ピッ、ピッ、ピッ



静かな病室の中で


妻が私に色々話しかける。


しかし、私は何の反応も出来ない。


妻はとても、朗らかな・・・・、温和な・・・・・、大人しそうな・・・・・


人である。


彼女といると私はとても癒された。


普通の家庭で、不自由なく、普通に育てられ、友達も多く


誰が見ても、「優しい、かわいらしい、お嫁さん」である。


この波乱万丈な私の人生を背負わせて


耐え切れるのであろうか?


私は結婚が決まってから、


そんな不安が良く駆け巡っていた。


私の友人達も


「お前の嫁さんは、

  もうチョット気の強そうな人じゃないと

   勤まらないんじゃないの?」


そんな意見をよく言われていた。


この病院から私の自宅も、会社も、


歩いて20分ほどの距離だ。


妻は毎日、毎日、私の世話をしに来てくれていた。


小さな折りたたみ自転車をこいで・・・・


看病の為に、毎日欠かさず来てくれていた。


「ちょっと、家に戻るね!」



妻は、近所であるこの病院へ


一日に何度も足を運んでくれていた


病院へ来ては、事務所や、自宅へ戻って


雑用をこなしてくれていた。



しかし・・・・・


こんな「ICU」あるんだろうか?


いや、ここの病院はこういう不思議な病院なのだ。


この病院の「ICU」は誰でも入ってこれる。


そう、債権者であってもだ!


酸素マスクにつながれた私の姿をまじまじと見ている



債権者達・・・・


「こいつ保険金かけとったっけ?」


そんな声が聞こえてくる。



債権者達は私が死ねば


債権をとりっぱぐれるのだ!



そんな奴らがいる私の病室へ


妻が帰って来た。


「どなた様ですか?」



見た目でその筋とわかるこの男達に



妻は声かけた。


「ゴールデンファイナンスのものですけど、


支払いはどうなっているんですか?」



チンピラ風な債権者達が妻へすごんだ。


やばいっ、やばいっ


こんな奴らが来たときに妻が来るとは・・・・



 「払えるわけ無かろうもん?



  見てわからんの?



  警察呼ぶよ。」



意外な、


妻の一言だった。



「呼んでみろ!警察呼べるもんなら!


警察が民事での取立てで動くか!」




妻へすごむ債権者達。


ピッピッピッ



妻は本当に、警察へ電話した。


「もしもし、警察ですか?・・・・・・」



そして、債権者達はそそくさと、病室から去ろうとした。



「ちょっと、待ちなさいよ。名刺出しなさい!」



今度は妻が債権者達へ凄む。



そのまま、妻は立ち去ろうとする債権者の前に立ちはだかり




「あんたら民事の取立てなら、名刺出せろうもん。何、びびってんの?」




結局、妻は債権者から名刺を受け取り、



駆けつけた警察へその名刺を渡していた。



その時点では、その債権者は不問であったが


最終的には私が潰した。



チンピラにも動じる事無く



妻は堂々と立ち振る舞っていた。



私は妻がこんな本性を持っていたとは



思いもしなかった。



あまりにも普通なお嬢さんだった妻が



これほどの強さを身につけていたとは・・・・・





これから、



この妻の強さのお陰で私は幾度と無く



助けられる事になるとは・・・・・



まさか、思いもしていなかった。




そして、7月31日



ついに、私と家族の長い戦いが始まろうとしていた。