東京国立近代美術館の「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」に行ってきました。


この美術館と大阪中之島美術館、パリ市立近代美術館のコレクションからあるテーマ、モチーフなど各館から1点づつ選んでトリオとして並べて展示するという変わった趣向の展覧会です。20世紀初頭の岸田劉生からマティスにピカソ、岡本太郎、バスキアに現役バリバリのイケムラレイコまで、良くも悪くも無節操に並んでます。私はここ東京の収蔵品はかなり見ているのでそれ以外を中心に。


 佐伯祐三《郵便配達夫》
最初は「コレクションのはじまり」で人物画。これ印刷やTVでは見たことあるけど実物は初めて見ますね。ポーズとっているというより、ただ座っているだけという体の傾き方と表情。細かい筆使いまでわかる、やっぱり実物はいいなぁ。

その次から、それぞれの都市を取り上げたトリオが続きます。

 小泉癸巳男《「昭和大東京百図絵」より 30. 聖橋》
作品どうこうでなく個人的に大好きな御茶ノ水の聖橋の眺め。ただそれだけです。


 アルベール・マルケ《雪のノートルダム大聖堂、パリ》
収蔵品展で藤田嗣治と佐伯祐三の描いた冬のパリがあって、これと3点で頭の中で勝手にトリオ作って比較してました。2点じゃなく3点の比較って面白い発想ですね。


 マルク・リブー《エッフェル塔のペンキ塗り、パリ》
次は写真です。パリの写真ではドワノー、ブラッサイ、カルティエ=ブレッソンと有名どころの写真もありましたが、これがいいですねえ、これこそパリの職人って感じ。


 河合新蔵《道頓堀》
1910年代の道頓堀川ってこんな感じだったのですね、もう完全に失われてしまったのでしょうが、何かすごい大阪感がある、って東京人の勝手な感想です。水面がキレイですね、昭和以降の道頓堀川と大違い。



 フェリックス・デル・マルル《オルレアン駅のメトロ》
 ウンベルト・ボッチョーニ《街路の力》
次は急速に近代化して行く都市。イタリア未来派とかの、写実よりスピードや金属音など目に見えないものが表現に入ってきます。カッコイイなあ。

次は「広告とモダンガール」で、この美術館で小特集やってた杉浦非水のポスターなど。私の眼はこれに釘付けです。

 パブロ・ガルガーリョ《モンパルナスのキキ》
私の大好きなマン・レイの写真等でも知られるキキ・ド・モンパルナス、中が空洞で目や鼻もかなり簡略化されてますが、あの憂いを帯びた、そしてどこか違う世界から来たような感じがしっかり出てます。

次は「都市の遊歩者」というトリオ、全部載せます。


 モーリス・ユトリロ《モンマルトルの通り》

 松本竣介《並木道》

 佐伯祐三《レストラン(オテル・デュ・マルシェ)》
収蔵品展も含めて、佐伯祐三がけっこうあります。ユトリロと松本竣介は構図が似ていて中心に去って行く人物がいるということまで同じなのですが、ユトリロは客観的な風景で人物は通行人、松本は作者の内面の投影になっていて人物は松本自身のように思います。佐伯は店にポツンと一人グラスだけを持った人物、佐伯独特の周囲のゴチャゴチャさが余計人物の孤独感を際立たせます。
ユトリロと日本人二人の違いって、文化的なものでしょうか、単に個人の資質の違いかな。

「近代都市のアレゴリー」というトリオは古賀春江の例のやつもありましたけど、何と言ってもこれです。


 ラウル・デュフィ《電気の精》
前にも書いたけどデュフィ好きで、万博の壁画の縮小版らしいけど、圧巻です。右から左に田園や農村から始まって機械が出現してきて、最後は女神に収斂していきます。人がいっぱい描かれていてニュートンやワットなど名前が書かれていて、科学の発展に功績のあった人たちです。科学と文明の発展が能天気に肯定されていた時代の遺物と言えばそうなのですが、デュフィ独特の音楽を感じるタッチと明るい鮮やかな色彩は、時代を超えて感動的です。

写真をかなり載せたので今回はここまで。