遭難しそうな雪の帰路② | 日々有り事、映ろい事

日々有り事、映ろい事

元凡人ハンターの日常

「……!!」

交差点信号待ちの車だった

飛び起きるように立ち上がると信号が変わったかゆったりと走り去る

 

フゥ、命拾いした

ここが交差点でなく一時停止だったら…

そして後続車が続いていたなら…

急ぐのは止めだ

帽子の庇を上げて、ギアを落として進む

ゆっくり、じっくり、一歩一歩踏みしめるようにペダルを踏み込む

Vブレーキは一気に握ったら即ロックする

いつも以上に車間距離を取り

ブレーキはポンピング、クッ、クッ、と脈打つように掛ける

車に並んだら先を譲る

 

なんとか持ち直すと次の面倒が持ち上がる

「…小用が足したい…持ちそうにない」

帰り際、飲み残しのお茶を一気飲みする習慣がとんだところでアダに

国道筋に去年新装したホームセンターがある

かなり快適なトイレがあったからそこを目指そう

まだ3km以上はあるが…

近づくに連れてハタと気付く

店舗に入るにはこんもりと雪の積もる車道を通らないと…

雪の軽さをあてに乗り込む

 

思った以上に進める

歩行者の足跡はやや雪塊にハンドルを取られるし

車道連絡の斜面に若干流されるが、自転車を降りるほどではない

はじめから感じていたが、このあたりによく降る湿雪とは明らかに違う

踏みしめても固まりにくく、泥除に巻き込んでも張り付かない

パウダースノーのような軽い雪だ

 

雪降りしきる中駐輪する者もなく、積り放題の広場の端に駐輪して建物の軒下へ

ピョンピョンバサバサ雪振り落として外套を剥がす

「ゲ!左手袋がっ!!」

掌底部の端が破けている、さっきの転倒時のものだろう

道理で左手首に染みた感じがしていた

薄手でもガッチリ防水してくれる山歩き用の手袋

ベラボウに高かったのに

まあ仕方がない、骨折から守ってくれたのだと思えば安い

それよりトイレだ!温まったら更に尿意が高まってきた!!

 

予想した通り、最後の行程が最も走りにくかった

道に面する家々が雪かきを始め、その溜まりにハンドルを取られる

車も人も減ったが、その分雪は厚みを増す

最後まで、油断なく、踏みしめるように…

 

ガレージに入って見れば自転車は雪まみれ

凍りついたら大変と掻き落とす

 

全行程およそ100分、途中休憩約10分、転倒が一回

人生でもトップクラスの難路行だろう