本は、3分の1だけ読むことで、理解することができます。
 

もちろん、ビジネス書や実用書など、分野は限られますが、「タイポグリセミア現象(Typoglycemia)」を利用して、本の上部分の3分の1を読むことで、6〜7割程度の内容をつかむことが可能なのです。
 

■タイポグリセミア現象とはなにか?

それでは、「タイポグリセミア現象」とは、どんなものなのでしょうか?

 

これは、文章中に含まれる単語の最初と最後の文字さえ正しければ、その文章を読むことが可能になるという現象のことです。

 

この現象については未だに科学的に解明されていません。現状では仮説として研究者が取り組んでいますが、「なぜ読めるのか」「なぜ理解できるのか」という点について、言語学では、私の調べたかぎり、まだ解明されていないのです。

 

「タイポグリセミア現象(Typoglycemia)」とは学術的な名称ではなく、「誤植(Typo)」と「低血糖(Hypoglycemia)」を組み合わせた造語にすぎません。


1976年、ノッティンガム大学では「単語認識における、文字位置の重要性」という論文を発表しています。論文では「単語の文字を並び替えたとしても、その文章を理解できる人物が持つ読解力には、ほとんど影響を及ぼすことはない」としています。


1999年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校にて、教授のデヴィッド・R・ペローと研究員のコロシュ・サベリによって「逆になった話し言葉の認知と修復」という論文が公開されました。
 

学術誌ネイチャー誌にも掲載され、人の言葉の処理能力の高さについて「あらゆる機械よりも優れている」ことを解説しています。
 

単語の文字の順序ではなく、大切なことは最初と最後の文字が正しい位置にあることで、他の文字が並び替えられていても読むことができるとしています。
 

これは、人が文章を読む際に、一文字一文字を読んでいるのではなく、単語全体を大きな集合体としてとらえていることを意味しています。
 

「タイポグリセミア現象」はいまだ不確実なものとして考えられていますが、いくつかの研究結果を確認すれば、一定の検証が行われていることが理解できます。

 

■なぜ、3分の1だけで理解できるのか?
2018年3月、富山県内にある和菓子店「中尾清月堂」の広告のコピーが、よく見ると文字の順番が入れ替わっているのに、問題なく読めてしまうことから、SNS上で話題になりました。

 

「これはお見事」「秀逸な広告で不思議」などの反応が上がりました。

次のような広告です。

 

中尾清月堂は富山県内に4店を展開し、どら焼き「清月」を改良したことに合わせて、2018年3月18日、「北日本新聞」の折り込み冊子に広告を出しました。

 

広告は、「みまなさに だじいな おらしせ」という書き出しではじまります。

 

※ ちみなに この ぶんしょう の じんゅばん も ばなれい ように いかれえています。

 

正しい文章は次の内容です。

 

※ちなみに この文章の順番も ばれないように入れ替えています。

 

この広告に取り入れられた要素も、「タイポグリセミア現象」です。人は単語を一つの集合として視覚的に認識します。脳が単語を瞬時に予測して、補正して読むことができるのです。


文章のリズムを変えないことと、単語の最初と最後の文字は正しいものにすることで「タイポグリセミア現象」は発生します。ここが合っていれば、人間の脳は正しく変換してしまうのです。

 

「タイポグリセミア現象」を利用すれば、3分の1だけ読むことで、理解することができます。

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