●数値に置き換えることでわかりやすくする
文章をあいまいにする原因の1つに、形容詞の多用があります。
たとえば、次のような表現です。
「かわいい」「甘い」「優しい」「きれいな」「あざやかな」「つぶらな」などの形容詞のオンパレードは抽象的で具体性が感じられません。
日本語には形容詞が多く、「い形容詞」「な形容詞」に大別されます。
「かわい(い)」「甘(い)」「優し(い)」は「い形容詞」です。「きれい(な)」「あざやか(な)」「つぶら(な)」は「な形容詞」です。覚える必要はありませんが、関心のある人は日本語の文法本などを読んでみるといいでしょう。
次の例文をお読みください。
ある公共団体の入札に政治家Aが関係しているというスクープがN週刊誌に掲載されました。「政治家Aはすぐに入札会議議事録を用意するとN週刊誌に対して約束した。後日になり政治家Aから『適切に対応した』との報告があった」。
このような表現は、人によって捉え方が異なります。なので、
政治家Aはすぐに(1週間以内)に資料(入札会議議事録)を用意するとN雑誌社に対して約束した。後日(1カ月後)になり「適切に対応した」との報告があった。
このような具体的な数字に置き換えて、誰が読んでも同じ理解ができる文章にしなければなりません。数値に置き換えることで認識の相違を防ぐことができます。
〈形容句が複数の単語にかかっている場合〉
次に、どちらにも受け取られる文章は単語にかかる形容句がどちらにも受け取られることから発生します。使い方は若干難しくなりますが覚えておきたいものです。
〈ケース①〉
このイベントは国と農水省に指定された県内の和菓子の日本文化を広く知ってもらうために、毎年、京都府が開催しています。
国と県内の位置付けが微妙です。県内のすべての和菓子が農水省に指定されているのか、県内の和菓子のうち農水省が指定したものを指しているのかがわかりにくいです。和菓子をわかりやすく解説するか、何種類の和菓子が指定されているかなどを示す必要があります。
〈ケース②〉
専門家の分析では,現場の地域には1時間で100ミリの降水量があったと見られています。
1時間に100ミリの降水量があることはわかるものの、1時間で降水が終わったとも解釈できます。この場合、「毎時100ミリの降水」としたほうがより明瞭でしょう。新聞社や省庁発表の文章には「毎時◯◯ミリ」と表記されます。
具体的な数値が入っていない文章は、あいまいになりがち。認識の相違を防ぐためにも数値を明瞭化することが必要です。また、形容句が複数にかかっていると、受け取り方も複数になるのでわかりにくくなるので注意が必要です。
※17冊目となる、「バズる文章」のつくり方」(WAVE出版)を上梓しました。
尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員