幕末から明治にかけて活躍した勝海舟は「政治家の秘訣は誠心誠意のみだ」と語っています。知識が豊富でも、誠心誠意に欠ける人物なら不適合という意味です。


昨今、問題となっている政治家の資質に関する問題も、知識ではなくモラル不足と考えれば納得がいくでしょう。最近は、不倫議員、パワハラ議員、政務活動費疑惑議員など稚拙な政治家ばかりが話題になりますが、昭和の時代の政治家は豪快でした。

 

ここでは、田中角栄のすでに伝説と化しているいくつかのエピソードを紹介します。
 

政敵の議員の母親が亡くなった際、生花店に依頼して一週間毎日、新しい献花を届けさせました。葬儀は氷雨の中で行われましたが、出棺の際には傘もささずに最敬礼で見送ります。これは、当時の新聞等でも大きく報道されました。


他派閥の有望な若手議員が入院したときには真っ先に駆けつけて見舞い金の入った封筒を渡したこともありました。翌日、派閥のボスが見舞いに訪ねますが、見舞い金は田中角栄より遥かに少なかったそうです。


冠婚葬祭には顔を出して義理堅いところをアピールすることが大切です。関係者はこのような義理堅さを覚えているからです。「あの先生は来てくれた」という行動として評価されます。
 

田中角栄が幹事長時代の話です。選挙の軍資金を渡す際に、党で決定された金額を支給した直後、「キミの選挙区は厳しかったな。期待しているぞ」と追加で同じ額を渡します。田中角栄のお金の使い方は、サプライズを与えて生きた金を使う手法と言えるでしょう。
 

さて、皆さんは、辻立ちをご存知でしょうか。辻立ちとは街頭演説のことを指します。一般的には有権者に対して自らの政策を訴える方針といわれていますが、多くの政治家は選挙前にしかやりません。もったいないことです。

 

また、辻立ちの内容を通行人は聞いていません。ただし、「一生懸命に頑張っている」と強い印象を与えることはできます。「政策」を訴えるよりも「共感」を与えた方が心に響くのです。


これは、日常の私たちの仕事にも同じことが言えるのではないかと思います。共感とは、一番大事な親しみのある感情です。ビジネス面で、共感する力は、欠かすことができません。
 

あなたがチームのリーダーだとしても、メンバーの一員に過ぎなくても、チームで働いているなら、「チームのニーズ(=目的)を理解する」ことは必須でしょう。ニーズを共有しているからこそ、やっていることは違っても、同じ目標にたどり着けるのです。

 


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尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、明治大学客員研究員

16冊目の著書。「頭がいい人の読書術」(すばる舎)を上梓しました。