ある特定の分野の専門家が、自分の専門分野について他者に説明しようと思うと意外にうまくいかないことがあります。

 

なぜなら、一般の人がどこに疑問を感じているか、何がわからないのか、どっぷりその世界にいる人は気づけないからです。

 

経済の専門家や研究者が書いた文章が難解になるのはそのためです。では、専門家が外部の人に自分の専門分野について説明する場合、どのような言葉を使えばいいのでしょうか。

 

まず専門外の人に通じるボキャブラリーを増やしましょう。かつてノートに一つひとつ書き留めていたように、現在は記事を投稿する際に、読者層に合った本や雑誌、バラエティ番組やニュースをこまめにチェックし、世の中の人に通じやすい言葉をよく探しています。

 

これらのオープンな情報に目を通せば、伝えたいと思っている相手の嗜好を推察でき、響く言葉をキャッチできるのです。もう一つ、簡単な方法が検索エンジンを使うことです。

 

たとえば、シニア層向けの企画商品を売りこみたいとします。
 

検索で出てきたブログやSNSを見ると、シニア層の嗜し好こうがわかります。文字のみならず画像もよりリアルな情報として役に立ちます。
 

たとえば、「男性シニア 生活」で検索すると、目につく言葉は、健康、旅行、お金などのキーワードが出てきます。これを参考に、旅と健康を組み合わせた企画を打ち出し、より刺さるキーワードを検索した上で企画書を作成するのです。

 

また、マネジメントの専門家としてシニア層の働き方について書くとします。
 

「男性シニア 働き方」で検索すると、狙いたいターゲットのワークシェア、ワークライフバランス、時間的ゆとり、のんびり働く、健康維持などです。
 

ここから、多くのシニアは「定年後は健康維持のため、のんびり働きたい。時間的ゆとりを重視しており、ワークシェアなどの制度の活用を考えている」ことがわかります。

 

ここで大体書くべき内容が定まってきます。同時に、書き方にも気をつけます。


たとえば、「組織の時代から個人の時代へのパラダイムシフト」という内容を書くとしたら、シニアの方でも理解しやすいよう「組織の時代から個人の時代への転換」といった具合に言葉を置き換える必要があります。


どのような言葉で表現すればいいかわからない人は、既にある記事をいくつか読んで、書き方についても研究しましょう。
 

インターネット検索では、大抵1ページ目の最初に出てくる記事が最も多くの人に読まれています。ということは、1ページ目の最初の記事の書き方を真似すれば、多くの人が理解しやすい記事になる可能性が高まりますね。 

 

今はどのような言葉やキーワードが読み手に刺さるのか、趣味・嗜好などを簡単に調べることができます。また流行などは雑誌やテレビでの特集を見ればすぐにわかります。いつどんな場合でも、下調べをし、相手に響く言葉で書くことを心がけましょう。

 


6月8日、17冊目バズる文章」のつくり方(WAVE出版)を上梓しました。

よろしければ、ぜひお手にとってみてください!

 

尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員