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サテこれは五稜郭のお話。
高松凌雲先生
カッコいいな・・・
と、前から思っていたので、読んでみました。
榎本艦隊に加わって五稜郭まで行き、箱館病院で負傷した兵士の治療にあたった医師です。
凌雲先生がカッコいいのは「味方であろうと敵であろうと治療が必要な人間は誰でも分け隔てなく病院で受け入れ、平等に扱う」と宣言して病院の全権を委任されたところです。
そして新政府軍が箱館に上陸して賊を引き渡せと迫った時に、敵に対して敢然と立ちはだかったのが物語の見せ場ですね。
けど、吉村昭さんの歴史小説はノンフィクション風というか、あんまりキャラ立てせずに淡々と史実を紡ぐ感じなので、ヒーローっぽくはなかったです。
むしろ、
ちゃっかりしてて、たまにイジワルで、そこそこプライドも高い凌雲先生
っていう、とても人間味あふれる凌雲先生像が出来上がりました。
凌雲先生の西洋医術は、幕末に徳川昭武さまと渡欧したときにパリの医学校で身につけました。小説の最初はパリ滞在中のお話が長く書かれています。
なんだか夢の世界のようです。日本の外交の一端を担うことの重責、気苦労とか資金の苦労もありましたが、パリ滞在中のお話はきらびやかでフワフワしてます。同じ時期に、日本では血みどろの政争の挙句、大政奉還されて幕府がなくなっちゃったというのに。
※ちなみに、滞在資金については渋沢篤太夫(栄一)さんの資金繰り手腕がスバラシイ
帰国した凌雲先生は、主君である徳川慶喜公にお仕えしたく申し込みをしたのですが、慶喜公ご自身がどういう処遇になるのかわかったものじゃない。混乱の末、たまたま兄・古屋佐久左衛門が旧幕軍として北に転戦しているのを知り、榎本艦隊に加わった、というようないきさつで。
ハアそれにしても・・・
榎本釜次郎という人は、つくづく「持ってない男」だなあとしみじみ。志高く能力もあるのに、なぜかツイてないことが多い。
そして土方歳三という人は、どんなに周りの「持ってない男」に振り回されても、自分の才覚で運命を切り拓いてゆく鋭いナイフのような人です。(この小説ではチョイ役でしたけど)
凌雲先生のイジワルエピソード。
榎本軍が降伏した後、官軍の大病院医師たちがやってきていばり散らすんですが、この人たち、輸入したフランス製薬品の名前が読めなくて困っています。そこでフランス語ができる凌雲先生に「翻訳しろ」と上から目線で命令してくるのですが、凌雲先生は「多忙なので」と半分だけ訳して突っ返してやる。もちろん、半分だけでは薬品の使用ができないので、困りきった官軍医師がついに低姿勢で頼んできた、というのが書いてありました。
ムカつくのはわかりますが、凌雲先生ったらちょっと大人気なかったと思います・・・
小説は五稜郭が落ちて榎本軍が降伏し、その後明治の世でのそれぞれの生き方が書いてあり、悲喜こもごもです。
箱館戦争の頃の薩長軍は、わたしの印象では、会津戦争の頃みたいなギラギラした戦意は薄まっていて、さっさとこんなこと終わらせたいよーという厭戦気分さえ感じることしばしばです。
なのでむしろ薩摩兵とは降伏に向けての交渉ができたのですが、残虐だったのが松前藩の兵でしたね。虐殺や捕虜に対しての冷酷な扱いは、松前藩の方が酷かったようです。榎本軍に追い出された恨みが深かったのでしょうか。
けれど、親切にしてくれた薩摩の兵は箱館戦争の酷い光景を見て精神を病んでしまったのか、不遇の人生を送っている。
それに比べて、榎本武揚は黒田清隆のバックもあって明治政府でトントン拍子の出世。
なんなんだろうなあ、って世の無常を感じます。
凌雲先生は貧しい者へも医療を施すという夢のため、同愛社の運営に人生を捧げる。(ここでも渋沢栄一さんがものすごく強い味方である)
ラストとしてはめでたしめでたしの雰囲気なのですが、焦土と化した箱館の街と、生涯癒えない心の傷を負った兵士たちの存在はズンとくるものがありました。
〜おまけ〜
ドラマ『五稜郭』より。