――嶌村聡球団本部長

(なぜ育成ドラフトで高校生を指名しないのか)

もちろん意味はあります。
まず各球団それぞれに考え方とやり方があって良しあしではない、というのが大前提であり、育成選手であってもプロの世界に飛び込む意識が高い選手、また、その必要性が生じる選手も存在すること自体を否定するものではありません。
その上で我々は野球界全体の競技者人口が減ってきている中、高校生が大学野球や社会人野球、独立リーグに順にステップアップすることが非常に大事だと考えています。
日本における野球の最終目的地であるプロ野球に入ってくる経路は既存のアマ野球、独立リーグの存在に目を向けながら、という考え方ですね。
この考え方は間違っているかもしれませんが、現状の我々の方針としています。
大学生や独立リーグの選手に関しては、高いレベルへの挑戦という形になる。
一方で高校生の場合はよりハイレベルのアマ野球、独立リーグで人格形成しながらスキルアップした方がより良い選択肢になるかもしれない。
我々は甘いかもしれないけど、親御さんの立場も考えてしまう。
育成で指名してしまうより、もしお誘いがあるのであれば大学および社会人、独立リーグに人格形成、技術力アップを託したいと考えています。
独立リーグのチームや地方の大学には人材確保という問題もありますからね。
そこからでも決して遅くはないので。
日本の少子化という問題がある中で、野球競技者の減少比率が世代別人口の減少比率を上回ってしまっている。
中でも小中学校の軟式野球の競技者が10年前から激減している。
その減少比率を押し戻さないといけないというのがNPB全体、日本球界全体の課題。
そのために12球団が何をすべきかという話の中の1つとして出てきたのが、22年11月のオーナー会議で12球団とNPBが承認した『ファーム・リーグの拡大を図るNPBビジョン』※です。
もっと独立リーグのチームと野球振興で連携すれば、各地域で競技者もファンの方々も増えるのではないか、と。
そんな考えの一環としてタイガースは今回、岡崎太一くんを石川球団に派遣したり、徳島球団とタイガースのコラボで野球教室を展開したわけです。
うちは球団本部に独立リーグの担当チームを新たに置きました。
このチームが各球団を視察した際に何を望まれるかをヒアリングすると、指導者派遣や試合の定期的開催という声が結構、届くわけです。
これは現地に行かなかったら分からないことでしょうね。
去年は平日にもかかわらず、石川さんとの試合で約2600人、富山さんとの試合で約1200人の観客が入ったと聞いています。
うちからも担当者を出張させてファンサービスを展開したり、そういう努力が大事だと思います。
そうすれば、野球に興味を持ってくれる人が石川、富山、徳島でもっと増えるかもしれないので。
うちには石井(四国IL)とか湯浅(富山)とか独立リーグ出身で活躍してくれている選手がいる。
彼らは『何かあれば、ぜひ協力します』と言ってくれている。
今の選手たちは野球振興に非常に前向き。
今後も球団内の人材次第ですが、独立リーグ球団への指導者派遣も積極的に行っていきたいと思います。

球団本部長としてはもちろん『チームの勝利』が第一義的にあります。

ただ、次の100年に向けた構想が必要だと思います。
来年は阪神が90周年。
我々には伝統球団としての使命があると思うんです。
甲子園球場をつくって、タイガースをつくって、90年近く先輩方が努力してきて今がある。
今度は我々が次の世代のために地道な努力をしていかないといけない。
2層目の静岡、新潟球団はそれぞれの地域でかなり努力されており、12球団のファームが試合をすることで盛り上がると考えていますが、3層目の独立リーグさんとの試合をなくすことは全く考えていません。
今年も石川、富山球団とはビジターでの遠征試合を継続しますし、新たに徳島球団ともビジター試合を開催予定です。
野球振興は1年で目に見えて成果が出るという話ではない。
それでも1歩1歩積み重ねて、長い目でやっていかないといけない。
野球ほど社会に根付いているスポーツはなかなかない。
もっともっと広めていきたいし、絶対にいけると思っています。
 
 
※ファーム・リーグの拡大を図るNPBビジョン
1層目にNPB12球団の1軍、2層目にNPB2軍12チームとファーム新参加2チーム、3層目にNPB3軍と独立リーグチーム、クラブチーム。
既存12球団のフランチャイズ以外の府県を本拠地とする球団を24年からイースタン、ウエスタンで増やす構想。
BCリーグ・栃木を運営するエイジェック、BCリーグ・新潟、ハヤテグループによるハヤテ223(静岡)が新規参加希望を申請し、23年11月22日のオーナー会議で新潟とハヤテの新参加が承認された。
2球団の正式名称は「オイシックス新潟アルビレックスBC」「くふうハヤテベンチャーズ静岡」となった。
 
 
 
――粟井一夫球団社長
ドミニカ共和国で開催した入団テストは無事に終わって、成果はあったと聞いています。
 
 
 
2024年1月25日 日刊スポーツ

 

 

2024年1月25日 サンスポ