森アーツセンターギャラリーの「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」に行ってきました。キース・へリングの作品はかなり見てきたつもりだったのですが、見たことない作品/シリーズが多く、時間かけてたっぷり堪能しました。
最初は街中や地下鉄の駅などにチョークでササっと描いた作品。最初の頃は当然消されてしまったんですが、徐々に有名になってくるとこんな風に切り取って保存されるようになります。これは辛辣でストレートなメッセージ。
これは何だろう、宗教的なもの? それとも死刑制度?
このコーナーだけ壁がタイル張りで、地下鉄を意識した展示になってるのがいいですね。彼のこの頃の単純化されたシンプルな作風はササッと描いてサッと逃げるため。バンクシーは事前に用意した型紙使ってスプレーでササッと描くので事前準備に時間がかかるのか寡作ですが、キース・へリングは即興的に描くので多作でした。
大きく引き伸ばした写真と組み合わせた、ストリートで描いてる様子を再現したような作品。これは初めて見ます、ちょっと意外。
1980年代にキース・へリングやジャン=ミシェル・バスキアみたいなストリートから出てきた人たちが活躍していなかったら、後にグラフィティ・アートから世に出て行くようなアーティストはいなかっただろうな、バンクシーも含めて。この時代はアートだけじゃなくヒップホップとかの音楽やスポーツもN.Y.とかのストリートから出て来て、今では美術館で展覧会するは、オリンピックでスケボーやブレイクダウンするは、になってます。そういうストリートカルチャーの先駆者の一人は間違いなくキース・へリングです。
アルミ板に単色のシルクスクリーンで印刷した《ピラミッド》のシリーズ。人や獣の形がゴムみたいに伸びたり曲がったり穴があいて他の人の身体が突き抜けたり、様々なメタモルフォーゼが詰まってます。同じようなパターンの繰り返しになりがちなのに、全然なってない。
次はいきなり時間が飛んで、エイズの合併症で亡くなる直前に描いたという《フラワー》のシリーズ。この花々のメタモルフォーゼも初めて見ます。
写真家のロバート・メイプルソープもエイズで死ぬ直前に花を撮ってたけど、自分がもう長く生きられないとわかると花に関心が向かうのかな、花の部分は動物で言えば性器で生命の象徴でもあるし。
《スリー・リトグラフス》というシリーズの1枚。これは性器が人になってる。キース・へリングはタブーなしに性器でもなんでも描きます。1985年の作品だからエイズと関係ないだろうけど、そう見えてしまう。
《ストーンズ》のこの形は見たことがありますけどモノクロは初めてかな。中に描かれてるのは単なるメタモルフォーゼじゃなく、この形の獣が人に首輪付けてペット扱いしたり尻尾付きの人に乗ってたり、4本足のTVやケンタウルスみたいな半人半馬がいたり、かなり密度濃いですね、見る人によっていろんな解釈ができるし
蛍光塗料を使ったシルクスクリーンのシリーズ。この妊婦と空想の(?)赤ん坊はけっこう有名なんじゃないかな。
こちらは男性が両手に花状態で妊婦を抱いて王様気分ですが、性器の部分が空洞になってます。
さらにこっちは性器だけでなく両腕が空な上に妊婦たちに支えられています。
まるでフェミニストの女性が描いたようなシチュエーションで、キース・へリングがどんな立場から何を描こうとしたか、それがよくわかります。
かなり写真撮ったので今回はここまで。