東京国立近代美術館の「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」の続きです。

都市がテーマのトリオの最後は「都市のグラフィティ」で東京からはこの美術館の顔の一つ

 佐伯祐三《ガス灯と広告》
前回のレストランを見た後これ見ると見え方が違ってきますね、「独特の都市の捉え方」みたいに言われてますけど、心象風景にも見えてくる。
次はそのまんまグラフィティ

 ジャン=ミシェル・バスキア《無題》
プリミティブでヒップホップ感もある絵、佐伯の絵と同様に文字に溢れていて、でもこれはハッキリ意図があって書かれていて化学式のようなものから漢字まである、ワールドワイドな文明批評まで含んだ落書きです。

都市の次のテーマは「夢と無意識」です。


 ラウル・デュフィ《家と庭》
「空想の庭」というトリオではまたデュフィ、この人には珍しく色が少ないのですが、花が中央の一点だけというのがなるほど空想の庭です。

 アンドレ・ボーシャン《果物棚》
これはわかりやすいですね、果樹園と果物店が合体してるみたい。蝶が何気にポップです。

「夢と幻影」というトリオではダリとシャガールがありましたが、私はこの二人あまり好きじゃないので割愛。「現実と非現実のあわい」というトリオは

 ヴィクトル・ブローネル《ペレル通り2番地2の出会い》
これ笑っちゃいました。ただでさえ奇妙なルソーの絵を下敷きに、もっと奇妙なキャラクター。このトリオは先達へのオマージュのようです。

 ルネ・マグリット《レディ・メイドの花束》
マグリットにしては珍しく、古典絵画に描かれるビーナスのような女性が中央に。でも彼独特の不思議さはしっかり入ってます。

「まどろむ頭部」のトリオは面白いので全部載せます。

 ジョルジョ・デ・キリコ《慰めのアンティゴネ》

 コンスタンティン・ブランクーシ《眠れるミューズ》

 イケムラレイコ《樹の愛》
全部同じように頭を傾げた女性、それがマネキンを描いた油彩画に石膏像に単色ドローイングという違う表現方法。デ・キリコは夢の中で見る夢、ブランクーシは静謐な感じ、イケムラレイコは夢通り越して冥界に迷い込んだみたいです。

次のテーマは「生まれ変わる人物表現」。「モデルたちのパワー」というトリオでは萬鉄五郎の《裸体美人》

 アメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》

 アンリ・マティス《椅子にもたれるオダリスク》
全部同じようなポーズですけど全部デフォルメされていて全然違います。萬鉄五郎は本当にパワー、生命感に溢れていて、マティスはゆったりくつろいでいる感じ、唯一モデルが正面向いてるモディリアニは見ているこちらが見られているみたいで、裸婦なのに堂々としています。


 ピエール・ボナール《昼食》
ボナールの色彩感覚って、好きだなあ。左の花は明るくてカラフルだけど女性の肌が暗めで沈んでる感じで、ちょっと不思議。


 マリア・ブランシャール《果物籠を持った女性》
一見、普通に街にいる女性を描いているみたいで特にデフォルメされていないのだけど、周囲が歪んでいて、デ・キリコの街みたいに人気がない。見ているうちに女性までおかしく見えてきます。


 ジャン・メッツァンジェ《青い鳥》
「美の女神たち」というトリオの一枚、人物はキュビスム的ですが、中央上のミューズが抱いている青い鳥や扇子や背景の建物が写実的です。扇子を持っているのは日本女性かな、あそこにもここにも人がいる、何人見えるかは見る人次第。

今回はここまで。