昨年から語彙力に関するツイートを重ねていました。その中で、反響の大きかったものを10本紹介します。皆さまはお分かりですか?

 

■読者の皆さまも一緒にお考えください

 

(1)ご自愛編
A氏:インフルエンザにかかってしまった
B氏:お体には「ご自愛」ください!
「ご自愛」は自分の体を大切にすることの表現です。「お体」の後に続けると「重ね言葉」になります。正解は「ご自愛ください」。これだけで十分です。

 

(2)潮時編
A氏:事業の成果が出ない。万策尽きたな
B氏:「潮時」かもしれませんね
「潮時」は限界が迫っている時に使いがちです。本来は「一番いい時期」を指す言葉。この文脈で使用するなら「手詰まり」「万事休す」の方がベターです。

 

(3)さわり編
A氏:明日のプレゼンの役割を決めよう
B氏:最初の「さわり」の部分は僕がやります!
「○○のさわり」は、最初の部分の意味と思われがちです。本来は話の盛り上がるポイントのこと。要点や最も印象に残るところを指します。

 

(4)破天荒編
A氏:取引先の松田専務が転勤されるそうだ
B氏:「破天荒」な方でしたね
「破天荒」は豪快で大胆な様子の意味で使われがちです。本来は「今までできなかったことを成し遂げる」ことです。「前人未到の境地切り開く」こと。褒め言葉です。

 

(5)煮詰まる編
A氏:なかなかアイデアが浮かばない
B氏:さすがに「煮詰まって」きますね
「煮詰まる」は、成果が出ず、煮詰まった状況で使われがちです。本来は、議論や考えが出尽くして結論が出る状態のこと。結論が出る寸前に用いるのが正解です。

 

(6)敷居が高い編
A氏:昨日、社長と赤坂の料亭に行ってきたよ
B氏:赤坂ですか。僕には「敷居が高い」です
「敷居が高い」を、レベルが高くて分不相応な場合に用いるのは間違いです。後ろめたいことがあって「もう一度行くには抵抗がある」ことを表します。

 

(7)檄(げき)を飛ばす編
A氏:最近の営業は気合いが入ってない!
B氏:「檄を飛ばし」ますか
「檄を飛ばす」は激励するという意味はありません。広く世間に知らしめることを意味します。文脈なら「活」が理想です。なお、某番組で張本さんの「喝!」は誤用です。

 

(8)吝(やぶさ)かでない編
A氏:社長から出張依頼。今回は土日を返上だ!
B氏:社長命令なら「吝かでない」のでは?
「吝かでない」は「やむを得ない」の意味に使われがちです。正解は「喜んでする」こと。この文脈では、土日返上でうれしいという意味になります。

 

(9)お眼鏡にかなう編
A氏:君の企画はとても良かった
B氏:「お眼鏡」にかなって光栄です
「お眼鏡にかなう」とは、目上の人に評価されるという意味。元々は、お眼鏡=拡大鏡で是非を判断したことから派生した言葉です。「お目にかなう」は誤用です。

 

(10)役不足編
主演A氏:私は役不足なので「レ・ミゼラブル」の主演はできません
「役不足」は本来、「能力に対し役目が軽いこと」の意味です。これでは「『レ・ミゼラブル』の主演は軽すぎて不満」という解釈になります。日本語は難しいです。

 

■語彙力はなぜ必要か
最近、語彙力に関する書籍を見かけることが増えました。「大人にふさわしい語彙力をつけたい」というニーズがあるように思います。たとえば、お客さまに迷惑をかけてしまい、憤慨しているならば、普段よりは丁寧な言葉を使って謝罪する必要があるでしょう。この時に大切なのが語彙力です。状況を俯瞰(ふかん)しながら言葉を使い分けるスキルが必要になります。

 

スマホで文字を書くことが多くなったせいか、意味不明の文章や非礼な文章が増えたように思います。言葉は、コミュニケーションの手段としてなくてはならないもの。あなたの評価を高めるためにも、使い方を覚えておきましょう。

 


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尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員