を発揮することができるのです。(そういうもんなのか?)でもだからこそ天皇の座に返り咲く重祚なんてのが出来たんだろうな。

 

そして何より、吉備真備!!

 

この人の軍略がすごいわ〜。

 

さすが、唐に長年留学して兵法も学んだ秀才!

ことごとく仲麻呂の行く手を阻みます。

 

本当にストレートにわかりやすい。

善人と悪人がくっきり描きわけられています。

ある意味勧善懲悪な物語で。うーん、スッキリはしたけど深みはなかったような気がします。

 

 

 

 

お散歩中に撮影。

雪国も暖かくなり、梅が咲き始めました。