<馬車道の不思議少年・翔:第3話>6
真理は少年を受け止めた瞬間に、
この子が洋子の言う不思議な少年に違いないと確信した。
少年は喜ぶ親子に風船を手渡すと、
今度は何故か進に向かって矢を射るような恰好をした。
進は訳もわからず少年のしぐさを見ていたが、
少年の放った架空の矢が自分に突き刺さったように感じた。
そしてその瞬間、不思議なことに、
真理のことを思う気持ちがパッと広がった。
これは偶然ではないと彼は思った。
間違いなくあの子が二人のキューピット役を果たしている。
そうかあの子が洋子の言う不思議な少年なんだ、
進は洋子とは違うタイミングで不思議な少年の存在を知った。
二人は顔を見合わせ思わず微笑んだ。
お互いが不思議な少年を認識したことをすでに理解していた。
風船を受け取った親子が礼をして立ち去ったのは見ていたが、
あらためて見渡すと、少年の姿もいつの間にか消えていた。
(記 原田修二)
■次回は 3/23 <馬車道の不思議少年・翔:第3話>7