国立新美術館のマティス展「マティス 自由なフォルム」の後編です。
第4セクションの終わりは1951年日本で初めての、そしてマティス生前で唯一のマティス展の資料などの展示です。
文春っていうのがちょっと笑っちゃいます。「スクープ!マティスの秘められた女性関係」とか、んなワケないか。
第5セクションはマティスが晩年に力を入れて取り組んだ集大成、ヴァンスのロザリオ礼拝堂についての展示です。
マティスのデッサンに基づいた、教会の外見や床の模型に、
ステンドグラスの習作、
聖母子像の習作など。本当に心血を注いだのだなあと思う一方で、楽しんでもいたのだあとわかります。特に白、緑、紫、薔薇色に黒と5色のカズラ(上祭服)のためのマケットは、これまで見てきた油彩やバレエの衣装、《ジャズ》などの切り絵のエッセンスが全部入っているようで、これらを着た聖職者たちの輪舞を想像してしまいます。
作品の展示はここまでですが、この後なんとロザリオ礼拝堂内部を再現した部屋です。
右側と後ろの壁に壁画、正面と左側にステンドグラス。
私がここに入った時には室内の明かりだけの暗めの部屋だったのですが、やがて外からステンドグラスを通して光が差し込みます。
それがゆっくり動いてゆき、礼拝堂の中、壁や床や人々を彩って、また夜になります。
一日の陽の光の動きを5分くらいに濃縮して動かして照らしているのですが、もう至福の体験です。
いい企画ですね。都立美術館のマティス展では動画の上映でしたけど、今度は体験型。没入とまではいきませんが、世界遺産レベルの建築の疑似体験は貴重です。
これは他に観客のほとんどいない状態で一人もしくはカップルでゆっくり見たいですね。これから見に行こうという人は
・開館してすぐ入館し、作品は後で見ることにして一直線にここへ行って浸る
・閉館の1時間半前くらいに入って、ゆっくり作品見てほとんど人のいなくなったここでゆっくり浸る
とかがいいのでは。
私はこの後戻って《ダンス》や《ジャズ》や上祭服を見て、またこの教会に入って浸りました。