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余命宣告 第2章 第10話 どんぞこ!
多くの言葉を語らない、
大きな目で、
じっと私を見据える妻の目を
私は凝視することが出来なかった。
言い訳にならない、言い訳を繰り返し、
黙って、私の言い訳に聞き入る妻だった。
数時間の話し合いの末、
私は家を出た。
向かった先は・・・・・・・・・・
長い事、主を失っていた
私の事務所であった。
全てにおいて、
自暴自棄。
それからしばらくの間
「蛻の殻」になったこの事務所で
寝泊りをすることになる。
風呂も無く、電気も止まっている。
水道も止まり、
汚物が流れないために、
近所のファミリーレストランで
用を足す。
スーパーの食料品売り場で
試食を食べて空腹を紛らわす。
そして、
変わらず続いた日雇い労働。
貰った日払いの給料は
ほとんどそのまま
自宅のポストへ投函した。
どうしても仁義を切らねばいけない
関係者達へ退院の挨拶には出向いた。
しかし、彼達から向けられた言葉は・・・・・・
思い出したくも無い、辛く悲しい言葉の連続だった。
「私はそんなに卑下されるような事をしたのか?
生きていてはいけなかったのか?」
経営者として、モリチン個人として、
「私はそこまで人様から、
咎められる様な事をやってきたのだろうか?」
「ささやかなつまずきの中で、
一人で責任を背負う事がそんなに人への罪だったのか?」
「人様へ向けてしまったささやかな「情」が
他の人様から見れば、それほど許されざるものであったのだろうか?」
そんな思いの中で、
私は誰とも、会うことを止めた。
いつのまにか私は
支え続けてくれた、家族に対しても
恨み節が出るようになっていた。
世の中の全てが私へ牙を剥いているように思えた。
生還したことへの同情と感動を求めていたのかもしれない。
人の甘いささやきと、優しい言葉を求めていたのかもしれない。
しかし、与えられた現実は・・・・・そんな甘いものではなかった。
「このまま死ねば良かった。」
「死んでいた方が楽だった。」
「死ぬことさえ許されなかった。」
思っては、イケナイ
そんな思いが私の中で駆け巡っていた。
死ぬ事は簡単だ。
死ぬ勇気さえ持てれば・・・・・・
「死」に両足を突っ込んだ経験がある私にとって
「死」というものは怖いものでもなんでもなくなっていた。
一方で
「生き続ける」・・・・そんな簡単なことが、
これ程つらい事だとは思いもしなかった。
「生きる」・・・・・・・
誰しもが当たり前に過ごすことを
神から許された時間。
簡単な言葉ではあるが、
これ程・・・・・・残酷で、辛く悲しい時間だとは
思ってもみなかった。
そんな全ての物事から目をそむけ始めた私の下へ
妻がやってきた。