TATARIのある風景 | 読んだらすぐに忘れる

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とりとめもない感想を備忘記録的に書いています。

「TATARIじゃ~」とのたまうミステリを楽しく読むには、擦れ過ぎているが

国内外で作品を読んでみた。







『祟り』トニー・ヒラーマン

結構レアな本。日本ではすっかり忘れ去られた作家だが、MWAグランドマスター作家。

調べると、なんと中学校や図書館の名前まで使われているらしい。凄い。



ナバホ・インディアンの生活と謎解きが一体になったシリーズ物を書いたヒラーマンの処女作。

MWA新人賞ノミネート作品だけあって確かに面白い。

(ちなみにこの年はローレンス・サンダースの『盗聴』だった)




傷害事件を起こしたナバホ族の青年ホースマンは、警察の手から逃れて故郷の山に身を潜めていた。

しかし、彼はそこで警察よりも恐ろしい魔法使い《ナバホ狼》に遭遇してしまう。後日、ホースマンは変死体となって発見される。



ナバホの民族伝承を研究するマキー博士は、同僚と一緒にインディアン保留地に訪れる。

マキー博士は、ナバホ族の警官で友人のリープホーンの協力のもと魔法使いの噂を取材する道程で、

変死した青年ホースマンの事件に関わるようになり、やがて命を危険にさらすことになる。



途中まで牧歌的な感じだったが、中盤からタイトル通りオドロオドロしい展開を見せる。

殺され捨て置かれた羊の群れ。ルカチュカイ山で謎の手紙を残して消える同僚。嵐の山中での一夜。そして一人寂しく野営しているところに、狼の毛皮を頭からかぶった男が軽機関銃もって近づいてきたら、そりゃーもうビビります。怖いです。



ところが、後半はこの凶悪な《ナバホ狼》から逃げる、または反撃にでる冒険小説のような展開になる。この展開には興奮する。恐怖の鬼ごっこに途中参加した女性を連れてマキー博士は、敵を相手に知恵で戦いに挑む。

一方でリープホーンも《ナバホ狼》の魔法を解く《調伏の儀式》を見ることで、その正体をつかみ、ルカチュカイ山へ向かう。




ホラーっぽい展開と思ったら冒険小説に転じ、さらに、しっかりと伏線を敷いた上での謎解きも披露する。この伏線の張り方がすごく上手い。白人とインディアンの落差がこのミステリの肝で、その「差」をさりげなく提示する。犯人が「ナバホ族」なのに「他所者」だという一見矛盾した設定の妙、ナバホ族にとって「魔法」の意味、さらに直接の動機になった「アレ」のことなんか序盤で触れられている。名作です。


股旅探偵 上州呪い村 (講談社文庫)/講談社
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『猫間地獄のわらべ歌』は、上辺だけをなぞるようなパロディミステリではなく上質のものだった。一番感心したのは時代小説の文脈でミステリのフェアについて考察したメタ会話で、作者はミステリ本当に好きなんだなと思った。


そんな幡さんの本格時代ミステリ、第二弾は「笹沢×横溝×ラブクラフト」!

何と言っていいのか……。



木枯らし紋次郎風の渡世人、三次郎は宿場の掘割で起きた殺人事件で濡れ衣を着せられた小作を助ける。一種の不可能犯罪設定での謎解きでアントニー・バークリー風のちょっと恥ずかしい展開で、かるーくジャブを放つ。



その後はもうやりたい放題だ。

『獄門島』を彷彿とさせる筋運びで、不気味な寒村で血なまぐさい事件が続発、メタレベルでお約束へのツッコミの嵐、まさかの「SAN値」の下がりそうな洞窟冒険、そして名主屋敷のカタストロフィ。大団円でみんな集めて謎解きになるかと思いきや「あっしには関わりのねえことで」で謎解き放棄。もう抱腹絶倒。




今回もやはり「呪い」や「祟り」の背後に企みがある。その点ではヒラーマンの『祟り』もよかったのだが、パロディが本筋のこっちはさらに手が込んでいる。

ようは「連続殺人が完遂するまで黙って見ている」探偵を揶揄するだけでなく、それを許してしまうような物語に仕上げる逆転が見所。上手いです。