初めて著書を出した、2010 年から10 年あまりがすぎました。

 

最初に出した本は、コンサルティング会社依頼の自己啓発書、しかも共著でした。奇をてらいすぎたのか売れゆきはかんばしくなく、次の本を出すまでに2 年を要しました。新興の出版社だったので重版こそしたものの、思い通りの結果とはいきませんでした。


そんな私ですが、今まで16 冊を世に出すことができました。このあと、別の出版社から2 冊のオファーをいただいています。今年中には海外向けの翻訳本も出版されます。これは、ひとえにネットの力だと思っています。


10 年ほど前から、ニュースサイトに記事を投稿するようになりました。メインで執筆していたのは「言論プラットフォーム・アゴラ」というオピニオンサイトです。

 

執筆陣に専門的なオピニオン記事を書く人は充足していましたが、一般記事を書く人が不足していました。メンバーになれば、投稿回数に制限がないことや、Yahoo! ニュースに転載されることも大きな魅力でした。
 

最初は、平凡なコラム記事を書いていました。
 

ある日、知り合いの出版社から書籍紹介を依頼されます。翌日、1500 文字の軽めの記事を載せたところ、Yahoo! ニュースでアクセス1 位を記録します。その書籍はAmazon で一気に完売となり、すぐに重版がかかりました。

 

その後、評判を聞きつけた出版社からたくさんの本が届くようになります。紹介記事は毎日のようにYahoo!ニュースに掲載され、そのたびに、本がAmazon で完売となり重版がかかる流れがルーティンになりました。


私の記事がベストセラーのきっかけとなったことも多数あります。その中でも、印象深い1 冊を紹介します。『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』(汐街コナ・著、ゆうきゆう・監修、あさ出版、2017 年)という本です。

 

出版前にプルーフ版(簡易製本のミニ冊子)が編集者から送られてきました。

 

「尾藤さん、この本売れると思います?」
 

当時、世間をにぎわせていたのは自殺に対する悲しいニュースでした。 
・ 日本では、15〜39歳の死因第1位が「自殺」であること
・ 中高年(50代)の自殺も顕著であること
・ これらの現象は先進国では日本のみで見られる特徴であること

 

この本が、世相に対して一石を投じる可能性があると思ったので、出版前にもかかわらず記事にしてニュースに投稿しました。Yahoo! ニュースでは、初投稿にもかかわらず、国内2 位のアクセスランキングを獲得します。

 

「これはいける!」と確信した私は、続けて記事を投稿します。すると、2 回目の投稿で、国内1 位のアクセスランキングを獲得しました。結果的に、この本は20 回ほどニュースサイトに紹介しました。その後、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞など主要新聞でも取り上げられ『NEWS23』(TBS)にて、特集が組まれて一気に火がつきました。

 

現在12 万部を超える大ヒットを記録しました。もちろん、著者やこの本そのものに魅力があったわけですが、私の記事が大きな影響を及ぼしたことを誇りに思っています。


当時、Yahoo! ニュースに毎日、書籍紹介記事を載せていたのは日本では私以外にはいませんでした。これは、配信サイトと掲載記事すべてをチェックしたので間違いはありません。

 

すでに「ライフハッカー」「ダヴィンチニュース」などいくつかの書籍紹介サイトも存在しましたが、メジャーな存在ではありませんでした。今なら、ステマのそしりを受けるのかもしれませんが、当時は、私の競合がまったく存在しなかったのです。


長年、右肩下がりの出版業界にも明るい兆しが見えてきました。出版科学研究所は、2020 年の紙+電子出版市場は1 兆6168 億円で2 年連続プラス成長になったことを明らかにしました。それでも、ピークとされている、1996年の2 兆6563 億円の6 割程度でしかありません。


1 冊単行本を出すのに250 万〜300 万円程度のコストがかかるといわれています。これは出版社から出資を受けるようなものですから、新人著者はハードルが高くなります。

 

また、書店に置かれていても本は自然に売れていくわけではありません。売れ行きが悪ければ2 週間ほどで回収され、1 カ月で出版社に返本されます。そうなると、普通の著者では成すすべがありません。私にはネットで記事を書く力がありました。仮にリアル書店で売れなかった
としてもネット書店での実売が出せたため、大コケすることはなかったのです。
 

しばらく、新刊出版にあわせて文章術に関するお役立ち情報を発信していきます。

楽しみながら継続することで必ず成果が上がると思います。

 

※17冊目となる、「バズる文章」のつくり方」(WAVE出版)を上梓しました。

今回の記事で紹介しているような「情報発信」や「実践的」な情報を載せています。


尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員