「ワイズ・スペンディング」「アウフヘーベン」――。


これは、小池百合子東京都知事が使用したことで話題になったカタカナ語です。カイロ大学卒で語学に堪能な小池都知事ならではの特有な言い回しですが、一般的には理解されていない言葉でもあります。一般のビジネスパーソンが使用するなら、このようなカタカナ語の使用に
は気を付けなければいけません。


ちなみに「ワイズ・スペンディング」は「賢い支出」という意味。不況のとき、財政支出を行う場合、将来的に利益・利便性を生み出すことが見込まれる事業・分野に行うことが望ましいという意味です。「アウフヘーベン」は、矛盾・対立する二つの概念を、その状態を保ちながら、より高い次元段階で統合、発展させることを指す哲学用語です。

 

この他にも、小池知事は「サスティナブル」「ガバナンス」など、ちょっとわかりにくい用語を使って、メディアに話すことが多くあります。「サスティナブル」は「持続可能な」という意味。「ガバナンス」とは「統治」という意味です。


よく使われるカタカナとして、「エンターテインメント」という言葉がありますが、意味は理解していますか。まずは「楽しませる」の意味があります。演芸、音楽などの催しものから、娯楽性の高い読み物という意味もあります。


専門用語は専門の場所で使うことが望ましく、言葉は時と場所、場合に応じて使い分けてください。専門用語やカタカナ英語は、相手に理解できるか考えましょう。誤解を招く元になりやすいので注意が必要です。


経営学者のピーター・ドラッカーはコミュニケーションの四原則の一つとして「コミュニケーションは知覚である」と言っています。これは、相手が理解してこそコミュニケーションであるということです。極端な例で言えば、相手が日本語の通じない外国人に対し、日本語で説明してもそれはコミュニケーションとは言えません。

 

よく耳にはするものの、なんだかよくわからないカタカタや専門用語が立て続けに出てくると、日本人同士でも理解不能な会話になってしまことがよくあります。「コミュニケーションは知覚である」ことを踏まえれば、お互いが配慮する必要があるということです。
 

専門的な言葉を並べて話したとしても、その分野のエキスパートにしか真意は届きません。あなたの言葉に耳を傾けてくれる人は、いろいろなバックグランドを持っています。性別、年齢、出自などを問わずに、全ての人々の心に届く言葉で語りかければ届くはずです。


マーガレット・サッチャー元英首相は、かつてこう話しました。


「平易な言葉で語ることは、政府にとって不可欠な道具だと言っても過言ではない」。これは、私たちビジネスパーソンにも重要な意味を持つ言葉です。

 


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尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、明治大学客員研究員

16冊目の著書。「頭がいい人の読書術」(すばる舎)を上梓しました。