書くペース上げて行こう。練馬区美術館の「三島喜美代 ― 未来への記憶」、森美術館「アナザーエナジー展」の巨大な陶のインスタレーションで見る者の度肝を抜いた、今年92歳になる大阪のオバーチャンの回顧展です。

1Fの展示室では初期作品の展示。まだ19歳で描いた静物画が1点、1950年代の油彩の抽象画が4点と素描。


当時の西ヨーロッパ中心のアンフォルメルとかの影響を受けたそうですが、1960年代になると「アナザーエナジー展」でも数点展示されていたコラージュが中心になります。

新聞や雑誌や映画のポスターからの切り貼り、かつてのシュルレアリスムは偶発的なものを期待したコラージュでしたが、この頃の三島はかなり意図的に選んでるようですね。

ジャズ関係の映画ポスターや広告を集めたもの、

時計の文字盤を集めたもの、

英字のニュースを1ページまんま貼ったものなど。後の意味のない情報の洪水のようなインスタレーションと違って意味のコラージュになっています。

これはシルクスクリーンを使ったポップアート風作品。

雑誌に載っていた外国映画の有名女優の肖像を多数コピーした作品。シルクスクリーンは陶でも使っているし、ある意味これも俳優という商品のコピーです。

1971年の《メモリーⅢ》は夫のハズレ馬券を集めて貼ったもの。ここからゴミを作品に取り入れていきます。

1973年くらいから10年間くらいはひたすら陶に転写と彩色で紙や布を実物大で再現。

もう意味へのこだわりはほとんどなくなって、質感の再現を極めていきます。金属に見えるものも全部陶。

2Fの展示室に入ると

これも陶! 割れ物の「われもの注意」札

手打ちうどんに使う綿棒を見て、それから綿棒を使って伸ばしたり捻じったりするようになったそうです。なるほど。

中までびっしり字が転写されています、この超絶技巧。
インタビュー映像では陶を始めたころは失敗ばかりで、でも「失敗が面白い」と言ってました。ポジティブだなぁ。

やがて紙や布だけでなく意図的にゴミを扱うようになり、大きさも実物大に限らなくなるのですが、それは次回。