横浜トリエンナーレ、今回で最後です。横浜美術館を出て左を行くと小さなギャラリー。

 プリックリー・ペーパー(チェン・イーフェイ&オウ・フェイホン)
   《揺れ動く草の群れ》

作家たちはアーティストでもあり、中国で表現の自由やジェンダーなどの特集を組む雑誌の編集者でもあるそうです。段ボールの安っぽさが手作り感満載で、本国でも手作りのマイナーメディアやってるみたいです。意外にストレートなメッセージがある一方、隅に何種類ものステッカーが置いてあり、持ち帰ってもいいし貼ることもできます。これ子供が喜びそう。


美術館の南側の壁にも落書きのような作品が。

クイーンズスクエアには北島敬三と森村泰昌の《野生の肖像》、向かい合わせの二枚の肖像写真です。


頭の薄い人の肖像とカツラを被っていると思われる肖像、なんだろうか、演じるアートの森村泰昌が絡んでいるから頭の薄い方が手を加えた映像なのかも、と思ったらこの二枚は10年を隔てて撮られたもの。同じ服同じポーズなので混乱します。さらにこの大きさ、証明書写真みたいな何の変哲もない写真を巨大に引き延ばしてショッピングセンターに展示するという違和感。それこそがこの展示の目的なのかも。

次の会場に行くため馬車道駅に移動。コンコースには連動企画、石内都《絹の夢》

ほとんど着られることのなくなった絹をめぐって、養蚕や製糸工場、染められた絹などの写真を拡大展示しています。

何故ここで絹かと言ったら、もちろんかつて横浜から海外に輸出されていたから。アンティックな駅構内にマッチしてますね。

旧第一銀行横浜支店の1Fは、良くも悪くも学園祭みたいにゴチャゴチャしてます。

高円寺再開発反対を訴える屋台とか

壁にビラや新聞記事貼ったり、映像もあれば古着並べて売ってたり

これは笑っちゃいました。

一応、アート的な木版画などもあります。かなりメッセージ性強いですが。

これは第二次世界大戦の遺物や記念碑を拓本にして残そうという試み。ここだけは少し厳粛になります。

3Fの展示は2点、カルロマー・アークエンジェル・ダオアナという詩人の詩の原文と日本語訳。

横浜美術館でもこういうテキストの展示がありましたけど、アート展でただ文読ませるだけってどうなんだろう。


その奥ではオランダ出身のプック・フェルカーダによるビデオインスタレーション《根こそぎ》

ピンクのジャングルの中で映し出されるのは、人間とウサギみたいな動物がミックスしたような生き物の物語。アートとしてもいい出来だと思うし、見る人によって様々な解釈ができるメッセージ性もいいですね。

最後の展示会場は BankART KAIKO 横浜美術館でも展示があった丹羽良徳の《自分の所有物を街で購入する》

横浜美術館入り口前の「これが作品?」というパピーズ・パピーズの、やっぱり「これが作品?」という展示。


タイトルが《無題(日本のトランスジェンダー史、アメリカのトランスジェンダー史、ジェイド・クリキ=オリヴォの肖像)》って長っ! 無題ちゃうやん。
壁に並んだ手指消毒器、その上に書かれているのがトランスジェンダーについての歴史的な出来事。何故消毒器かというのは様々な解釈ができますね、LGBTなどを異物として排除する勢力の象徴とか、手垢のついた偏見を落としてくださいというメッセージかも。

最後はビルマ(現ミャンマー)出身のピェ・ピョ・タット・ニョの《わたしたちの生の物語り》

植物と金属やコードを組み合わせた奇妙な生物。環境破壊のようでもあり、未来の生命体のようでもあります。赤い光は作者の出身国で採れる天然ルビーを現しているのだとか。

前にも書きましたけど、今回の横トリは政治的社会的なメッセージ性が強いものが多いですね。同じ作家の作品が同じ場所に並ばずにあちこちにある展示というのも珍しいです。