●代名詞を多用してはいけない理由
皆さんのまわりに代名詞を多用する人はいませんか? 代名詞とは、名詞または名詞句の代わりに用いられる語のことです。通常は名詞とは異なる品詞と見なしますが、名詞の一種とされることもあります。「あなた」「彼」「彼女」「あれ」「それ」などのことです。
 

5W1Hでは、Who、What、This、Thatなどが該当します。「あなた」「彼」「彼女」ならまだわかりますが、「あれ」「それ」では通じません。次のような文章になります。

 

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A氏:いつもの「あれ」を頼んでおいて。
B氏:「あれ」ってなんのことですか?


A氏: TOYOTAの新車を買ったんだよ。人気のある「あの」モデル。
B氏:「あの」モデルですか?


A氏:「それ」って今どんな感じ?
B氏:「それ」って何がですか?


A氏:「それ」っていいね、ステキですね。
B氏: ありがとうございます。ところで「それ」って何がですか?


A氏:「あそこ」行こうか? 人気のあるあれ。
B氏:「あそこ」ってどこですか?

----ここまで----


代名詞が多いと、このような会話になりがちです。あなたの周囲にこのように代名詞を多用する人はいませんか? いくら5W1H に基づいて指示されていたとしても理解不能です。文章にすることでよりわかりにくさが強調されましたが、会話であってもまったく通じないでしょう。


●読者の感情に揺さぶって行動させた文章
では、何をチョイスすればよいのか? 先ほど感情と言いました。どんなに素晴らしい文章であっても相手の感情に響かなければ伝わりません。感情に訴えれば行動に移すはずです。
 

たとえば、私が投稿している書籍紹介記事が読者の感情を揺さぶったなら「本は売れるはず」です。5W1Hではこのようにはいきません。ここで1つの事例を紹介します。

 

2019年2月3日に「歯科医が警鐘を鳴らす、食べていると確実に『死』に近づく食べ物とは?」という記事をYahoo! ニュースに掲載しました。

 

歯科医・森永宏喜さんの取材記事をまとめたものです。森永さんは2016年に『全ての病気は「口の中」から!』(さくら舎)を出版していたので書籍のタイトルだけ記載しました。


結果的にこの記事はアクセス総合1位となり、数日で数百万PVを獲得することになります。「歯科医が警鐘を鳴らす、食べていると確実に『死』に近づく食べ物とは?」のタイトルは、飛躍しすぎて適切ではないとの指摘もありましたが、想定内でしたので丁寧に回答しました。


米「TIME」誌は米国社会にとって影響力の大きい人物や事柄を表紙にしています。2004年2月23日号の表紙を飾ったのは「SECRET KILLER」(秘密の殺人者)の文字。歯周病が死にいたる病気であることや、ほかの疾患との関係性など詳細な特集が組まれていました。

 

米国では歯周病のことを「SECRET KILLER」と呼びます。学会でも「SECRET KILLER」は一般的な名称として定着しています。
 

歯周病は少しずつ進行し、確実に死に至る病であることや、歯周病にならないための食事やケアを紹介しましたので、決して大げさなタイトルではありませんでした。歯周病の怖さについては、これまでも多くの歯科医が警鐘を鳴らしてきましたが、日本では、最近になってようやく一部の専門家が気づきはじめたのが実情です。

 

だから、私の記事の主旨が理解できなかったのです。多くの読者がこの記事に触発されてどうなったのでしょうか? まず、Amazon が数十分で完売になりました。翌日、森永宏喜さんの元には大手新聞社数社から独占取材のオファーがありました。

 

これは、記事内容が評価された裏づけとなりました。

 


※17冊目となる、「バズる文章」のつくり方」(WAVE出版)を上梓しました。

尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員