昨日の夕方、息子を新潟行きの高速バスに乗せた。
本当ならまだ行かせたくなかった。
でも、仕方ない。
すべて仕方ない。
バス停には、同じように大学生があと2人。
いずれも大きなスーツケースを持っていた。
バスを待つ間。ポツリポツリと話した。
簡単には死なないから心配しないでくれと言う。
もちろんわかるさ。
お互いわかってる。
被災地に向かうジープだの、連結した災害車が、何台も何台も通り過ぎる。
思わず無言になる。
息子は、人生に何度も躓いて、今、また大学でも躓いている。
母さん、俺さ、今回の震災、
鳥肌が立ったんだよ。
誰もが、例えばアナウンサーとか、警察とか、普段は普通に仕事をしていて、
まあ、もちろん、普段も大変なんだろうけど、
この非日常の時に、全力で何かをするって、
〝生きてる〟って、
ダラダラとか、ぬるぬるとか、
何を求めたらいいのかとか、
未来がわからないとか、
目標がわからないとか、
違うんだ。
使命や懸命、そして、力を発揮する瞬間に
鳥肌が立った。
夕暮れの高速道路に、まばらだけど猛スピードの車が
通り過ぎる一瞬だけ、声が途切れる。
まだまだ余震は続くだろう。
息子のアパートは、津波が来たらかなり危険だ。
それでも懸命に生きることを探すために生きてくれるなら、
私は信じたいと思う。
高速バスは、満員だった。
最後にかたく握手をした。
細くて薄い手のひらは、力強く私の手を握った。
顔を見て、ハイタッチで息子は背を向けた。
無事で生きて、
多くを感じ、
人のために役にたつ仕事を、
できる大人に
なってくれ。
バスは、夕闇に消えていった。
私は私である。
私はあなたでもある。