同じ業界でしか通じない言葉を使ったり、横文字を多用する人も大勢います。特に仕事の現場には特定の人にはわかっても、他の人にはわからない言葉がたくさんあります。
かつて私が在籍していた、外資系コンサルティング会社でも一般の人には聞きなれない横文字が飛びかっていました。次の例を見てみてください。意味が通じるでしょうか。
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上司:新年度から組織替えを行います。レイヤーはどのようになっていますか?
部下:営業部のクライテリアが不足しています。パフォーマンス・インプルーブが必要です。
上司:では担当をお願いします。インプリまで頼みますね!
部下:人事制度はインクルードしますか?
上司:いや、組織替えをしたからバスケットだけは入れ替えよう。
部下:では、素案をお見せします。いかがでしょうか?
上司:Busy で好感が持てない。各々のクルデンシャルを盛り込んでください。
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ご紹介した文章は会話文ですが、書類でも同じような言葉を使ってやりとりしていました。社内でやりとりする場合は、これでも何も問題ありません。
しかし、この感覚を外部に持ち込むと危険です。いつどんな場合も、業界の言葉が通じるとは思わないこと。その感覚は、自分の世界を狭くするだけです。
専門用語を使うなら、必ずその意味を理解して、的確に翻訳できる能力を身につけておきましょう。たとえば、先ほどの文章を翻訳すると次のようになります。
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上司:新年度から組織替えを行います。部門と階層はどのようになっていますか?
部下:営業部の実績が不足しています。業績を改善させることが必要です。
上司:では君に担当をお願いしたい。プロジェクト遂行までお願いします!
部下:人事制度も刷新させますか?
上司:いや、組織替えをしたから必要ない。賃金テーブルは入れ替えよう。
部下:いま素案をお見せします。いかがでしょうか?
上司:この素案は読みにくく好感が持てないね。各部門の実績を盛り込むように。
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人に物ごとを説明するとき、必要なのは相手に理解してもらいたいという意識です。自分の常識、組織の常識が、社外の常識とは限りません。わかりにくい言葉はないか、誰が見ても理解できる内容になっているかを読み返し、厳しくチェックしましょう。
難しい文章には「伝えたい」という意識が欠落しています。どんな文章でも「わかってもらう」という配慮は絶対に必要です。社内のレポート、報告書、企画書などについても、難しい言葉は要求されていません。求められていることは平易でわかりやすいことのはずです。
6月8日、17冊目「バズる文章」のつくり方」(WAVE出版)を上梓しました。
よろしければ、ぜひお手にとってみてください!
尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員