船から続く、長い桟橋を歩いてる。
振り向くと、ちょっと大きなお腹を揺らしながら
にこにこ私の後ろから笑いながら歩いてくる。
海の中に立つ
大きな赤い鳥居は…
今は隠されている。
「そうやね……今日は特別な日やもんね。」
後ろでカメラのシャッターの音がする。
…やっと帰って来れたね…
ずっと来たかった
相変わらず、清盛神社の前では勝手に涙が溢れて来るけど
そんな事もすっかり理解してくれてるから…
少し離れたところで煙草の煙をくゆらせている
そばに歩いて行くと…
私の姿の気がついて、煙草の火を消す。
また二人で澄んだ空気の中を歩き出す。
「ほら。鹿。この季節は、雄鹿は角が抜けてないんやね」
またシャッターの音がする。
きっとそのカメラの中には、仲のいい雄鹿と牝鹿の姿が
抜群のアングルで写ってる。
水族館の前のおおきな木が
一本だけ、葉っぱが真っ黄色になってるよ
ハラハラ落ちてくる葉が、モンキチョウみたい
ふわふわ風に乗って、遠くの道まで運ばれていく。
ほら。めっちゃキレイ……写真撮って!
この道の階段上がっていくと、五重塔がある
いつもは階段しんどいから、上がれないけど…
今日は、特別やから行ってみようか?
下から見上げたアングル…
そうね。迫力あるよね。
ちょっと屈んだ無理な姿勢で…
ほら。あとから腰痛いって言わなあかんようになるでwww
照れ笑いを浮かべて、腰を擦りながら…
また…歩き出す。
古い町屋の通りをゆっくり散歩する。
殻付きの牡蠣か……今年のは大きいね。
いい香り…
お醤油の焼ける香りが、お腹空く
いつもの所で広島焼き食べようか?
牡蠣とうどんの入ったやつ?
私には食べきれへんから、お蕎麦の入ったやつでいいよ~
残したらもったいないやん。
今日は食べてくれへんのやろ…
ほら…
もう海が見えてきた…
また長い桟橋が見えてきた。
足を一本踏み出そうとして、振り返る
「まこ。俺、もう行くわ。」
…そっか。
ありがとう。
一緒に来れてよかった。
知らせてくれてよかった。
もっとね。もっと一緒にいたかったよ。
もっといっぱい笑って、いっぱい遊んで…
ずっとずっと
本当に大切なお兄ちゃん
いつも何より大切に、どんなことからも守ってくれた
大好きだったQOOちゃん
お前は昔みたいに、みんなに囲まれて笑ってたらいい
そう言って
また私を輪の中に戻してくれた
どうやってこの感謝を伝えよう…
伝えるすべがなくなってしまった今。
ただもう…
ありがとう…
ありがとう…
ありがとう…