[岡田監督×赤星憲広]

 

――赤星憲広

06年と同様に、今年は連覇が懸かります。

――岡田監督

あの時も正直、勝てると思った。

でも、相手が強かったな。

84勝もして勝てんかったからな。

巨人、中日が強い時代だったし、当時は連覇なんて言うたことなかったよ。

 

――赤星憲広

でも、当時と違い、昨季は日本一になりました。

チームにとって良い財産になったのでは?

 

――岡田監督

日本シリーズで勝つのと、負けるのとでは、こんなに違うのかと、去年特に感じたな。

選手もその違いを感じたと思う。

 

――赤星憲広

選手は、シーズンオフでも精力的に体を動かしています。

 

――岡田監督

だって、ハワイで、朝5時半から筋トレをしていたで。

才木と岩貞か。

終わってから公園でもキャッチボールをしてな。

グラブを持参しただけでも凄いよな。

 

――赤星憲広

佐藤輝は優勝旅行を早く切り上げて、米国本土の練習施設へ行きました。

 

――岡田監督

それは知らんがな。

 

――赤星憲広

これだけ監督が連覇を口にするのは、自信の裏返しですか?

 

――岡田監督

いや、俺より選手の方が言っているで、連覇って(笑)

選手は、その気になっているというかな。

選手の方が何かをつかんだんやろな。
今のまま「普通にやりなさい」と言う方が自然かもわからんな。

木浪、大山、近本でも今年が30歳の年齢か。

あとのメンバーは20代半ばぐらいやろ?

去年がスタートみたいなもので、やることがある程度わかっている今年は、もっと数字的に出るのとちゃうかな。

 

――赤星憲広

昨季苦しんだ青柳や湯浅が力を発揮すれば、さらに強くなりますね。

 

――岡田監督

そこまでできたら、勝ちすぎて大変なことになるやんか(笑)

湯浅は、今年の新戦力と思っているよ。

去年の貢献度はゼロやと思っているよ。

はっきり言うて。

日本シリーズで投げたけどな。

でも、あいつで負けた交流戦の方が大きいで。

だから、今年、新戦力で一番計算できるのは湯浅じゃないか。
守護神として、そこまでは期待していないわ。

投げてみないと、わからへんよ。

ただ、どっちかというたら、イケイケのタイプだから、後ろは怖いと思うよ。

岩崎みたいな繊細さはないよな。

何でもかんでも勝負にいってしまうのはな。
だから、ボールの力だけで勝負する投手は怖いよな。

コントロール重視じゃなくてな。

一番後ろの投手は、絶対に点をやれないポジションだからな。

たとえランナーを出しても失点をしないという繊細な気持ちが必要やで。

イケイケじゃアカン。

怖い。

打たれたらアカンというビビる部分がないと、クローザーなんかでけへんよ。

全部165キロを投げられるんやったら話は別やけど。

 

――赤星憲広

今年も春季キャンプで臨時コーチをさせていただきます。

鍛えるべき選手はいますか?

 

――岡田監督

森下の足やな。

あれはもっと走れると思うな。

脚力はあるよ。
あとは意欲やな。
去年は1盗塁か。
でも、サインを出していないんよ。
ずっと勝っていたから。
森下が盗塁に失敗して流れがおかしくなるのも嫌やったから。
まあ、1、2番(近本、中野)に続いて森下まで走れたら大きいよ。
4番の大山への配球も変わるやろうし。

でもな、森下はちょっと好不調の差が激しすぎるよ。

調子が一回狂ったら、泣かさなアカン。

悔し涙を流したら、また元に戻るのとちゃうか(笑)

東海大相模で森下を教えた門馬監督が、「高校の時も波が激しかった」と言っていたらしいよ。

他のチームの評価が低かったのは、悪い時を見ていたんちゃうか(笑)

 

――赤星憲広

森下と佐藤輝の扱い方は、監督の中では違うのでしょうか?

 

――岡田監督

そうやな。

あんまり一緒に行動をさせない方がええかもしれへんな(笑)

似た者同士かもわからへんし。

でも、良い効果があるかもわからへんけどな。

2人がクリーンアップを打つ自覚を持ってやれば、ええ方に出たら、凄い力になるかもしれへん。

 

――赤星憲広

共倒れする可能性が若干ありそうな…

 

――岡田監督

それやったら、離れろと言うわ。

2人でのキャッチボールもやめろと(笑)

 

――赤星憲広

春季キャンプで佐藤輝に三塁の特守をさせますか?

 

――岡田監督

強化せなアカンよ。

キャンプで徹底的に。

秋季キャンプは2年連続で全然、チームにおらへんもん。

侍ジャパンの試合ばっかりやから。
佐藤輝は選ばれても、8番、サードではな。

井端監督もやっとわかったんかな(笑)

 

――赤星憲広

ブルペン陣の競争激化が予想されます。

 

――岡田監督

外国人選手(ビーズリーとゲラ)も使わなアカンしな。
そこまで期待せんでもええで。

俺は外国人選手なしでやってもええで。

そうしたら、もっとウチは強くなるよ。

 

――赤星憲広

近年は、来日する選手のレベルがそこまで高くないですよね。

来日前の3Aの成績がアテにならないです。

 

――岡田監督

映像を見ていても、いい選手はそんなにいないよ。
最初(04年)に監督をした頃は、まだおったよな。

今の外国人選手は、日本人選手でカバーできるレベルやで。

はっきり言うて。打率2割6~7分で本塁打20本やったら、日本人選手を育てられる。

それでは、助っ人にはならんよ。

日本でいきなり30本を打てる外国人選手は、今はいないよ。

メジャーのレベルも落ちているんちゃう?

スーパースターは凄いけど、その下のランクは落ちているんちゃうか?

3Aとかなら、日本の野球の方が全然、レベルが上やわ。

 

――赤星憲広

それにしても監督はミエセスのことが好きですね。

 

――岡田監督

うん。

ベンチに置いていてもマイナスじゃないから。

チームに溶け込む姿がええよな。

まあ、ミエちゃんは何の戦力か、わからへんけどな(笑)

試合の戦力にはなっていないわ。
年俸が安いもん。

ノイジーの半分やんか。

半分、半分。

ノイジーはイジりにくい。

真面目すぎて、イジる対象にならんわ。

ハワイには、ノイジーのオヤジも来ていたな。

タイガースの帽子をかぶってあいさつに来てくれたわ。

ノイジーも溶け込もうとしているんやろな。

昔の外国人選手は、グラウンドで数字を残してくれたら、それだけで良かったけど、今は数字を残されへんから、チームに溶け込まんとな。

 

――赤星憲広

今年も優勝予想をしやすいです。

阪神が他球団を離していますから。

広島は西川、DeNAは今永など…。

移籍した戦力が大きいです。

 

――岡田監督

良い外国人選手はそんなにいないから、そこまで補強もできないしな。

自前で選手の力を伸ばさなアカン。

チームを強くするにはそれしかないもん。

球団によっては補強をしているけど、中日は、あれが補強なんかなと思うわ。

 

――赤星憲広

唯一、ちょっと出て来そうなのが、巨人かなと思います。

ドラフトも即戦力しか獲っていないですし、門脇などの若い選手が伸びてきています。

 

――岡田監督

巨人のドラフトは?

 

――赤星憲広

1位は中大の西舘です。

 

――岡田監督

ああ、そうでもないな。
でも、不気味なのは巨人やろうな。

もし去年、俺がユニホームを着ていなかったら、優勝予想はDeNAにしていたけど、今年のDeNAは打つ方がちょっとしんどいやろうな。

去年は宮崎がハマったけど。
投手も良かったけど、今永も抜けたらな。

そういう意味では巨人やろうな。

2年連続Bクラスだから、立て直してくるよ。

先発では山崎(伊)とか赤星とか、去年の最後の方は、菅野と戸郷より良かったよ。
巨人がどんなことをやってくるのか、楽しみやけどな。

でも、2月23日に沖縄でオープン戦なんかせんでええのに。

こっちは2軍でいくよ(笑)

向こうは阪神の戦力をわかっているけど、こっちは、向こうがどういう野球をしてくるのか、まだ見えへんもんな。巨人は今年、球団創設90周年やろ。そら、必死になってくるやろ。

 

――赤星憲広

監督の中で巨人は今も宿敵ですか?

 

――岡田監督

どうやろ。

前はそう思っていたけどな。

去年は、“何してんの?”と思ったことが多かったよ。

長野を復帰させたり、松田を獲得したり、中田(翔)や中島がおったり。

チーム編成上、こんなんで勝てんの?という見方をしていたよ。

だから、ほとんど負ける気がせんかった。

巨人は、チームを根本的に変える時期やろうな。

ベテランとかを含めてな。

今の阪神と正反対のことをやっているわけやから。

阪神は生え抜き中心で、この4、5年のドラフトで獲った選手で試合をできるわけやからな。だから、FAで選手を獲る気もないし、外国人選手も積極的に獲ってくれと言うたわけでもないしな。

 

――赤星憲広

監督復帰1年目で、目指す野球がここまで浸透すると思いましたか?

 

――岡田監督

いや、思っていない。

8月のロードでちょっと勝ってからは、ミーティングで何にも言っていないよ。

それまでは昨日の、あのプレーはこうしたらいいんじゃないかということを、ミーティングの最後に話したけどな。

言うたのは、日本シリーズの1戦目ぐらいかな。

(オリックスの)山本はたいしたことないと言ったよ。

低めの真っすぐだけを狙おうと。

(捕手の)若月を見ててみ。

ずっと低めばかり構えとるでと。

だから第6戦、若月は高めに構えとったな。

 

――赤星憲広

選手からは監督と直接、話しをする機会は少ないと聞きます。

 

――岡田監督

いやいや、前(第1次政権時)に比べたらだいぶんしゃべっているで(笑)

去年に関しては、選手も聞きに来たしな。

青柳にしても、大竹にしても。

 

――赤星憲広

今の選手からすると監督との会話は少ないかもしれませんが、以前を知る僕から見るとコミュニケーションを取っています。

選手の個性を把握するためでしょうか?

 

――岡田監督

まあ、どういう考えで野球をしているか、やっぱりわからへんもん。

評論家時代に感じたのは、今の選手はチームの勝ち負けよりも、自分の中で淡々と野球をしているような感覚を受けた。

チームのために自分が犠牲になって勝とうとしている姿が、あまり見えなかったもんな。

打ったら勝つ、打たなかったら負ける。

そういう、わかりやすい勝敗が多かったよな。

でも、そういう選手ばかりではない、チームのことを考えている選手の方が多かったよ。
チームが勝つために、守備位置や打順を固めて、役割分担を明確にして、自分が何をすべきかということを、1年間やって、選手はだいぶんわかっているよ。
去年は、最後(日本シリーズ)にちょっと負けておけば、今年の目標ができたのかもしれないけどな(笑)
日本一以上の成果はないからな。
まあ、まずは連覇が目標になってくるだろうな。
 
 
 
2024年1月3日 スポニチ