来年の1月17日で、阪神・淡路大震災から25年の節目を迎える。
直接揺れを体験していない「部外者」だけれども祖母を亡くした「遺族」である私は、気後れがするというか本当の「被災者」の方に何とも申し訳ない気持ちを持っている。
でも、追悼式典に参加している父の姿を見て、20年めの式典から参加するようになった。

あの日父は父母と妹(私の祖父母と叔母)が住む家と連絡が取れず、車で生家に向かった。
瓦礫と化した生家から周りの人の手を借りながら妹と父親を助け出し、最後に母を助けようとしたその瞬間、家に火が点いてしまった…
家族や周りの人を巻き込むわけにはいかない…
「離れて下さい!」
中で母が生きているのはわかっていた。
でももう、それしか父に残された道はなかったのだ。

そして来年の節目の年になる1月17日。
神戸市営地下鉄は式典に間に合うよう、臨時便を出すことを発表した。ニュースを知り、時間に間に合わないからと式典に参加できなかった方々が参加できる英断だと思った。
ところが、式典を主催する側から待ったがかかった。
どれくらいの参加者になるかわからず、警備も手薄になってしまうから、とのことだった。
いろんな思いを持って参加される方々に、何かが起きてはいけないのだ…

思いもしなかった展開。いい解決策はないだろうか。
最近ずっと右手の親指の爪や皮を噛んでいる。
みっともないことこの上ない。
そして当然痛くて力が入らない。
仕事も困るが生活にも困る。
求む、特効薬…

「もっと自分を大事にしなよ」

ここ数十年、ずっと言われてきたこと。

爪を噛む。髪を抜く。
摂食障害。
根性がないから普通のカッターしか使ったことのないリストカット。

これらが「自分を大事にしていない」ことになるらしい。

これらの行為をせずにはいられない心の中には、何が巣くっているのか…

私だって、止めたいよ…

おきたら きもちがわるい。きぶんもわるい。なみだがでてくる。

でんしゃのなかで つめをかんでいて ちがでてきた。
りょうどなりの ひとたちが どんびいている。

なぜこんなに きぶんがわるいのだろう…
今朝。
自宅の最寄り駅の喫煙スペースへ向かう男性がいた。
スーツに軽量のビジネスリュック。頭にはワッチキャップをかぶり、右足をかばって杖をついている姿は父と瓜二つだった。父が生き返ったのかと思うくらい驚いた。

生前、私は父のことが大嫌いだった。
高校生の時、ワケのわからん理不尽なことを言われて頭が真っ白になり、木製バットを振り上げたところを母と妹に止められたこともあった。
だから進学も就職も実家から離れたところを選んだ。

しかし悲しいかな、私の性格は父の性格に似ている。
基本的には大嫌いなんだけど、母や妹が父を責めたり文句を言ったりするのを見ると、心の中で父を庇ったり味方をしてしまうという複雑な心境だった。

あの男性は実在したのだろうか?私の幻覚だろうか?
父の最期をきちんと看取れなかったというもやもやした負い目が私の中に根づいているから「見えた」のだろうか。月命日にすら仏壇に手を合わさない私の冷たさを再認識させるために「現れた」のだろうか。

仏壇には父の名が刻まれた位牌があるだけで、父は「いない」のだ。
四十九日の法要で納骨することが決まっていた。前日の夜中、父の骨壺の蓋をそっと明けて「物理的な」父にお別れをした。そして、小さな骨片をカプセルペンダントにそっと納めた。どこの骨かはわからない。
全部揃ってないけど我慢してな。堪忍やで。
職業柄、ペンダントはつけられないので常にカバンに入れている。仏壇に手を合わせるより、私の中で父を偲ぶよすがになっているのだ…

どこかの骨がなくて痛いのか。返してくれと言いにきたのだろうか…

                                                                                            
今日は通院日。
月に2回、診察とカウンセリングを受けている。
職場の休みがシフト制なのはこういう時に助かる。

起きたはいいが、テンションが上がらない。
診察とカウンセリングは14時からだけど、家にいるのがしんどくなって9時前に家を出た。
病院の最寄り駅には10時ごろ到着。
とはいえ、何か目的があるわけではない。

うろうろうろうろ歩き回り、コンビニスイーツをドカ食い。

診察はまだしも、カウンセリングを受ける気力がなく、キャンセルしてお薬だけもらってきた。

さて…

家に帰るしか選択肢はない。

かなしい。かなしい。


沖縄県の方たちの心の拠り所だった首里城が焼失した。
夜が明けて、まだ燃え続ける映像を見ていたら、阪神・淡路大震災で燃えていた祖父母宅の上空からの映像を思い出した。
その場にいなかった私でさえ、いたたまれない気持ちになったのだ。首里城が焼け落ちて行くのを見つめるしかなかった方たちの気持ちはどんなものだったのだろう…

しばらくして、東京五輪のマラソンと競歩が札幌で開催されることが決まった。
選手の健康を第一に考えてのことだったかもしれない。
でも、これまで東京で準備にあたっていた方たちはどうなるのだろう。
開催まで1年を切っているのに、急遽開催準備にあたらなければならなくなった札幌の方たちはどうすればいいのか?
ネットで(マラソン・競歩開催の)「泥棒」呼ばわりされる筋合いなんて全くないのに。

知人が「今回のことで札幌と那覇の就業率が上がるね。いいことだよ」と言った。
五輪に向け、首里城再建に向け、確かにマンパワーは必要だ。

でも、心の拠り所を無くして悲嘆にくれている方たちにそう考えることを求められるのか?
いきなり2種目の開催を決められ、これから雪の季節でなかなかハード面の受け入れ対策を進められないところで奔走しなければならない方たちにそう考えることを求められるのか?

その知人との距離が、あの言葉で一気に離れた気がした。
あまりのキュートさに、ジャケ買いならぬ表紙買いしてしまった可愛かずみさんが表紙の平凡パンチ。
かずみさんの写真に字がかぶさっていたりして手の方は描くのを断念しました。
それと泡。砂と並んで本当に難しいです…またもかずみさんの鼻の頭に蕁麻疹ができたみたいになってしまいました。ごめんなさい。



20年前に大切な、本当に大切な人を投身自殺で失った。

その日から、私もいろんな精神疾患を抱えながら生きている。早く死んでしまいたい、消えたいと思いながら…

不謹慎だけど、彼が統合失調症に罹患していなかったら…と考えることがある。どうなっていたのだろう。

彼の死へ向かう気持ちをすくいとるために、遺書を何度も読み返す。可哀想、ではないな。不憫というか、憐れというか…

でも、わかっている。
20年前に結婚する予定だった人を失った自分を哀れんでいるんだろうなっていうことを…
きみがそっちに行ってから20年。
私は、いろんな思いを抱えてズルズル20年生きてきてしまった。
整理できないことがたくさんあるんだ。

きみがそっちに行く前の7年の交際期間。
いろんな話をしたよね。
心神喪失や心神耗弱と刑法・刑事訴訟法のあり方とか、
皇室のあり方とか…
「そういう話をすると、大抵の人は感心して聞いているだけなんだ。『何で?』『それ何かおかしいよ』って返してくる人間に初めて会った」って言ってたね。

きみは喘息、私はアトピー性皮膚炎とアレルギーを持っていたから、アレルゲンのことをこと細かく説明しなくてもやっていけた。

死ぬなら自殺だって決めていることも一緒だった。
「命を大切にしないとダメだ!」って言わない人と初めて出会ったんだ。不思議な暖かさを感じることができた。お互いに後を追わない約束もしたね。 
きみは「おれが自殺する日にちは決めてある。両親のどちらかの誕生日だ。両親へのささやかな復讐なんだ」と言っていたね。

きみが統合失調症に罹患した時の衝撃は大きかった。
100人に1人が罹患する病気だけど…何できみが!っていう怒りが強かった。
私が支える。私が守る。本心からそう思った。
でも私のキャパシティでは何もしてあげられなかった。
私まで精神科に通うことになってしまった。

鬱病で休職して、主治医からきみと距離を置くように言われた私は電話番号を変え、引っ越しをした。
3ヶ月の休職期間が終わっても、私の鬱病は一向によくならず全く仕事ができなかった。職場にいるのが辛かった。

ある朝。
きみと共通の友人から電話が入った。
「◯◯くんが事故で亡くなった」
事故?そんなわけない…

私の引っ越し先の住所を知らないきみからの遺書が実家に届いた。すぐに送ってもらって、封を開ける。

「ごめん。先に逝くよ」
そんな文から始まった遺書。身体の震えが止まらなくなったけど、何度も何度も読み返した。
なぜ私への恨み言がひとこともないのか。なぜ私への感謝を綴っているのか。
恐らく共通の知り合いがかけてくれたであろう電話にも一切出ずに、壁にもたれてきみの遺書を暗記できるくらい読み返した。
きみのお父様の部下にあたる人と交際していた友人が飛び降り自殺だったこと、お通夜や告別式の日取りを教えてくれた。
どう考えても、特にご両親のことを考えたらお通夜や告別式に行けるわけがなかった。大好きだったタバコを供えてもらうよう知り合いに託し、現場のビルを遠くから眺めた。
高所恐怖症で観覧車も嫌がってたのにね。
後ろから落ちたからだろう。顔はきれいだったよ、と皆が教えてくれた。

人は亡くなった人の姿は長らく覚えているけど、声は比較的早くに忘れていくって聞いたことがある。
私はきみの声を20年、忘れることなく生きている。

まだ私は生きてしまうのだろうか。
またこの日を迎えてしまうのだろうか。

わからない…