<馬車道の不思議少年・翔:第2話>6
「会社が悪いのか、私が悪いのか、
要するに周りからあてにされなくなった。
会社というのは歯車のうちはいいけど、
歯車でなくなると働くことが苦痛になってくる。」
「そこで思い切って会社を辞め友達を誘って会社をつくったの。
注文を受けてデザインやイラストを考える会社。
最初はなかなか軌道にのらず本当に大変だった。
資金は何度もショート寸前、眠れない日が続いた。」
「叔母さんにそんなことがあったなんて、
母からも聞いていませんよ。」
「それでも自分たちの才能を信じ、
いい仕事さえすればきっとうまく行くはずと頑張った。
会社をつくって5年ぐらいは維持するのがやっと、
後悔だけはしたくないというのが本音だった。」
女は少しうなずくだけで静かに叔母さんの話を聞いていた。
「昨年の今頃、絶体絶命の状態に追い込まれて、
もはやこれまで、というところまで来た時、
ある男の子のイラストを積極的に売り出すと、
これが起死回生になって上向き始めた。」
「そして打つ手打つ手がいい方向に向きだし、
皆、これがビジネスなんだと、自信を持ち始めた。
長かったけど、チャンスを待って、頑張って、
やっと報われ始めたと喜んだ。
人生は何とかなると思えば何とかなる。」
叔母さんがさっきと同じフレーズを繰り返したことで、
女も本当にそんなものかも知れないと思った。
叔母さんの次の言葉は、女には全く予想外だった。
(記 原田修二)
■次回は2/2 <馬車道の不思議少年・翔:第2話>7