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『鬼人幻燈抄』第21話「願い(後編)」、皆さんは、いかがでしたか? 叶う願い、叶わぬ願い、そして未来へ託す願い――。それぞれの想いが交錯し、あまりにも切なく、そして美しい結末を迎えましたね。
もし、出会う時代や状況が違っていたら、彼らは違う未来を選べたのでしょうか。そんな「もしも」を考えずにはいられない、切ないすれ違いが描かれました。それは甚夜にとって、土浦も、畠山康秀も、そして何より、おふうとの関係において、深く胸に突き刺さります。
好きだからこそ、そばにいない選択をする。相手の生き方を尊重し、依存ではなく、互いの未来を想う。そんな、涙が出るほどに尊い関係性には、ただただ感嘆するばかりです。
今回は、時代の大きなうねりの中で、登場人物たちが下した決断と、その願いの行方を丁寧に読み解いていきたいと思います。江戸編のクライマックス、それぞれの「出会いと別れ」が描く物語の深淵へ、一緒に潜っていきましょう。
目次
- 第21話のあらすじ:雨夜に散った二つの魂
- 第21話「願い(後編)」の解説:願いが織りなす光と影
- 生き方を曲げられない者たち~それぞれの矜持と哀しみ
- 夫婦で蕎麦屋の夢と、選んだ別れ~甚夜とおふう、魂の交錯
- 総括と次回への期待:時代の終焉と新たな旅立ち
- 『鬼人幻燈抄』の世界を深く味わう!待望の新刊&Blu-ray BOX発売
おふうからの提案~「鬼蕎麦」に込められた願い
「江戸を離れようと思う」。鬼としての噂が広まることを懸念し、そう告げる甚夜に、おふうは思いがけない提案をします。
「お父さんが言っていたように、このまま蕎麦屋を営むというのは選択肢にないでしょうか。屋号は、そうですね、「鬼蕎麦」なんてどうでしょう。鬼の夫婦が営む蕎麦屋、面白いと思いませんか?」
これは、事実上のプロポーズです。しかし、単なる恋心から出た言葉ではありません。そこには、鬼である自分たちが、人の中で肩を寄せ合い、ささやかでも確かな幸せを築いていけるのではないか、という未来への淡い、しかし切実な「願い」が込められています。そしてそれは、復讐という宿命に囚われ続ける甚夜の魂を、温かい日常へと引き留めようとする、彼女なりの「救い」の申し出でもあったのです。
揺れる心と、差し伸べられた手~二人の決定的なすれ違い
おふうの言葉に、甚夜の心が揺れます。
「悪くはないかもしれんな」
その呟きには、長すぎる旅に疲れた彼の、束の間の安らぎへの憧れが滲んでいました。鬼としてではなく、ただの男として、愛する人と穏やかに暮らす未来。一瞬、彼もその夢を見たのかもしれません。しかし、彼はその夢に身を委ねることはしませんでした。
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「やっぱりできませんか」
彼の沈黙に、おふうは寂しげに微笑みます。甚夜は、彼女の想いを真正面から受け止めた上で、それでもなお、自らの生き方を変えられないことを告げます。「今さら生き方は曲げられない。お前だってそれを承知で言ったのだろう」。
そして彼は、おふうに手を差し伸べます。「一緒に行くか?」。しかし、この手は「鬼蕎麦屋をやろう」という彼女の願いに応えるものではありませんでした。それは、これからも続く、彼の孤独で過酷な旅路への誘いだったのです。ここに、想い合いながらも決して交わることのない、二人の決定的な「すれ違い」が、残酷なまでに描き出されています。
手を取らない理由~おふうの自立と、本当の強さ
しかし、おふうはその手を取りませんでした。彼女の口から語られたのは、この別れが、決して悲しいだけのものではないことを示す、強く、凛とした決意の言葉でした。
「駄目ですね、私は。…ここであなたの手を取ってしまったら、私はまた寄りかかってしまう。それじゃあきっと幸福の庭に逃げ込んだあの頃と変わらない。そんなの悔しいじゃないですか。だから、先に誘ったのは私ですけど、手は取りません。まずは一人で立てるようになろうと思います。そうじゃないと、あなたの隣にいても寂しいだけだから」
なんと強い女性なのでしょう。彼女は、甚夜に守られ、依存する関係を自ら拒絶したのです。かつて、悲しみから逃れるために「幸福の庭」という結界に閉じこもった自分との決別。そして、いつか彼の隣に立つときには、対等な存在でありたいという、誇り高い願い。彼女のこの選択こそが、本当の意味での「自立」であり、彼女が手に入れた「強さ」の証明でした。