●考えすぎて筆が止まってしまう理由
文章を書くことが苦手な人は「考えすぎて筆が止まってしまう」人が多いように感じます。「考えすぎて筆が止まってしまう」ということは、「何を書けばいいのかがわかっていない」のです。
 

今日、彼女とドライブをしたあなたは次のような日記を書こうとしています。

今日、彼女とドライブをしました。

これだけでは文章とはいえません。

 

ドライブに付随する感情や風景を加味することで初めて文章には奥行きが出てきます。「文章を書くときには、5W1H を押さえるように」と、多くの文章術の本では言われています。

 

When(いつ)、Where(どこで)、Who(だれが)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)を押さえて書くというものですが、5W1Hを意識しすぎるとかえって書きづらくなります。


まったく役立たないというのではありません。ビジネスの商談用の文書や報告書を作成したり、共通認識を持つためには役立ちます。しかし、お伝えしたい「バズる文章」「コラム記事」に、5W1H を反映しすぎたら、具体的すぎてまず読まれません。上司への報告は、5W1H でいいと思いますが、日常会話で5W1H で話している人などいません。

〈例〉彼女と何をしていたの?
朝7時に起床して、お昼の12時(When)に彼女の家に車で迎えに行って(Where)、山下公園まで2人(Who)でドライブ(What)デート(Why)をしました。公園でホットドッグを食べて、散歩しました。21時には家まで送りました(How)。

5W1Hをすべて使用して文章を作成するとこのようになりますが、まったくしみじみきません。不明点やモレはなくなりますが、うっとうしい文章になります。


●まずは「気持ち」をこめることを心がけよう
次の文章も5W1H を意識したものですが、どのように感じますか?

〈例〉京都への旅行
東京10時発の新幹線に乗って、京都へ12時に着いた。昼食を食べて、金閣寺に行って、時間が余ったので銀閣寺まで足をのばした。17時の新幹線で東京に向かった。

報告書に書くならいいと思いますが、フレンドリーな感じがまったくしません。5W1Hでは単なる事象の報告にしかならないのです。では、次の文を読んでみて下さい。

〈例〉京都への旅行
10時出発の新幹線だったので早起きしなければならなかったけれど、久々の旅行で前日からワクワクして目がさえてしまいなかなか眠れませんでした。京都は金閣寺に行って、青空と黄金の舎利殿を見ながら散歩しました。すごくきれいだったので、たくさん写真を撮っちゃいまし
た。お昼は精進料理食べたんですけど、野菜がおいしかったです。

いかがですか? この文章には感情がこめられています。伝わる文章というのは感情がこめられた文章のことです。感情にふれることで読者は共感し、理解を深めていきます。

 


※17冊目となる、「バズる文章」のつくり方」(WAVE出版)を上梓しました。

尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員