東京国立博物館を使った「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」の続きです。


築120年の国立博物館本館の入り口入った正面の階段は様々な映画やドラマの撮影に使われます。この階段の横から入った中心の展示室が3つめの展示です。

ここでも、いくつもの小さなガラスビーズが吊るされています。平成館では多くが彩色されていましたが、ここはほとんど透明。中には鈴や化石も。左右の壁には4色程の原色で描かれた未完成のような水彩画。床には6カ所程、水彩画や大理石や木の枝などが化石や土器の破片と共に置かれています。

床にひびが入っている古びた西洋建築の展示室の中、生命の微かな痕跡と時間が止まった雨滴のようなビーズ。限りなく静謐な空間で静かに時間が流れて行きます。


中央やや手前に《座》という木の台があり、靴を脱いで載って座ることができます。作品リストには正面を向いて座るように指示があります。見る者に意味や意思をほとんど示さない内藤には珍しい指示。水を貼ったガラス器になった気分で「ふーん、こうして見るのか」

右すぐ傍らに丸い穴の開いた小さな木の台座、左の先の方に同じ台座があり穴の部分に長さ3メートル程の棒が刺さっていて、どちらも《杖》と名付けられています。この2つはここでは奇妙な異物感があります。

もう一つ《座》があります。あの階段の裏にあたる壁にそって横長の木の台座があり、これも靴を脱いで載って座ります。

振り向くと壁には8cm四方くらいの彩色された布が貼ってあり、作品リストを見るとこれは《恩寵》で「息を吹きかけることができます」とあります。

軽く息を吹きかけるとフワッと揺れます。これが恩寵。呼吸することが、生きていることが、それとも空気そのものが、さて恩寵とは何でしょう?

他の皆さんも作品リスト見ながら部屋の中をみて周っているのですが、私以外全然「恩寵」を受けた(息を吹きかけた)人がいませんでした。もったいない!