ワタリウム美術館の「ジョン・ルーリー展 Walk this way」に行ってきました。
ジョン・ルーリーの絵は、たぶん好き嫌いが大きく分かれるのじゃないかと思いますが、私は大好きで前回2010年の展覧会では図録を買いました。

 

エレベーターで2Fに上がって、いきなりのショック!!
ジョン・ルーリーの紹介の下に、彼のSNSへの3月22日の投稿が掲示されていて、悪性の腫瘍で闘病中なのだそうです。「私が死んだら私の中のガンもほろびる」みたいなことが書かれていて、かなり深刻なようです。The Lounge Lizards で音楽やっていた頃からのファンの私にはショックです。かつてライム病という難病でやむを得ず音楽を諦めた彼が今度はガンなんて、いくら何でも残酷です。

 

いきなり絵を見る気分が吹っ飛んじゃいましたが、気を取り直して彼の作品を見ました。
全体の8割くらいが前回以降に描かれた新作です。2019年の作も3点くらいあり、闘病の傍ら描いていたのでしょうか、ならばそれほど悪くないのかも。


彼の絵を見てまず感じることは、とにかく自由ということ。人物画や静物画や風景画、動植物や何かの場面を描いた絵、一コマ漫画みたいな風刺画など、いろんなタイプの絵がありますが、どれも「○○を描くときはこうでないと」というルールとか規範には全く縛られずに自由に描かれています。人物や動物の形は極端なくらいに単純化され、時には歪んだりデフォルメされたりします。色も実物がどんな色かには関係なく、他との対比だったり絵全体のトーン、あるいは(もしかすると)その時の気分などから自由に選択されているみたいです。見る人によってはデタラメで稚拙な絵にしか思えないかもしれませんが、よく見るとどの絵も色のバランスや物の配置、構図などが(たぶん)ちゃんと考えられていて、その上でこの自由奔放さがあるように思います。背景は夢の中のようなファンタジーっぽいものが多いのですが、かなりひねった毒のあるユーモアのある絵もあり、単純そうな絵でもタイトルを頭に入れて見ていると「あ、これはそーゆーこと?」と、想像が広がっていきます。

 

会場ではジョン・ルーリーが The Lounge Lizards でやっていた曲のPVの上映があり、曲が流れています。彼の音楽は、前衛ジャズみたいだけどユーモラスで、癒し系のメロディーに歪んだ雑音ぽい音を組み合わせるとかの、必ず一ひねりどころか三ひねりくらいある、変だけど自由で面白いものです。 絵を見ていると、どこか音楽と共通するものがありますね。ジョン・ルーリーは自らの音楽を「フェイクジャズ」と言っていましたが、そううすると絵は「フェイク・アート」になるのかな。


ジョン・ルーリーはまだ60代ですから、まだ20年くらい生きて、定期的に新作中心の展覧会やってほしいな。
回復を祈ります。