名詞を修飾する形容詞は、便利な言葉ですが、意味がわかるようなわからないような、ぼんやりした文章になることもあります。たとえば、ブラック企業にありがちなPR表現です。
次の文章を読んでください。
○私の上司は魅力的な人です。
○風通しのよい組織です。
○アットホームな会社です。
人材採用のホームページや会社説明のパンフレットなどで見かけますが、このような文章に読む相手を惹きつける吸引力はあるでしょうか?
学生からすると、「よい上司です」、「風通しのよい会社です」と言われても、何がよいのか、どんなふうに風通しがよいのか、イメージできません。また、アットホームであることを理由に、プライベートまで介入してくる会社があります。
こうなると、アットホームではなく公私混同です。
○学歴不問!未経験者歓迎です。
○少数精鋭です。
ありがちなフレーズですが、応募条件が緩すぎる会社は、労働者をただの消耗品と考えているおそれもあります。人を採用する余力がなく、少人数に過重労働を強いる可能性も否定できません。検証する材料やリアリティがないので、エントリーにもつながらないでしょう。ではこの場合、どのような情報を使うべきしょうか。
私の経験上、有効なのは具体的な数値です。たとえば、「年間有給消化率80%」「高校卒の管理職比率が60%」「賞与平均は月給10カ月分」などの、事実を数値化して、それを根拠に魅力的な会社だとアピールするのです。魅力的な根拠を提示し、具体的にイメージさせることができれば、応募者の心を動かすことができるでしょう。
数字を入れたり、情景を具体的に描写したりすることで、ぼんやりしていたものが明確化してきます。多用せず、効果的に使うことで力を発揮すると覚えておきたいものです。
さて、政治に目を向けてみましょう。
菅首相の「安心安全」がもっとも有名ですが、丸川五輪相も引けをとりません。
4/19
組織委が企業に業務委託する人件費に対して
「守秘義務で見せてもらえない」
4/27
五輪の医療体制について
「東京都の考えがまったく聞こえない」
5/11
コロナ禍での五輪開催の意義
「絆を取り戻す」
6/4
分科会の尾身会長に反論
「スポーツの力を信じる」「全く別の地平から見てきた言葉」
6/22
五輪会場で酒類販売検討
「ステークホルダーの存在がどうしてもある」
6/22
ウガンダ選手団の1人が陽性も、残る8人は濃厚接触者認定しなかった指摘に対して、
「問題ない」
6/29
大会ボランティア約7万人に対して
「まずは1回目の接種で一次的に免疫をつけていただきたい」
東京都には4回目の緊急事態宣言が発令されました。
政治家の言葉は後世に伝えたい名言ですね。
6月8日、17冊目「バズる文章」のつくり方」(WAVE出版)を上梓しました。
よろしければ、ぜひお手にとってみてください!
尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員