角川ホラー文庫の新刊。昔の作品が多くて楽しかった。既読作品がいくつかあったけど忘れていたし、久しぶりに読み返してみてやっぱり怖かったです。このラインナップは良いですね。
特に、鈴木光司さん!
『リング』『らせん』流行った頃に読みまして、もう心底怖かった。映画も怖いけど、絶対原作の方が怖いと思う。
この本に収録されている『浮遊する水』も遥か昔に読んだことがあったはず。うろ覚えだったので読み返せて良かったです。
●『浮遊する水』/鈴木光司
古びて住人がまばらなマンションで慎ましく暮らす母子家庭の母娘のお話。このマンションでは、以前に何か子供に関する事件が起こったらしい。なんとなくそんな噂を耳にしながらも、とにかく賃料の安いマンションで、必死に娘を育てる母親でした。
ある日、花火をするためにマンションの屋上に上がった二人でしたが、その日から奇妙な現象が起こり始めるのです。
・・・これって、別に「なんてことない話」とか、「気のせい」とかで片付けられるお話だったりします。が、多分、人気のないマンションの裏さびれた雰囲気と、母親の漠然とした不安が織りなす幻影が恐怖の根幹にあるんじゃないかと思いました。
何も知らない無垢な子どもが哀れです。
いやー鈴木光司さん素晴らしいな!
●『猿祈願』/坂東眞砂子
これも良かったです。田舎の伝承が不気味で、祝いと呪いが紙一重みたいな。
上司と不倫のうえ妊娠し、結果的に略奪婚をした形になった女性が、夫になる人の実家に挨拶に行きます。
前の奥さんには子どもができなかったから、不倫から始まったとはいえ、夫はとても喜んでくれています。きっと夫の親にも受け入れてもらえる・・・はず。
夫の実家にある昔ながらの風習、「括り猿」というのが安産祈願のお守りで、これが道ゆく途中に目に入るんですけど、括り猿がなんとなく不穏な雰囲気を醸し出しているんですね。
子どもにまつわる想いは、、、重たいなあ。
●『影牢』/宮部みゆき
宮部みゆきさんの時代小説の一つで、秀作だと思います。
深川の商家、岡田屋の番頭が語る口調で、昔この店に起こった凄惨な事件の顛末が綴られています。
事件の悲惨さや被害者の無念が痛ましいと思いながら読んでいくと、事件の裏に別の真相が隠れているのが見えてきて、ミステリーとしても読み応えある一品となっています。
●『迷い子』/加門七海
怖いというより、フワッとした雰囲気が幻想的な作品でした。
東京の怪談です。
そうだよな、東京は昔からあれだけの災害があったのだから、あちこちに死体が埋まっているわけで・・・
登場する老夫婦のやり取りが、イザナギとイザナミのお話をモチーフにしているようだった。黄泉の国のお話。
●『赤い月、廃駅の上に』/有栖川有栖
読みながら、なんとなく「千と千尋の神隠し」をイメージしていました。お化けっていうより物の怪の類だったのでは?それにうっかり遭遇しちゃった人間のお話。本当にこんな目にあったら怖いけど。
ホラーっぽい写真が撮れました。
朝のお散歩中の風景。