毎年この時期になるとソワソワします。
今年はやっと炊きました。春の訪れを知らせると言われる、<イカナゴの釘煮>!
まだまだ初心者なので、折れた釘のように炊き上げるのが難しい…。
なので、毎日入荷する生イカナゴを見ながら、買い時の大きさかどうか見計らっていました。
このところちょい大きめになったので、やっと買いました。
生姜と白ゴマをたっぷり入れて、芳ばしく甘辛く炊けました。我ながら上出来、やれやれ。
わが店では日曜日を除く毎日、播磨灘から当日水揚げの生イカナゴが入荷します。
毎日毎日少しずつ大きくなっていく生イカナゴを見ると、何故か愛着が湧き、情が移ってしまいます。
これはパートさんも同じようで、原料のフタを開け「大きくなったね~、美味しい餌をいっぱい食べてきたの?」なんて、生イカナゴに話しかけています。
そうです、わが子の成長を見守るように!
思えば、私が水産という部門にとても感動し興味を持ったきっかけが、この生イカナゴだったのです。
当時、私はチェッカーチーフをしていました。
生イカナゴが入荷すると仕分けをしてパック詰めする作業が立込むので、作業の手伝いを頼まれたのでした。その頃は全然魚に興味がなく、できれば避けてとおりたい、と思っていた程で、あまり気が進まず渋々作業場へ出向きました。
ところが、作業場に一歩入ると、そこにはキラキラした(本当に輝いていました)身がしっかりした小さなお魚が!とてもきれいで、感動しました!
もちろん、キラキラ+身がしっかりしている=鮮度バツグン ということなので、商品政策あってのこと。チーフや関係者にいろんなことを聞くうちに、品質にものすごくこだわりがあるということがわかってきました。
品質にこだわるということは、難しいことがいっぱい!だけど、「買う人に本当に美味しい物を食べてもらいたいから」、という願いが強くこめられていることに、またまた感激!
これ以来、水産という仕事の虜になり、いつかは私も何らかの形で関わっていきたいな~と夢を抱いていました。
そうそう、思い立ったら行動せずにはいられない私は、<あたって砕けろ!>状態でその当時の水産教育担当に直訴したこともありました。もちろん、<男の世界に女が!>ということであっさり撃沈でしたが。
でも、夢をあきらめずによかった、今こうやって水産に関わる仕事をしていられるのですから…。
話を戻して、イカナゴを簡単に紹介します。
イカナゴとは春先に瀬戸内に回遊してくる小魚のこと。イカナゴの釘煮とは生イカナゴを炊いたもの。
春先になるとこの土地では、各家庭がイカナゴの釘煮を炊くので甘辛い匂いがしていた、といわれます。釘を入れて炊くのではなく、炊き上げると折れた釘のような形になるのでこの名前がつきました。
醤油と砂糖と酒で炊くのですが、生姜、かんきつ類の皮、ゴマ、サンショウなどを入れて風味をつけるなど、各家庭で工夫とこだわりがあってバリエーション豊富です。
イカナゴの釘煮を白いご飯の上にのせて食べると絶品、おにぎりに混ぜたり、お茶漬けにしたりもします。
イカナゴの代表的なメニューは釘煮ですが、その他にも、天ぷらや茹でて酢の物にしても大変美味しいです。
春の訪れを知らせる、旬のメニューです。


