懲りないフーテンさん | 読んだらすぐに忘れる

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とりとめもない感想を備忘記録的に書いています。

まさか一年ちょっとで訳されるとは……。これはもしかしたら、コナリー並みに一年に一作、翻訳されるとか!? 



最重要容疑者(上) (講談社文庫)/講談社
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最重要容疑者(下) (講談社文庫)/講談社
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シリーズ17作目。リーチャーも遂に天命を知るお歳になるわけだが、相変わらず定職にもつかず、諸国漫遊を続けておられます。



ネブラスカ州でヒッチハイク中のリーチャーは、男二人、女一人の三人組の車に拾われる。

仕事仲間が遠方に向かっていると思いきや、世間話をするうちに何か不自然なものを感じるリーチャー。道路では検問にひっかかり、ヘリコプターが空を舞う中、持ち前の洞察力で、実は女性は誘拐された被害者で男二人は重大な犯罪をおかした逃走中のカージャッカーであることを見抜く。

一方で、保安官とFBI女性捜査官は、給水場の廃墟で処刑された男の死体を捜査していた。

犯人は二人組の男だと目撃証言があったことから、すぐさま検問を手配するが捕まらない。しかし、捜査の結果、地元のカクテル・ウェイトレスが車とともに消えた事、そして、女性が消えた近くで犯行時に犯人が使用していたと思われるマツダが乗り捨てられていた事から最悪の展開になったことを悟る。

事件はFBI、CIA、国防省まで出てくる大事件に発展する。



確かシリーズ五作目の「エコー・バーニング」もヒッチハイクした結果、事件に巻き込まれる話だったと思う。この男は、まったくもって懲りてねぇ!



リーチャーが同乗者が犯罪者であることを見抜く手がかりの見せ方や、被害者の女性とのアイコンタクトなどかなりいい線いって面白い。正直、上巻だけなら大満足だったんだけど、下巻にはいるやこれがなんとも「ぬるーい」話に徐々になり始める。



敵の本拠地へ潜入捜査官を助けにいくスニーキング・ミッションのアクションシーンはなかなか面白いが、謎解きの方は今回イマイチだった。そもそも黒幕「ビッグボス」(核廃棄物に軍事倉庫なんて、まるで二足歩行ロボットが出てきそうと連想しましたけどね、まさかこの名称が出てくるとは……)が捕まっていないので、なんとも締まりの悪い。(結局、最初の殺人も悪いダブル・スパイをやっつけたんだからかまわんだろ? って感じ)



ただ、面白かったところもある。以下、ネタをばらします。



ル・カレ『誰よりも狙われた男』でも描かれたテロリストの資金源問題だ。(そういえば、原題がこのル・カレの作品と似ているんだよなぁ、意識したのかな?)

チャイルドが描くテロリスト組織像は、実はル・カレの描くテロリストの資金源(と思われるというのが作中の扱いだけど)と似ている。軍隊でもゲリラでも兵站ができないようでは死に絶える。各国のテロ対策で銀行口座が凍結されるなか、いかに資金を供給できるかが、テロリストにとって問題になる訳だが、本書で登場する「ワディア」は風変わりな方法でこれを可能にする。このアイディアは面白かった。

信用取引というのはなんとも奥が深い。



でも、出来はぬるい!




さて、お次はここ3カ月ちまちま読んだ、この本について

Running Blind (Jack Reacher)/Jove
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『警鐘』の事件後、ニューヨークに定住することになったリーチャー。ジュディとの交際も続いている。しかし、亡きガーバー少将によって遺された家も放浪者にとっては財産というより、身動きのとれない碇。疎ましく感じている。

そんな時、リーチャーはFBIに捕まってしまう。

FBI曰く、退役女性将校を次々と殺すシリアルキラーが出現。プロファイルの結果、リーチャーが当てはまったので捕まえたと言う。

優秀なMPだったリーチャーは、FBIの対応について冷静に分析し彼らの弱点を指摘するが、FBIは恋人ジュディを盾に頑固にリーチャーを拘束。

目を塞いで走っているような迷走している捜査協力を強要する。


被害者は全て軍でセクハラを受けて退職した女性将校、犯人は被害者宅に入り、バスタブに緑のカモフラージュペンキをたっぷり張ったあと、裸にした被害者女性を沈める。

不思議なことに抵抗された点も薬物も暴力的な跡もない。

しかも、死因が溺死ではく、なんらかの方法による窒息死。その方法は法医学でも解明できないという一種の不可能犯罪めいた有様。

はたして、リーチャーはシリアルキラーを止めることができるのか? といった内容。


いままで暴力組織と闘ってきたシリーズの中では、異色のシリアルキラー物。アクションよりも謎解きの要素が色濃くでているが、

あからさまに「あっこいつが犯人だろうなぁ」と思わせるような伏線を敷いているので、ミステリファンならば当然、先行する作品が思い浮かび、犯人もわかっちゃう。



ここから完全にネタを割ります。





ようは連続殺人事件は、狂人のてすさびではなく、本当に殺したい人間を殺すためのカモフラージュという実に割にあわない、もうクレイジーな犯罪なわけです。

ただ、このシリーズらしいダミープロット(横領軍人がかつての証言者を消している)を用意する工夫を施している。

さらに犯人側の視点(これがフェアだったかどうかは再読しないとなんとも言えんが)を織り交ぜたり、犯人っぽい人の描写も入れることで、次の犠牲者への犯人の魔の手が伸びるのが、早いかリーチャー達の行動が早いかサスペンスを盛り上げ、さらに読者を誤導する。

不可能と思われる殺人についても犯人側の描写からなんとなく予測できるところも「フェア」に気を使っているだろうなぁ。

このトリック解明の手掛かりが、女性捜査官との「ベロチュウ」だというのは笑った。



結局、FBIも犯人も完全に打ち負かしちまいリーチャー大勝利で終幕。

しかし、ニューヨークに帰るとジョディは勤めている法律事務所のパートナーのとしてロンドンに引っ越すことになり、関係も自然消滅。

しかし、リーチャーはそれほどめげていません。

狩猟民族は次の狩りに出かけます。