人は文章を読む際に、自分のメガネに投影させて評価をする傾向があります。メガネとは人の価値観ですが、せっかくなら多くの人に共通するメガネのほうが得策。それだけ読者の気持ちにミートしやすくなるからです。

シンクタンクに在籍していたとき、独特の言い回しを「どう言い換えれば伝わるか」を考えていました。難解な言葉を平易にするトレーニングを積んでいたのは、今でも役に立っています。

 

ニュースを見ていてもわかりますが、政治家は、わかるようなわからないような独特の表現を使うことがあります。


「虚心坦懐に」「遺憾の意」「真摯しに受け止め」「諸般の事情に鑑み」「忖度する」など、政界ではそれ単独では意味がわからない言葉が当たり前のように使われています。

 

マスコミに説明したり、後援会に知らせたりする際には、その都度、わかりやすい言葉に置き換えなければなりません。次の文を読んでください。

本件を厳粛に受け止め保有する情報については積極的に国民へ供することとする。今後、ますます脅威が増大するであろうことを念頭におき、解決に向けた連携を図りながら、所要の対策を講じて参ります。

これをわかりやすく書く場合、次のように修正します。

本件を厳しく受け止め、保有する情報は、積極的に国民の皆様へ開示します。今後、脅威が大きくなる可能性もあるので、対策については、その都度、対策を協議いたします。解決に向けて、各方面と密に連携を取り合う予定です。

専門用語やその業界では普通に使われている言葉は、慣れてしまうと正しい意味を理解せずに使っているものです。独特の言い回しを平易に置き換えて、ノートに整理する作業は、シンクタンクやコンサルティング会社でおおいに役に立ちました。


難しい言葉を使えば、知的に見える、そのように思いこんでいた方。今日からは言葉の魔術師のごとく自在に言葉を使いこなせるようトレーニングをしてみませんか?

 


6月8日、17冊目バズる文章」のつくり方(WAVE出版)を上梓しました。

よろしければ、ぜひお手にとってみてください!

 

尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員